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特集 熱海富士 大相撲九州場所へ決意を語る

相撲 2023年11月6日(月) 午前11:00

秋場所で再入幕の熱海富士は、10日目に単独トップに立つなど優勝争いをリードし続けました。千秋楽、貴景勝に優勝決定戦で敗れましたが、初の三賞・敢闘賞を受賞し大活躍でした。吉田賢アナウンサーがその思いを聞きました。

 

インタビューは伊勢ケ濱部屋の上がり座敷で行われた

 

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秋場所いろいろ経験して、緊張している場合ではなかった

ーー秋場所の活躍は見事でしたね。

 

秋場所はいろいろなことを経験できました。役力士との対戦は初めてでしたが、緊張している場合ではなかったです。

 

ーー勝ち越しが決まってからずいぶん先がありました。どう思っていましたか。

 

2桁勝ちたいなと思いました。まだ6日あったのですね。残りを1番1番頑張っていこうと思いました。その日その日の相手に全力でぶつかるのです。

 

初の三賞・敢闘賞を受賞(秋場所千秋楽)

ーー2桁勝てば、三賞という声もありましたね。


三賞は取れると思っていませんでした。評価していただいたことはうれしいです。

 

ーー九州場所は当然、みんながマークしてくると思いますが、九州場所に向けてどう思っていますか。

 

秋場所で経験したこと、課題を修正して自分の相撲を取り切れるようにしたいです。

 

ーー秋場所が11勝4敗で、番付が前頭8枚目まで上がりました。

 

相手が誰でも自分の相撲を取るだけです。

控えに入って自分と対話、やることを確認

寄り切りで阿炎を破り11勝目(秋場所14日目)

ーー関取は落ち着いて相撲が取れるようになりましたね。

 

はい、慣れたこともあると思います。15日間ありますね。1番負けたくらいで落ち込んでいたら、きりがないと思います。

 

ーー関取を見ていると控えに入って、独り言というか、つぶやいているのを見かけることが多いのですが、あれはどういうことですか。

 

自分でやることは決まっているので確認しています。相手によって立ち合いを変えるとか、器用なことはできないです。自分と対話してやることを確認しているのです。

 

ーー単独トップで千秋楽を迎えて、当然意識しましたよね。

 

意識しない方が難しいですね。勝ったら優勝と思うと、優勝がどれだけすごいことか、やったことがないので分からないのですが、やはり緊張します。

 

熱海富士対朝乃山(秋場所千秋楽)

ーー対戦相手が朝乃山関でした。

 

本割で勝てば良かったのですが、強かったですね。上位や三役は強いです。

 

ーー終盤に負けた大栄翔、貴景勝、朝乃山戦、関取は全部いい形になっていました。一方的に負けた相撲はなかったです。

 

本割で大関と対戦したときは、自分の立ち合いができました。それでも勝てないのが大関なのだと思いました。

優勝決定戦、全力でやった

ーー千秋楽はお母さんと妹さんが国技館に応援に来ていました。

 

目の前で勝ちたかったです。

 

優勝決定戦 貴景勝対熱海富士(秋場所千秋楽)

ーー貴景勝関との優勝決定戦、本割でいい相撲が取れていました。どう臨みましたか。

 

私が入門する前から部屋の横綱が対戦している相手です。そこに私が立てているということを昔の自分に言いたい気持ちです。全力でやったのでうれしかったです。

 

ーー大関が立ち合い動いてきたことは頭になかったですか。

 

頭になかったです。私の立ち合いが低かったのです。

 

ーー大関は「右を差されないように左からおっつけに行きました。ああいうように決まるとは思いませんでした」と言っています。立ち合いの圧力、右差しを大関が認めたということです。

 

型を作れと言われ続けてきたので、そう言っていただけるとうれしいです。もっとやることがいっぱいあるので頑張りたいです。

稽古しないと強くなれない、要領がいい方ではない

秋巡業の朝稽古で申し合いをする熱海富士(10月4日)

ーー関取はよく稽古しますね。毎日100番近く取っているのではないですか。

 

最近はそんなにやっていないです。幕下上位の若い衆が強いです。私と尊富士、研修生の3人で取っていて、そのうち関取衆も入ってきますが、稽古のレベルが高いです。

 

ーー厳しい伊勢ケ濱部屋の中でも、いちばん稽古量が多いですしね。

 

稽古しないと強くなれないので、昔からそうでした。要領がいい方ではないです。

 

ーー十両に上がったときに強くなってお母さんを喜ばせたいと言っていましたが、そういう思いは強いですか。

 

親孝行をしたいと思っています。小さいころからお母さんに「自分1人で生きていると思ったら大間違いだ」と言われてきました。高校を卒業してプロに入って、お母さんの言ったいろいろな人に支えられていることが分かりました。

私の相撲を見て、熱海や全国の人が喜んでくれたらいい

十両優勝のセレモニーに集まった多くの地元ファンと握手(7月25日)

ーー関取は出身地熱海への思いは強いですね。

 

強いです。熱海は大好きです。昔から住んでいる街ということもありますが、人が温かくて、街の雰囲気も温かいです。

 

ーー関取の活躍が熱海の人たちにとっても喜びとなりますね。

 

私の相撲を見て、熱海の人や全国の人が喜んでくれたらいいと思って頑張っています。

 

ーーたくさんやることがあると言っていましたが、課題はどこにありますか。

 

下半身が弱いですし、筋肉も足りない。立ち合いも全くだめです。土俵際も弱いです。

北の富士さんに活躍を見ていただけたらうれしい

土俵入りする熱海富士(秋場所14日目)

ーー秋場所の活躍で熱海富士という力士を熱海の人だけでなく、全国の相撲ファンがよく知りましたね。

 

熱海と聞いて、熱海富士はいいねとか、少しでも興味を持ってもらえたらうれしいです。

 

ーー関取は最後の仕切りのときに、足を細かく動かしますね。

 

ルーティーンとしては、やっていないです。タオルを使うときにもルーティーンと意識はしていないです。

 

ーー意識を集中させようとかということではなく、体が勝手に動くのですね。

 

立ち合い、さすがに長いと怒られるので早めにしたいです。

 

笑顔で決意を語る

ーー北の富士さんが、関取のことを十両に上がる前から高く評価していますが、どうですか。

 

うれしかったです。この活躍を見ていただけていたらうれしいです。これからも頑張りたいです。

 

 

【雑誌「NHKG-Media大相撲中継」九州場所号より】

 

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