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特集 夏場所序盤戦の土俵をどう見た!? ~武隈親方の目~

相撲 2023年5月19日(金) 午前0:00

横綱・照ノ富士の復帰、角番で臨む大関・貴景勝。そして、大関昇進がかかる霧馬山をはじめとした4人の関脇陣・・・見どころたくさんの夏場所も序盤戦の5日間が終わりました。

 

今場所から始まった企画「親方の目」。2回目となる今回は元大関・豪栄道の武隈親方に序盤戦を振り返ってもらいました。

 

(武隈親方)

「横綱も全勝だからね。そして、関脇陣が序盤好調なので、すごく見応えありますね」

 

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大関として長年活躍 武隈親方

低い当たりと前に攻める相撲を持ち味に活躍した武隈親方。

 

豪栄道は平成28年秋場所で初優勝(右)

平成26年の名古屋場所のあと大関に昇進。大関の在位は33場所と、史上10番目の長さです。3年前に引退した後、境川部屋の部屋付きの親方として指導にあたっていましたが、去年独立しました。ここまで5連勝と波に乗る十両筆頭の豪ノ山などを育てる部屋の師匠です。

 

復帰の横綱・照ノ富士は

まずは、去年の秋場所以来の土俵となった横綱・照ノ富士。5日目は宇良を相手に両腕をきめてここまで5連勝としました。

 

5日目 照ノ富士が宇良をやぶる

武隈親方があげたキーポイントは2つ。横綱本来の四つ相撲と、実戦での「勘」を取り戻せるかどうかです。

武隈親方

この2日間は相手を引っ張り込んで勝っているけど、本来はきめ出しばかりじゃなくて、右四つになって、浅く上手を引いて寄り切るってのが一番の相撲。それがまだ出てないので、それが取れれば、本人も手応えつかむんじゃないか。4場所休場していたので、まだ場所の勘をつかんでいないと思うので、1つ負ければ一気に崩れる可能性もある。その中で完全な形で勝てば、気分的にも乗ってくると思う。

 

霧馬山 大関昇進の可能性は

場所を盛り上げる要因となっているのは横綱だけではありません。4人の関脇はそれぞれに結果を残しています。

 

霧馬山は土俵際逆転のすくい投げで琴ノ若を下す

大関昇進がかかる場所として注目される関脇の霧馬山は、ここまで4勝1敗。しかし、武隈親方は少し厳し目で分析しています。

武隈親方

星はあがっているが内容はそこまで。いい相撲は2日目の遠藤戦くらいで、それ以外はあまりよくないですね。突き放して左四つとか、当たってそのまま左四つで寄り切ったりとか、本来の相撲がでてくれば、大関というのもより確実になってくると思うんですけど。

周囲からのプレッシャーもかかる中ですが、大関は、その重圧に打ち勝ってこそたどりつける場所だと強調します。

武隈親方

意識して取らないと難しいもの。無意識で大関になったというのは絶対にないと思う。狙ってこれまで大関になってきた人が多数だと思うんで。

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関脇陣はそれぞれに好調

その霧馬山に先場所優勝争いで競り負けた大栄翔。勝ちっぱなしで迎えた5日目は阿炎と対戦しました。

 

大栄翔は阿炎に敗れる

先に攻めたものの、土俵際のうまさを見せられて敗れました。

武隈親方は動きのよさを評価する一方、突き押し相撲ならではと言われるある弱点を気にかけています。

武隈親方

突き押しの相撲は流れで1つ負けるとぱたっと連敗するくせというか、そういう相撲になることがあるんです。そういう意味では大栄翔はあした(6日目)が一番大事です。

その6日目、取組が組まれたのは同じ関脇の豊昇龍です。互いに1敗どうしでの対戦です。いずれも先場所はふた桁勝利をあげているため、大関をめざす上で、今場所の成績が重要な意味を持ちそうです。

 

しぶとい相撲の豊昇龍

武隈親方

お互い負けられないと思うが、大関を目指す時は同格には絶対に負けられない。お互いに大関を目指していくライバルだと思うので、この対戦は重要ですよ。

さらに関脇でただ1人勝ちっぱなしの若元春。ここまで得意とする左四つの相撲がさえ渡っていて、武隈親方も手放しで評価しています。

 

3日目 若元春ー正代

武隈親方

若元春は自分の型が確立している。4人の関脇がいるが、一番自分の形を徹底している。左四つに必ずなるという、差し負けないのが強み。左は相当に固いんじゃないかな。

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大関には奮起を期待

気になるのは先場所ひざのけがで途中休場した角番の大関・貴景勝。負け越せば大関から陥落する状況で迎え、きょう2敗目を喫しました。

 

貴景勝は翔猿に敗れて2敗目

貴景勝らしい頭から鋭く当たる相撲は見せられていません。高校の先輩にあたる武隈親方は、奮起への思いを込めたことばをかけました。

武隈親方

内容は全然よくないですよね。足のふんばりがきいていないんだと思う。貴景勝は足をよく使って相撲を取るというのが特徴だが、いまはとにかく下半身が不安定なので、今場所はしのいで乗り切るしかない。

中盤戦へ、展望は…

最後に中盤戦への展望をうかがいました。名前があがったのが。勝ちっぱなしの横綱・照ノ富士に、4人の関脇。さらには幕内に復帰した朝乃山です。

 

朝乃山は序盤戦5連勝

武隈親方

ここからは関脇どうしの潰し合いが始まったりする。横綱に対して関脇が何人ついて行けるか、そしてあとは朝乃山。照ノ富士も本来の相撲で取ってないので、そこは不安材料あるが、左上手をばちっと取って、右を差して寄り切る相撲が出てきたら一気に照ノ富士のペースになると思う。

連日満員御礼が続く夏場所、さらなる土俵の盛り上がりに期待です。

 

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この記事を書いた人

舟木 卓也 記者

舟木 卓也 記者

平成25年NHK入局。令和2年秋からスポーツニュース部。

プロ野球(ロッテ)担当を経て、現在は大相撲や柔道など格闘技担当。

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