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日本ペアも大活躍!イヌとの絆で挑むスポーツ、アジリティー

2020-08-21 午後 05:32

飼い主と愛犬が一緒に競技するスポーツ「アジリティー」を知っていますか?

アジリティーの競技人口は年々増えており、世界各国で競技大会が行なわれるほど人気が高まっています。今回は、そのルールや世界大会に参加した日本チームの奮闘ぶりを紹介します。

イヌと人がチームとなって戦うアジリティーとは?

 

アジリティーとは、スケートリンク程の広さに20個ほどの障害物が複雑に配置され、イヌと人が一体となってスピードと正確さを競う、一種の障害物競走です。人は「ハンドラー」と呼ばれ、競技中はイヌと一緒にコースを走りながら、障害物をクリアする順番や方向などを瞬時に指示していきます。

 

 

競技に参加するイヌの身体能力は非常に高く、走る速さは秒速5m以上。トップスピードの中でハンドラーの指示を察知します。

 

良い結果を残すには、人とイヌのチームワークが何よりも大切なんです。

40カ国から500ペアが集結!年に1度の世界大会

 

アジリティーの世界大会は年に1度、4日間にわたり国別団体戦と個人戦が行われます。

 

 

種目は「ジャンピング」と「アジリティー」の2つがあり、総合成績で順位が決まります。両者の違いは障害物の種類。「ジャンピング」は基本的な障害物のみで、「アジリティー」はより複雑な障害物が加わり、イヌの俊敏さを競います。

 

 

「ジャンピング」では上記のような障害物で基本的な技術力を競い合います。

 

 

「アジリティー」では、さらに高さのある3種類が加わり、難易度もアップ!

 

この複雑なコースを設計するのは、審査員です。アジリティーの審査員は、競技の審査以外にも、こうしたコース設計という重要な役割を担っています。

初の日本人審査員 大庭俊幸さん

 

2019年の世界大会では、そんな権威のある審査員に、大庭俊幸(おおば としゆき)さんが抜擢されました。日本人としては史上初です。もともと警察犬の訓練士だった大庭さんは、日本で最初にアジリティーを紹介し、活動を広めてきた第一人者。アジリティーを初めて見た瞬間その魅力に取りつかれたんだそうです。

 

今回、大庭さんが設計したコース。選手に公開されるのは、なんと大会当日、しかもレース直前なんです。

 

 

レース直前のおよそ8分間、ハンドラー(人間)だけが「コース検分」と呼ばれるコースの下見が許されます。コースは小型犬、中型犬、大型犬それぞれに用意されます。ハンドラーは与えられた8分間の中でコース内容をすべて覚え、イヌへの指示の出し方などの戦略を組み立てなければいけません。

 

さらに、厳しいルールが待ち受けています。

 

・障害物の進む順番や方向を間違えると即失格
・障害物を倒したり、飛ぶのを拒絶したりすると減点5
・各コースの標準タイムを1秒オーバーするごとに減点1

 

アジリティーでは、タイムのほか、この減点の少なさが勝敗を決めます。

 

こうした厳しい状況のなか、事前にコースを知らないイヌは、ハンドラーの指示だけを頼りに全力で走るのです。

それぞれの想いを胸に。日本選手とイヌの物語

 

今回の世界大会には、日本から審査員だけではなく選手も出場。この大舞台に立つために、過酷な国内選考会を勝ち抜いてきました。

 

ここからは、そんな日本代表選手とイヌのドラマをご紹介します。

世界中の仲間の支援に救われた土田美子選手

 

ドックトレーナーのアシスタントとして働く、宮城県仙台市在住の土田美子選手。いつも自宅から40kmほど離れた山奥のフィールドで練習をしています。そこまで遠出するのには、理由があります。

 

 

東日本大震災の津波で、それまで使っていたフィールドを失ってしまったのです。写真の左下がそのフィールド(赤枠部分)。機材を収納していたコンテナも流されてしまいました。

 

偶然にもこの写真が新聞に掲載されたことがきっかけで、世界中のアジリティー関係者から支援が集まりました。土田選手にとって、再び練習を続けられる環境が整ったのです。

 

 

「こうした支えがなければ、アジリティーを続けることは不可能だった」と話す土屋選手。

 

大会で結果を残すことで、支えてくれた世界中の人たちに恩返しをしたいと願っています。

 

土屋選手は、そんな思いを胸に秘めながら日々練習に励んできました。

世界へ通ずるペアへ。大技を磨く西田純也選手と小村美佳選手

100分の1秒の差を争うトップレベルの世界大会。順位を決める大きなポイントとなったのは、難易度の高い「コンタクトゾーン」と言われる部分のクリア率です。イヌはここを必ず踏まなければなりません。

 

必ず踏まなければならないコンタクトゾーン(青い部分)

 

従来は、多くの選手がここで一度イヌを立ち止まらせてきましたが、そうすると減点は防げるものの、タイムを大幅にロスしてしまいます。

 

 

そこで生まれた新技が「ランニングコンタクト」。走りながらコンタクトゾーンを踏む大技です。全速力で走る勢いでコンタクトゾーンを飛び越えてしまうイヌも多く、確実に踏ませるにはかなりの練習量が必要です。

 

 

日本代表でもこの技を見事成功させた選手がいます。西田純也選手と小村美佳選手です。海外選手の技を見て、自分なりの練習方法を試行錯誤してきたといいます。

 

 

西田選手には、テクニック以外にも取り組んできたことがあります。それはイヌへのマッサージ。海外の選手が大会にセラピストを連れてイヌのマッサージをしているのを見たことがきっかけで始めたんだそうです。

 

「イヌは無理ができてしまうので、気がつかずに練習を続けていると、ケガや事故につながる危険性がある」と西田選手。世界に通ずるペアになることを目指し、良いと思ったことはなんでも積極的に取り入れているといいます。

引退を決意した新井茂選手

 

新井茂選手は、愛犬ロックとともに5年連続日本代表でアジリティー世界大会に出場してきました。

 

しかし、ロックは既に8歳。新井選手は今回の大会で、世界大会からは引退を決意していました。「最後は思いっきりはじけさせてあげたい」と新井選手。有終の美を飾りたかったところですが、個人戦のジャンピングではまさかの失格。それでも個人戦のアジリティーでは、いくつか減点はされたものの無事に完走することができました。

 

 

最後のレースだということは、愛犬ロックには言葉で伝えることはできません。しかし、ロックは新井選手との強い絆から、本当に楽しんでいるかのように走り切ったといいます。

 


こうして、日本選手それぞれが様々な思いを胸に挑んだ世界大会。4日間の熱戦の末、日本チームは団体戦で6位という好成績を収めました。また、個人戦では小村選手が14位、土井選手が27位。表彰台に上がることはできませんでしたが、日本チームは世界を相手に大健闘を見せました。

 

 

試合後、審判員の大役を果たした大庭さんは、アジリティーの魅力をあらためて語ってくれました。

「アジリティは、もちろん勝つということも大切だけど、勝っても負けても観客の方が応援してくれる。そういう部分が非常にいいスポーツではないかと思います。」

 

アジリティーがオリンピック競技の1つになることが、大庭さんの願いだといいます。

ジュニア世代では史上初!表彰台に上がった吉本駿選手

 

アジリティーの世界大会を目指すのは、大人だけではありません。

 

スイスで開催されたジュニア・ヨーロピアン・オープン2019で、13歳の吉本駿選手が、大型犬の部で総合3位に入賞。日本のジュニア世代が表彰台に上がるのはこれが初めての快挙です。

 

吉本選手の相棒はボーダー・コリーのホタル。吉本選手は、常にホタルへの思いやりの気持ちを大切にしながら練習に励んできました。大会本番では、普段と違う雰囲気にホタルが緊張しないよう気遣いました。そんな吉本選手の思いが通じたのか、ホタルは練習以上に実力を発揮し、素晴らしい結果につながったといいます。

 

 

吉本選手の次の目標は、世界大会に出場すること。若きペアの活躍に期待です。

 

以上、知られざるアジリティーの世界をご紹介しました。いかがでしたか?
ヒトとイヌが一体となって挑む姿に、他の競技にはない感動が生まれるこのスポーツ。日本でもっと盛んになっていくといいですね!

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