特集 2023年NHK杯体操の見どころ ~担当アナウンサーの目~

体操の個人総合で国内最高峰のタイトル「NHK杯」が、今月20日(土)、21日(日)、東京・千駄ヶ谷の東京体育館で行われます。先月の全日本選手権の得点を持ち点に戦い、男女とも上位に入ると、今年9月30日からベルギーで行われる世界選手権の代表選手にも決まります。体操ニッポンで国内最強のオールラウンダーの称号をつかむのは?また、来年に迫ったパリオリンピックにむけて重要な、秋の世界選手権に出場する権利を手にするのは誰でしょうか?
男子編 橋本大輝選手を軸に
男子はすでにパリオリンピックの団体出場権を獲得しています。東京オリンピックでは、わずか0.103の差で金メダルを逃しました。2大会ぶりの金メダル奪還を目指すパリでのメンバーに入るためにも、前哨戦となる今年の世界選手権は強豪国の選手と勝負する経験を積む絶好の機会。既にパリへの戦いは始まっています。
橋本大輝選手 全日本選手権で
NHK杯の優勝争いの中心は、やはり東京オリンピック個人総合金メダリスト、順天堂大学4年生の橋本大輝選手です。
冬に腰の疲労骨折や大会直前に右足首のケガがあった影響もあり、全日本選手権は本来の演技ではありませんでしたが、それでも3連覇を果たしました。「パリオリンピックに向けてというより、毎試合成長したい」と話す橋本選手。すでに過去の実績から世界選手権の代表には内定している中で、NHK杯では、得意の鉄棒でF難度のリューキン(伸身トカチェフ1回ひねり)を入れた難しい演技構成を計画するなど、更なる高みを目指します。内村航平さん以来のNHK杯3連覇をかけ、どんな演技で“魅せて”くれるのか、注目です。
萱和磨選手 全日本選手権で
橋本選手を追うのはセントラルスポーツ所属の26歳、全日本2位の萱和磨選手です。
もともと安定感に定評がありますが、東京オリンピックのあと様々な技に挑戦し、今は技の美しさにも磨きをかけるなど、着実に歩みを進めています。逆転でのNHK杯初優勝はなるでしょうか。
今大会では橋本選手を除く上位2人が世界選手権の代表を手にします。その争いはし烈です。萱選手と同じ所属・年齢で、東京オリンピックに出場した谷川航選手や、その弟の谷川翔選手、徳洲会体操クラブで練習する星槎大学2年生の川上翔平選手などが、しのぎを削ることになりそうです。
女子編 優勝争いは大混戦
女子は、去年の世界選手権は団体で7位となったため、パリの団体出場権を獲得できませんでした。
全日本選手権 優勝の渡部葉月選手(右)と2位の宮田笙子選手
今年の世界選手権は2008年の北京大会から続いているオリンピックの団体出場をかけてのラストチャンスとなります。そんな重要な舞台に立つ代表の枠は5つ。そのうち4人がこのNHK杯で決まります。優勝争いは大混戦です。全日本選手権は、筑波大学1年生の18歳 渡部葉月選手が初めての優勝を飾りました。去年の世界選手権では種目別の平均台で金メダルを獲得。それに続く大きなタイトル獲得で勢いにのっていて、NHK杯でも初優勝を狙います。
深沢こころ選手 去年の世界選手権
また、僅差の2位だった去年のNHK杯チャンピオン、順天堂大学1年生の宮田笙子選手や、渡部選手や宮田選手らと共に去年の世界選手権に出場し団体ではキャプテンも務めた、筑波大学4年生の深沢こころ選手なども、逆転での頂点を目指します。
岸里奈選手 全日本選手権ゆかの演技
さらに、期待の新鋭も頭角を現してきています。戸田市スポーツセンター所属の高校1年生、岸里奈選手です。全日本では、2回目の出場で見事3位となり初の表彰台に上がりました。1メートル47センチと小柄ながらバネのある跳躍が特徴で、跳馬とゆかが予選・決勝とも全体トップの得点でした。とりわけ、ゆかでは、東京オリンピックで種目別の銅メダルを獲得した村上茉愛さんが得意にしていたH難度の大技シリバス(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)も見事に実施しました。本人が「最大のポイントだった。決められて良かった」と笑顔で振り返ったこの大技をNHK杯でも成功させるかが、優勝への1つのカギとなりそうです。
全日本選手権での表彰台 左から宮田笙子選手 渡部葉月選手 岸里奈選手
全日本選手権は、予選と決勝の合計得点で、優勝した渡部選手から4位の深沢選手までが、わずか0.299の差でした。他にも有力選手がいて、優勝争いと世界選手権代表争いの両方に最後まで目が離せません。
NHKでは大会の模様を、女子は20日(土)の午後2時からEテレで、男子は21日(日)の午前11時40分からBS1、その後、総合テレビでお伝えする予定です。放送の解説は、男子がアテネオリンピック団体金メダルメンバーの塚原直也さん、女子はいずれも2大会オリンピックに出場された寺本明日香さんと杉原愛子さんです。ぜひご覧ください!
この記事を書いた人

星野 圭介 アナウンサー
2000年入局 新潟県出身
プロ野球などスポーツ実況を中心に担当