特集 陸上女子1500m 後藤夢選手 もう背中は見たくない|日本陸上選手権

陸上女子1500メートルの後藤夢選手(23)には、常に背中を追い続けてきた存在がいます。
女子中距離のエース、田中希実選手。後藤選手と田中選手は中学時代から地元・兵庫県で競い合い、高校と大学では同級生で昨シーズンまでは同じ実業団チームに所属した戦友でありライバルです。田中選手の背中をとらえ、少しでも前に…
”STAY HUNGRY”
ことしの陸上日本選手権で後藤選手が狙うのは優勝、そして“脇役”からの脱却です。大会前に後藤選手に伺ったインタビューをお伝えします。
田中希実選手は”戦友”
Q.後藤選手にとって、田中選手はどのような存在か。
A.同級生で一緒に練習してきたので友達ではあるんですけど、陸上選手として尊敬していますし、戦友です。田中選手がいなかったら、今私は陸上を続けていないと思うくらい、大事な存在です。
Q.どのように呼び合っていますか。
2020年日本選手権 ゴール後の田中選手と後藤選手(右)
A.ずっと希実ちゃん、夢ちゃんで。
Q.ふだんはどのような会話を。
A.陸上の話も多少しますけど、大学の時はスイーツの話とか陸上から離れた話もしていました。
Q.田中選手の尊敬できるところとは。
A.試合で勝ったりとか自己ベストのタイムが出たりしても満足せず、常に上を見て努力し続けるところです。自分を追い込む姿をずっと練習でも見てきたので、そこは見習わないといけないです。
Q.1500メートルの田中選手の強さとは。
A.どんな状態であっても勝ち切るというか、自分の走りに徹するところが後ろ姿でも伝わってくるのでそこはすごいなと思います。
田中選手を追う後藤選手(左)
高校を卒業してからずっと背中を追い続ける存在で、そのイメージが自分の中に焼き付いています。ただ、田中選手と肩を並べて走るところまでまずは行かないとその先は見えてきません。去年までは無意識のうちに勝てないと思っていましたが、田中選手の2番手だったからこそ、反骨精神やハングリーさみたいなところが年々自分の中で大きくなっています。
Q.ことし4月のレースで田中選手に勝っている。距離感はどのように感じていますか。
田中選手を抑えて優勝
A.勝ったといっても、2人ともコンディションがいい状態でレースをして勝てたわけではないので、そこはあまり満足できていません。
取り組んでいるのはスピード強化
Q.日本選手権で勝つために、取り組んでいることは。
A.4月からスピードの強化に取り組んでいます。250メートルから300メートルの短距離を全力で走って、少し休憩して、また全力で走る。
これを5本繰り返すスプリント系のトレーニングを重点的に行っています。国内に限らず海外で勝っていくためには、最低限のスピードがなければ最初からレースについていけません。加えて自分はラストスパートでスピードの切り替えができず、惰性でダラダラと走ってしまうときがあるので。
最後の1周やラスト200メートルのスパートの差でタイムが2秒や3秒も変わってくるので、そこが絞り出せないと勝負できません。だから意識的にスプリント系のトレーニングを行っています。
Q.スプリント練習で意識している点は。
A.肩周りです。私の場合、ラストスパートで力を振り絞るあまり、肩に力が入って腕の振り幅が狭まることで、逆にスピードが出なくなる傾向があるので、練習の後半はそこを意識しています。
Q.去年の日本選手権女子1500メートルでは終盤にスピードを上げた田中選手についていけず2位だった。あそこでついて行ければ勝機が出てくるということか。
去年の女子1500m決勝 田中選手を追う後藤選手
A.あそこでスピードがあれば田中選手につけて、ラスト100メートルとかでもう1段スピードを切り替えて競ることができたと思っています。ことしはそういうことができればなと思います。
Q.スプリント系トレーニングの成果は。
A.短距離の単発の練習では今までより1秒か2秒ほど速いタイムを出せるようになっていますが、レースではあまり結びついている感じはしていません。レースでかみ合ってきてくれればと思っています。
狙うは優勝 ”脇役”からの脱却を
Q.日本選手権前、現在の心境は?。
A.今年の日本選手権は大事な試合ということが自分の中でもわかっていて、去年までと違って、すごく緊張やプレッシャーはあるんですけど、今回は勝ちたいという欲を強く持っています。
去年の日本選手権 後藤選手(2位:左)と田中選手(優勝:中央)
ずっと2位で田中選手に勝って優勝とかは自分の中で無理だというのがこれまであったので、ことしは優勝を目標にしながら気持ちで負けないようにしていきたいと思います。
Q.田中選手に自分の背中を見せたいか?。
A.背中を見せるほどの大差で勝つのは正直難しいです。でも少しでも、1秒とかでなくても0点何秒とかでも競って、終盤走ることができたら自分もドキドキするし、観客もドキドキすると思うのでそういうレースを見せることができたらいいですね。
この記事を書いた人

猿渡 連太郎 記者
平成25年 NHK入局
宮崎局を経て、スポーツニュース部。