特集 五郎丸歩が徹底分析!開幕迫るラグビーワールドカップ

開幕までひと月を切ったラグビーワールドカップ。就任8年目、ジョセフヘッドコーチのもと、鍛え上げられた男たちが前回大会を超えるベスト4以上を目指します。7月29日に行われたトンガ戦では、ことしに入って初めてテストマッチで勝利しました。本番に向けて弾みはついたのか。元日本代表の五郎丸歩さんと共に手応えと課題を徹底的に解き明かします!(サンデースポーツ 2023年7月30日放送)
ワールドカップへの収穫①「スクラムの安定」
豊原キャスター:トンガとのテストマッチで日本代表は今シーズン4戦目にして初勝利。私もホッとしましたが、五郎丸さんはどうでしたか?
五郎丸さん:なかなか勝ち星に恵まれない期間を過ごしましたが、ようやく勝ってくれて、本当に安心しましたし、選手たちが今までやっていることが間違っていなかったんだということをしっかり証明できたと思います。あとはファンですよね、ファンのみなさんも「ようやくやってくれた」という感じだと思います。
豊原キャスター:ここまでの戦いを振り返って、日本代表がつかんだ手応えは何なのか、五郎丸さんにあげてもらいました。
五郎丸さん:まずは“スクラムの安定”ですね。攻守ともに土台となるものですから、ここが安定しないと試合もなかなか安定しない。トンガ戦前半20分、日本の先制点につながる場面。マイボールのスクラムの安定が、日本の得意とするボールをつないで、空いたスペースにボールを持っていくという展開につながった。このトライは、本当に安定したスクラムがあってこそとなります。
豊原キャスター:トンガ戦の前までは日本はスクラムで苦戦していました。22日のサモア戦では、押し込まれて崩される場面もありました。選手たちはここから修正してトンガ戦に臨めていたと話しています。
トンガ戦終了後の堀江翔太選手
相手のスクラムに(対して)“押そう 押そう”としすぎて、自分たちが崩れていた部分があったので、もうちょっと原点、自分たちが どうまとまってどう押すかというベースのところをしっかりしようという話はしました。
豊原キャスター:五郎丸さん、選手たちはコミュニケーションを取ってしっかり問題を解消できている?
五郎丸さん:そうですね。本大会に入っても次の試合まで1週間しかありませんので、この短い期間でどれだけ修正していくかというのが非常に大事になってきます。また試合の中でも修正できるようになってくれば、かなり上位を目指せるのではないかと思います。
ワールドカップへの収穫②「ディフェンスの意識」
豊原キャスター:そして、五郎丸さんがあげるもうひとつの手応えが“ディフェンスの意識”。
五郎丸さん:ラグビーは体のぶつかり合いというイメージがあると思うのですが、実は"人数ゲーム"なんです。(※トンガ戦の場面から解説)タックルをして倒れた選手がすぐ起き上がってディフェンスラインに戻る。そうすることによって、ラックと呼ばれるボール争奪戦のところにトンガの選手たちが寄ってきて、ここで寝ている選手が3人。対して日本は誰も寝ていない状況ですから、15対12とディフェンスが有利な状況を作れている。
上原さん:全員が休まず守り続けるのは体力的にも大変だと思うのですが、相当練習してきた成果ですか?
五郎丸さん:ワールドカップ前に本当にキツい練習をやっていますけど、ただキツい練習をやるだけではなく、しっかりと意識をしてチームの統一感を持たせて、“寝たらすぐ起き上がる”という意識がこの4戦ずっと見られているので、期待していいんじゃないかと思います。
ワールドカップへの課題①「3秒」
中川キャスター:ますます楽しみになりますが、改めてワールドカップ1次リーグ、日本の対戦相手は、世界ランキング6位で前回大会準優勝のイングランドをはじめ、7位のアルゼンチンなどとの戦いが待っています。こうした強豪との対戦に向けて、今回の強化試合やテストマッチで課題も見えてきたそうですね。
五郎丸さん:そうですね。ひとつめのキーワードは“3秒”。ボールの争奪戦の場面で、(ボールを奪ったあと)いかに早く出すかが勝負になってきています。この“3秒で出す”がいかに大事か。サモア戦の時は5秒かかってしまった。この2秒の遅れが大きな差を生みます。
前回優勝した南アフリカは、3秒以内が74%(7/15の試合)。日本はサモア戦で51%です。この数字をいかに上げていくかが大事になってきます。それはディフェンスが正しい位置に立つ前に、ボールを早く展開することによって、アタックが前に進みやすくなることにつながります。
ワールドカップへの課題②「キックの精度」
豊原キャスター:そして、もうひとつ五郎丸さんがあげた課題が“キックの精度”です。
五郎丸さん:強豪相手と戦う時は、なかなかトライは取りにくくなる。その中でキックがすごく大事になってきます。トンガ戦だけをみますと、6本蹴ったうち、2本しか入らなかった。この確率を上げていくことが強豪国に勝っていく最も重要なことになってきます。
豊原キャスター:五郎丸さんもキッカーとしてプレッシャーのかかる場面を数々経験していますが、どんなことを心がけていた?
五郎丸さん:自分自身を信じることですよね。もう残り1か月です。いろんなアドバイスが寄せられたり、心配の声が届いたりするんですけど、自分自身を信じ抜くことはすごく大事です。1人のお客さんだろうが5万人のお客さんだろうが、自分がやらなくてはいけないことが明確にあると思うので、そこを信じてやりきるということがすごく大事になってきます。
中川キャスター:ルーティンもそういうことですか?
五郎丸さん:そうですね。ルーティンはめちゃくちゃ大事ですよ。
中川キャスター:(馬瓜)エブリンさんも、日本代表としてプレッシャーかかる場面を数多く経験されていますがどう対処されてきたのですか?
馬瓜エブリンさん:自分の役割をしっかりと繰り返し頭の中で考えて、このチームで自分はどんな貢献できるのかを考えるとプレッシャーにわりと打ち勝てたと思います。
ラグビー日本代表 今後の日程
中川キャスター:日本の今後の日程です。6日後にはフィジーと(7月30日時点)、来月末にはイタリアとのテストマッチを経て、ワールドカップ本番に向かいます。
豊原キャスター:ワールドカップまで残り2試合のテストマッチは結果と内容どちらが大事ですか?
五郎丸さん:両方大事です!来週末が国内最終戦ですから、日本のみなさんにいい形で勝利を届けてほしいなと思いますね。
中川キャスター:その中で少し心配なのがリーチマイケル選手の状況。22日サモア戦でリーチ選手が危険なタックルをしたとしてイタリア戦まで3試合の出場停止処分となりました。今後、2試合に減免される可能性はありますが、最悪ぶっつけ本番でも大丈夫そうですか?
五郎丸さん:彼は試合に出る出ない含めて、精神的支柱としてチームに間違いなく帯同してくると思いますし、決勝を目指すには必ず必要になってくる選手だと思います。あと彼はハードワーカーですから、試合に出なくてもしっかりと調子を整えて、また帰ってきてくれると思います。
豊原キャスター:そして日本代表にも若いリーダーが育ってきていますよね?
五郎丸さん:そうでうね。リーチ選手も自分だけじゃなくて周りにいっぱいリーダーがいるからそんなに心配していないんだと言っていましたね。
豊原キャスター:きょうあげていただいた課題をしっかりクリアすることで、本大会での活躍も見えてくるということで、私たちもそこを注目して今後見ていきたいと思います。