特集 親方の目 藤島親方 ~大相撲夏場所展望~

四つに組むのか、突いて押すか。土俵際の攻防も目が離せません。鍛え上げた体をぶつけあう力士たちの戦い、大相撲夏場所が14日に幕を開けます。
優勝に近いのは?注目の力士は誰なのか?NHKでは今場所から見どころや展望をさまざまな親方に分析してもらう企画を始めます。
題して「親方の目」、どーん(効果音のつもりです)!
栄えある第1回はどんな相手にも真っ向勝負で土俵を沸かせた元大関・武双山の藤島親方にお願いしました。見どころ盛りだくさんだそうです。
見どころ多し夏場所!
藤島親方が夏場所の見どころとしてあげてくれたのは大きく3点でした。
藤島親方
今場所は、見どころは多いんじゃないですかね。まずは、横綱・照ノ富士ですね。休場から明けてどんなものか。そして、大関・貴景勝。先場所いい相撲をしていましたが、序盤戦でひざを痛めて角番として迎える場所です。そこにこれから大関をつかもうかという霧馬山もついて終盤までいくと場所も盛り上がるんじゃないでしょうか。
休場明けの横綱は?
まず、4場所連続の休場から復帰する横綱・照ノ富士について。藤島親方は初日がキーポイントになると指摘しました。
照ノ富士 場所前の稽古
藤島親方
照ノ富士は膝の状態しだいだと思うんですが、稽古場と本場所は違うので、いかに初日にいい相撲が取れるかだと思う。やっぱりスタートは大事です。『いけるぞ』と思うのか、『あれ、まだ厳しいかな』と思うのかでは大きな違いになってきます。照ノ富士は(相手を)捕まえてしまえば安定感がありますが、4場所離れているというのは半年以上ですからね。その辺で、相撲勘がどうなっているか。ただ、出稽古に行くなど稽古はそれなりにはできていると思うので、本来の力が出れば問題ないと思います。大関から序二段まで落ちて、そこから横綱になった照ノ富士は、何回も大変な思いをしてきて、いろんな場面を経験して、打ち勝ってきているので、あまり心配しなくてもいいのかもしれませんけどね。
角番の大関・貴景勝
一方、6回目の角番で迎える貴景勝については気になるようです。
横綱審議委員会による稽古総見
藤島親方
貴景勝の方がちょっと気になりますよね。今月4日に行われた稽古総見では試しながらというか、100%では行けていないなという感じがしました。様子を見ながら相手の圧力を受けてみたり、前に出る相撲も100%で出ていないと思いました。ただ、感触はつかめたと思うので、貴景勝の場合は押し相撲ですから、立ち合いでいかに当たれるかが重要です。
その上で意外な指摘も…
藤島親方
けがをしている時は受け身に回ると負担がかかるので、攻めなければいけないという意識を持ちます。その時の方が、いい結果になることも多いので、そうなってくれるといいですね。やっぱり横綱大関が勝ってくれないと場所が締まりません。2人とも休場明けとはいえ、さすが大関、横綱だなということを期待したいですよね。
大関昇進がかかる霧馬山
大関昇進がかかる霧馬山は夏場所で10勝以上すれば三役として直近3場所の勝ち星の合計が大関昇進の目安とされる「33」に届くことになります。
横綱審議委員会による稽古総見
その霧馬山については…
藤島親方
稽古総見で、霧馬山は、元気いっぱい、のびのびやっていて、相撲を取るのが楽しくてしょうがないというような感じがしました。なので、かなりの確率で期待できるんじゃないでしょうか。先場所は12勝で初場所が11勝、あわせて23勝していて、あくまでも目安ですが、大関昇進には33勝というのがあります。ふだんどおりいけば期待できます。ただ、独特の緊張感やプレッシャーがどう影響するか注目ですね。
親方自身も経験してきた大関昇進への道のりの難しさを聞いてみると…
藤島親方
初めての大関取りだから、そこまで気負うことはないと思います。何回も失敗しているとどんどん自分を追い込んでしまうんです。大関になるには三役で半年間も好成績、いい体調を持続しないといけません。これはなかなか大変なことです。ただ、そういう思いは霧馬山自身はないと思うんですよ。これまで見てきて、あまり緊張するようには見えず、プレッシャーを力に変えられる力士だと思います。また、一方的な負け方もそんなにしないタイプで、取りこぼしが少ない相撲をするので、安定した成績が残せるんじゃないかなと思います。とにかく今は目の前の大関に絶対になるんだという、チャレンジ精神でいくのがいいと思います。
関脇陣にも注目!
同じ関脇、豊昇龍、大栄翔、若元春も霧馬山に大きく刺激を受けているといいます。
藤島親方
もともと大栄翔は実力者ですし、いろんな状態がよければおもしろい存在になると思います。あとは豊昇龍ですよね。今は霧馬山に注目がいってるので燃えているんじゃないですかね。これまで横綱大関が休場していた中で、いろんな力士が面白い相撲を見せていました。絶対的な人がいるのがもちろんおもしろいですが、どっちが勝つのかなという相撲もおもしろい。先場所10連勝した翠富士や翔猿のように、あの辺がかき回してくれるかにも期待したいですね。
復帰の朝乃山は?
そして、2年ぶりに幕内の土俵に上がる大関経験者の朝乃山については期待を寄せました。
場所前のけいこ
藤島親方
弱くて落ちたわけではないとはいえ、1年近く休んでいました。よく戻ってきたと思いますが、元大関だったのでゴールはまだ先にあります。復帰後の朝乃山は三段目とか幕下では絶対に負けちゃいけない相手なのでやりづらかったと思います。今場所は久々の幕内で、のびのびいけると思うので、相撲は絶対によくなると思います。番付的に幕内上位とはしばらく当たりませんから大きく連勝することも十分に考えられますね。
大型新人の力士も…
幕下では藤島親方と同じく学生出身の大の里が初土俵を踏みますがこちらも親方の期待大。あの大スターになぞらえるほどです。
二所ノ関部屋の大の里
藤島親方
学生時代の相撲は何番も見ましたが、学生出身では歴代で1番強いと思いますよ、今後はどうなるかわかりませんが。圧力から何からものすごいですね。組んでもいいし、体もいいですしね。角界の大谷翔平に、てっぺんを目指せる存在ですよ。
夏場所への期待!
春場所は初日から満員御礼
新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行され大相撲も少しずつ元の姿を取り戻しつつあります。そうした中で迎える夏場所への期待を最後に語ってくれました。
藤島親方
3年前の春場所は無観客でした。そのとき審判で土俵下にいましたが、力士が土俵を踏みしめる音とかぶつかる音だけで、今後どうなっちゃうのかなと思いました。それから徐々にお客さんが入って、拍手だけだったのが声援も出せるようになって、本当の大相撲の風景が戻ってきました。力士もやっぱり声をかけてもらえると、力になります。今場所もたくさんのお客さんに来てもらって声を出してもらい、力士たちはいい相撲で応えて欲しいですね。我々は大相撲が開催できてこんな幸せなことはありません。今場所も喜びを感じながら相撲を取ってもらいたいですよね。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。