特集 落合博満 プロ野球後半戦のカギをオレ流解説!

プロ野球シーズン後半戦。これから繰り広げられる優勝争い、カギになってくるのは一体何なのか?落合博満さんがオレ流解説です!(サンデースポーツ 2023年8月6日放送)
カギを握る“大型連敗”
豊原キャスター:さあ、後半戦の優勝争いのカギを落合さんにたっぷり伺っていきたいと思います。
中川キャスター:2か月前はどのチームにも優勝の可能性があるとおっしゃっていましたが、今はどうご覧になっていますか?
落合さん:優勝が決まるまでは、どのチームにも可能性は残っていると思います。
中川キャスター:まだ変わらずということですね。
豊原キャスター:セパ共に混戦の上位争いには少し変化が出始めているんですね。その要因の1つが大きな連敗です。先月パ・リーグは3位のソフトバンクが痛い12連敗。そしてセ・リーグは3位の巨人と4位のDeNAが、共に5連敗しているんです。優勝を争う上では後半戦で大きな連敗をしないというのは、ひとつ大きなポイントになるんじゃないかと思いますが、そのために重要なことなんでしょうか?
落合さん:やっぱりエースがどうゲームの連敗を止めるかということなんだろうと思います。
豊原キャスター:エースが止める?
落合さん:はい。
中川キャスター:落合さんの中でのそのエースというのは、どんな存在ですか?
落合さん:貯金を何個増やしてくれるか。例えば、10勝しても10敗するピッチャーというのは必ずチームにいるんですよ。こういうピッチャーも必要なんです。でも、エースたるゆえんは、何個自分で貯金を作れるかというのがエースの条件。
中川キャスター:なるほど。
豊原キャスター:そういうピッチャーが連敗を止めるために必要ということですね。今の球界に落合さんが思われるようなエースはどのくらいいますか?
落合さん:オリックスの山本くらいじゃないですか。
山本由伸投手(オリックス)
豊原キャスター:そうですか。それはどんな要素ですか?
落合さん:すべてのボールが一級品ですよ。だから、まっすぐはコントロール悪いなと思えば変化球で攻めることができるし、その逆のパターンもあるしね。唯一完投の数が少ないと言えば少ないんですけどもね。でも、負けを抑えてくれるピッチャーには変わりないですよね。
豊原キャスター:その山本由伸投手ですけれども、前の試合でチームが敗れた後に自身が先発したケースは、今シーズン6試合ありますが、そのすべてで勝ち投手になっていて、まさに連敗を阻止しているんですよね。
落合さん:そこで負けると大型連敗というのは生まれるんですけど、どこで止めてくれるかという。それがエースで止めるというのが一番良い条件なんですよね。
中川キャスター:ちなみに落合さんの中日監督時代も、連敗が少ないことが特徴だったということで、我々調べてみたところ、8年間で5連敗が4回、6連敗は僅か2回でした。
落合さん:こんなにあったのかなと…。
中川キャスター:それでも、こんなにと感じますか。
落合さん:ええ。
豊原キャスター:厳しいですね。自分に厳しい。その連敗が少なかった要因として、先発投手の完投数が多かったのです。リーグ優勝した2006年の完投数は19回にものぼっているんですね。ちなみに、今シーズン多いチームでもまだ7回なので、これがいかに多い数字だと感じていただけるかと思います。落合さんが中日の監督時代には、川上憲伸投手、吉見一起投手、山本昌投手など、先発完投というピッチャーがそろっていましたよね。これは”完投しろ”と指示をされていたんですか?
落合さん監督時代の投手陣 (左)山本昌投手 (中)川上憲伸投手 (右)吉見一起投手
落合さん:ええ。先発ピッチャーは、完投する事を目標に投げさせて準備させていましたから。どっかでヘタッてきたら中継ぎにかえてやるよという、そういう使い方ですよね。
豊原キャスター:完投させるためには、それなりに準備をしていないとですよね?
落合さん:2月1日のキャンプインと同時にブルペンに全員入れましたから、ピッチングコーチの指示でね。1日に200球、300球を投げるピッチャーはザラにいましたから、肩のスタミナだけはあったと思います。
どうなる優勝争い!
中川キャスター:先発完投型の勝ちきれるエースの存在が大事ということですが、それを踏まえたうえで、改めて優勝争いの行方について伺っていきます。まずセ・リーグでいうと8月3日の試合で巨人の戸郷翔征投手が9回149球で完投勝利。その戸郷投手に加えて完投の力がある菅野智之投手も戻って来ました。巨人は今日(8月6日時点)3位に上がりましたが、今後追い上げてくる可能性は?
巨人 (左)完封勝利した戸郷翔征投手 (右)けがから復帰した菅野智之投手
落合さん:可能性は十分にあると思います。ただ、戸郷1人では心もとないですね。でも、149球投げて9回どうするかと言われたら、「いや、自分で行きます」と言うのが先発ピッチャーの最低条件ですよ。人には勝負を委ねないというね。自分で決着をつけるのが、本来のあるべき姿なんだろうと思います。
豊原キャスター:149球投げてでも、という事ですね。
落合さん:中6日あけているわけですから。
豊原キャスター:一方のパ・リーグは、(8月6日時点で)オリックス首位ですが、先ほどの山本投手を始め先発投手が充実していますよね。今日の落合さんの理屈だと、逃げきれるのかなと感じてしまいますがいかがですか?
落合さん:可能性は大いにあると思います。まして、残りの試合1勝1敗ペースでいっても約80勝する。だいたい優勝ラインを80勝とした時に、五分でも良いやというような戦い方。でも、五分でも良いやというと、だいたい負け越しをするんですけどね。だからオリックスは、1戦1戦を大事にこのゲームを勝ち切るんだというような心構えで戦っていけば、やっぱり一番優勝に近いポジショニングにいる事だけは確かです。
豊原キャスター:勝ちを計算できるピッチャーがいるという事ですね。ただ、逆に他のチームもそうはさせないと頑張るでしょうから、この辺り各チームの先発完投型、あるいはエースと目されるようなピッチャーがどう働くか。シーズン終盤注目ですね。