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特集 豊昇龍「自分の相撲を取りたい」新大関で臨む大相撲秋場所

相撲 2023年8月31日(木) 午後3:00

豊昇龍は7月の名古屋場所で12勝3敗で初優勝し、場所後大関に昇進しました。日本相撲協会の使者から昇進を伝えられると、「大関の名を汚さぬよう気魄一閃(きはくいっせん)の精神で努力いたします」と口上を述べました。秋場所に新大関で臨む豊昇龍に、NHK大相撲中継でおなじみの吉田賢アナウンサーがインタビューしました。

 

豊昇龍(右)と吉田アナウンサー

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「気魄一閃」は何があっても立ち向かう意識

ーー昇進後の巡業などで大関と紹介されると、上がったという実感と責任感が出てきたのではないでしょうか。


大関はいろいろな意味で、いちばんやらなくちゃいけないですからね。

 

ーー大関昇進の伝達式の口上で「気魄一閃」という言葉を使いましたが、どんな思いでしたか。


どんなことがあっても、何があってもしっかり立ち向かうという意識、心で、と。そういう意味で使ったんです。

 

大関昇進の伝達式で口上を述べる豊昇龍 (左)

ーー名古屋場所は、大関昇進が懸かる場所だったのですが、どういう思いで迎えたのですか。


大関は意識していなかったですけれど、 名古屋に入って、七夕の短冊に、なぜか分からないのですが、「優勝」って書いたんですよ。

 

ーーそれがかなったわけですね。昇進の目安は3場所で合計33勝だなどと、周りは騒ぎましたよね。それでも意識しなかったですか。特に場所の終盤に来ても。


していなかったです。もし、していたら硬くなって相撲が取れなかったです。でも優勝は意識していました。名古屋市に、通っているトレーニングルームがあるのですが、そこの黒板にでっかく「優勝」って書いたんですよ。場所が始まる4日前ぐらいです。それでトレーニングの先生に「これは優勝するまで消さないでください」って言ったんです。そうしたら本当に優勝しちゃった。そういうことってあるんですね。

 

伯桜鵬を上手投げで破る(名古屋場所千秋楽)

ーー千秋楽の相手は、まさか新入幕(伯桜鵬)とは思わなかったのではないでしょうか。


もしかしたら来るんじゃないかなとは思っていましたけれど。

 

ーーいざ新入幕の19歳とやることが決まったときはどう考えましたか。


やると決まったときは別に何も思っていなかったですよ。やるしかない。決定戦になるとかはどうでもいい。とにかく勝たないと優勝はない。土俵に上がって何も思わずにやりましたよ。

 

優勝決定戦で北勝富士を破り初優勝(名古屋場所千秋楽)

ーー優勝決定戦はどうでしたか。


北勝富士関には本割(12日目)で負けていました。でも土俵に上がったときは、逆にもう何も考えていなかった。いつもどおりの自分だったので、緊張とかはなかったですけれど。

 

ーーなぜ緊張がなかったのでしょうか。


しっかり集中できていたからです。

 

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メンタルトレーナーをつけて変化

ーー集中するために、メンタルトレーニングとか、何か変えた部分はあるのですか。

 

メンタルトレーナーをつけましたよ。

 

ーーいつからですか。


夏場所からです。 1週間に1回診てもらっています。

 

 

ーー何かきっかけがあったのですか。


自分からです。知人にメンタルトレーナーを探してほしいと頼んで、オリンピック選手などにいろいろなメンタルトレーニングをやっている人を見つけてもらいました。

 

ーーメンタルトレーニングを始めて変わりましたか。


最初はこんなことで変わるのかと思いましたが、ちょっと変わったかなと。

 

ーーなぜメンタルトレーニングをしようと思ったのですか。


自分はメンタルがやられるタイプだったので、強くしないといけないと思って。

 

優勝決定戦を制した豊昇龍(名古屋場所千秋楽)

ーー名古屋場所の相撲は、全然引かなかったし、簡単に投げに行ったりしなかった。確かに投げ技も使ったし足技も使わなかったわけではないけれど、簡単には行かなかった。本当に攻めることに集中しているなと思いました。


そうですね。

 

ーー勝つより攻めることに集中しているように見えたんですよ。


勝ちたいというよりも、自分の相撲を取りたい。そういう気持ちでやっていました。

 

ーーそのあたりもメンタルトレーニングで変わってきたんですかね。


変わったと思いますよ。

 

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叔父には「ちょっとずつ近づいている」

賜杯を手に笑顔

ーーそして叔父さん(元横綱朝青龍)ですが、何と言ってくれたんですか。大関昇進と優勝について。


すごく喜んでいましたよ。

 

ーー「優勝したら泣くよ」って言われたとか。


「優勝したら俺が泣くぞ」と言われました。 「泣くから大関のことは今場所決めろよ。頼むから」って言われて「はい」って言ったんですけれども、心の中で「わ、言っちゃったけれど、やばいな」と言った瞬間に思いました(笑)。

 

ーー最後に、改めて新大関として挑む秋場所への抱負をお願いします。


大関という名前で、しっかりとお客さんを盛り上げる相撲を取っていきたいです。

 

新大関となる秋場所の番付表(8月28日)

ーー大関になった以上、やはり優勝に絡んでいかないといけないですね。


それもまあ、頑張ります。

 

ーー心の中では、叔父さんには負けないで、3場所で横綱に上がるぞと。(朝青龍は3場所で大関を通過した)


それは言いません(笑)。

 

〔雑誌「NHKG-Media大相撲中継」秋場所号より〕

 

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