特集 関脇・霧馬山 ”大きな山に挑む” ~推し相撲~
満員の国技館をわかせる関脇
満員御礼が続く夏場所。幕内土俵入りでしんがりを務めるのが関脇・霧馬山だ。
しこ名が読み上げられると館内からは期待の大きさを表すかのように声援と拍手が送られる。
今場所はみずから「大きな山」と位置づける大関昇進がかかるが「楽しみながらやれれば」とそこには、気負いも過信もない。
三役で”23勝” 大関昇進へ挑む
霧馬山はことし1月の初場所、小結で11勝。続く3月の春場所は新関脇で12勝をあげて初優勝を果たし、この2場所の勝ち星の合計は「23」となった。
夏場所で10勝以上すれば直近3場所の勝ち星の合計が大関昇進の目安とされる「33」に届くことになる。番付発表の日はこう決意を示した。
関脇・霧馬山
大関はすごく大きい山だ。チャンスはなかなか来ないと思うので、最後と思ってやっていきたい。今場所決めたいという思いもある。
積極的な出稽古で培った”自信”
大関昇進がかかる夏場所前には「稽古しかない」と愚直な努力を誓った。
右足の炎症のため、4月前半の巡業は休場したが、15日の藤沢巡業から復帰すると、これまでの分を取り戻すかのように稽古を行った。
所属する陸奥部屋では関取は自分だけ。そのため、巡業が終わると相手を求めて積極的に出稽古に励んだ。
同じく関脇の豊昇龍、大栄翔、若元春と積極的に胸を合わせ、連日20番から30番。貪欲に強い相手と鍛え合いながら、錬磨を重ねた。稽古を終えて見せる笑顔から、その充実ぶりを感じ取れた。
霧馬山
大きい目標を立てたし、そのためには稽古をやらないといけない。口だけではよくないので、あちこち行ってほかの関取と一緒に稽古やるしかない。ほかの関取と稽古やるのは楽しい。楽しみながらやるとものすごくやる気出てくる。稽古1つ1つが自信になってきている。今場所は緊張すると思うが、変に考えずに楽しみながらやりたい。
”楽しみながら”のびのびと
迎えた今場所。
初日は小兵で「肩透かし」が得意な翠富士を相手に、先手を取られ土俵際まで寄られた。
だが、そこから強さを見せた。差した左をうまく使って「肩透かし」で白星発進。
続く2日目は相撲のうまさがある遠藤との対戦。
立ち合い、鋭い踏み込みから前に出て、すかさず左にいなした。そして、力強く土俵下まで押し出して相撲巧者を圧倒した。
初日からの2連勝と、重ねてきた稽古を結果につなげた。
審判長を務めた元大関・武双山の藤島親方も「のびのびと取っていて、まったく硬さはない。楽しんで取っているように見えるくらいだ」と評価した。
霧馬山
一生懸命集中してやったのでよかった。きのう攻められたけど、きょうは落ち着いて攻められてよかった。一番一番なので次の一番に集中したい。
”楽しみながら”と自然体で土俵に臨める背景には、確かな稽古で深めた自信がある。大関昇進がかかる今場所で、その大きな山を越えられるのか。こちらの”楽しみ”も増すばかりだ。
この記事を書いた人
持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。