特集 藤青雲と時疾風 新十両で夏場所に臨む

夏場所は藤青雲(ふじせいうん)と時疾風(ときはやて)が初めて十両に昇進しました。幕下から十両に上がると「関取」と呼ばれ、取組の数が7番から毎日の15番に増えるほか、化粧まわしをつけて土俵入りをしたり、付け人がついたりするなど待遇が大きく変わります。熊本出身の藤青雲と宮城県出身の時疾風を紹介します。
藤青雲(東十両13枚目:藤島部屋)
藤青雲(3月29日 大阪府立体育会館)
藤青雲は本名東龍輝。熊本市西区の出身の25歳です。明治大を卒業したあと社会人を経て令和3年春場所で初土俵を踏み、東幕下2枚目で迎えた3月の春場所で4勝3敗と勝ち越して新十両に昇進しました。身長は1メートル81センチ、体重137キロと体格に恵まれ、得意は右四つ・寄りです。
新型コロナウイルスの感染拡大で実業団の大会が開かれない中、会社を辞めて入門した藤青雲。新十両会見では「大相撲に挑まず後悔するより夢を追いかけました。関取になれたのでよかったと思います。(十両で)15日間、毎日相撲を取れるのがいちばん楽しみです」と喜びを口にしました。
藤青雲は春場所、3勝3敗で迎えた12日目に十両の玉正鳳を押し出して勝ち越しを決め十両の座を手にしました。ここ1年はずっと幕下上位の番付を守り、あと1歩で十両昇進を逃した場所もありました。自らの成長について「しこやすり足など基礎の稽古をしっかりやって、はたかれて前に落ちることが少なくなってきました。精神的にも成長して稽古に集中できるようになり、押されて下がる相撲が減ったことが十両昇進につながりました」と話しています。
春場所12日目 十両の玉正鳳との一番
藤青雲の故郷は熊本、大きな被害をもたらした熊本地震から7年がたちます。地元を思い浮かべて「故郷は落ち着けますし、懐かしい気持ちになれるところです。自分の相撲で元気になれる方がいるのであればうれしいです」と話し、「十両で対戦したいのは同じ熊本県出身の貴健斗関で、将来的には幕内に上がって、こちらも熊本県出身の正代関と対戦したいです」と意気込みを口にしていました。
師匠の藤島親方(左:元大関武双山)と会見する藤青雲
師匠の藤島親方(元大関武双山)は「(性格は)穏やかで皆と仲良くやっていますが、土俵に上がったら切り替えて、『気は優しくて力持ち』が理想。十両になると相手の圧力も増すし相撲もうまくなってくる。自分で何が足りないかよく考えて稽古をするしかない」と気合を入れていました。
時疾風(東十両14枚目:時津風部屋)
時疾風(3月29日 大阪府立体育会館)
時疾風は本名冨栄秀喜、宮城県栗原市出身の26歳です。東京農業大を卒業して平成31年の春場所で初土俵を踏みました。東の幕下3枚目で臨んだ春場所は、2勝3敗と追い込まれてから、11日目に栃神山、13日目に十両の栃武蔵に勝って勝ち越し、新十両昇進を果たしました。身長は1メートル78センチ、体重は129キロです。
4年かけての十両昇進に時疾風は「やっとあがれたという感じです。チャンスが何回かあったのに逃してきたので、もっと早く上がりたかったという気持ちはあります。春場所の最後の2番は左四つの自分の形になれていい相撲でした。十両に上がって15日間相撲が取れるのはワクワクします。今までは1場所7番だったのでどんな感じかと思っています。体力をつけてしっかりやっていきたいです」と喜びを口にしました。
春場所13日目 十両の栃武蔵との一番
東日本大震災で最大震度を記録した宮城県栗原市の出身で、中学2年のときに地震を経験しました。被災地である地元について「大相撲に入るときから地元を盛り上げたいという気持ちがありました。近い将来幕内に上がることを目標に頑張りたいです」と意気込みを口にした。宮城県出身の新十両は平成7年名古屋場所の五城楼以来で28年ぶりとなります。
新十両昇進を決め師匠の時津風親方(左:元幕内土佐豊)と
師匠で元幕内土佐豊の時津風親方は「朝の稽古だけでなく、夕方や夜も稽古場以外でしっかり体を動かして努力するのを見てきたので、よくやったなという気持ちです。(体が大きくないので)体力負けする場面もあると思うので、体を作って左四つ右上手の形をしっかり磨けば、もっと上を目指していけると思うし、そうなってほしいです」と期待をかけています。
相撲専門雑誌「NHKG-Media大相撲中継」から