特集 競馬 天皇賞(春)3年ぶりの京都で"初"のG1ウィナーは

日本競馬において、屈指の伝統と格式を誇るレースが、春と秋の年2回開催されている「天皇賞」です。なかでも春の天皇賞は、中央競馬のG1レースのなかで一番距離が長い3200mで争われます。
ことしの戦いの舞台は京都競馬場です。改修工事のため、ここ2年は阪神競馬場で行われてきましたが、3年ぶりに京都での開催です。京都競馬場がある地名にちなみ、「淀の3200m」と呼ばれてきた長距離レースの最高峰の天皇賞(春)。数々の名勝負が繰り広げられてきた舞台に戻り、G1ウィナーに輝くのはどの馬でしょうか。
改修された京都競馬場
改修工事を終えた京都競馬場のメインスタンド
春の天皇賞が行われる京都競馬場です。約2年半にわたる改修工事が終わり、4月22日にリニューアルオープンしました。愛称は「センテニアル・パーク京都競馬場」。センテニアルとは「100年の、100周年の」という意味の英語です。2025年に京都競馬場がオープンしてから100周年を迎えることにちなんでいます。
だ円形に改修されたパドック
スタンドがより見やすく改修されたほか、円形の独特な形状だったパドックも他の競馬場と同じようにだ円形になり、馬の様子をチェックしやすくなりました。一方でコースレイアウトに大きな変更は施されていません。
ことしのレースの中心は去年の覇者と、それを追いかける4歳馬です。
連覇を狙う!タイトルホルダー
調教中のタイトルホルダー
去年の天皇賞(春)を勝利したタイトルホルダーです。これまでG1・3勝は出走予定の馬の中で最多で、昨秋はフランスで行われる競馬の世界最高峰のレース、凱旋門賞への出走も果たしています。春の天皇賞連覇を狙うことしは、去年と同じく日経賞(G2)を初戦に選びました。得意の先行逃げ切りのスタイルで終わってみれば8馬身差の圧勝。順調な滑り出しを見せました。
タイトルホルダーの栗田徹調教師
タイトルホルダーを管理する栗田徹調教師は、天皇賞(春)のような長距離戦で大事なことについてこう話しています。「いかに力まずに走れるかっていう所と、長距離戦なのでスタミナがないと競馬で踏ん張って欲しいラストで踏ん張れないと思う。そういう意味では人と馬とのコンタクトが鍵になってくるのではないかと思っている」
人と馬のコンタクト、関係性を築いていくために取り入れた調教の1つがプールを使った調教です。おととしタイトルホルダーが馬房で転倒するアクシデントがあったのをきっかけに取り入れたといいます。
プール調教を行うタイトルホルダー(2023年4月20日)
プールの水深は3mで、馬の脚は底につきません。前に進んでいくためには手綱を引く人と息を合わせる必要があるのです。これをするだけで人馬の関係が深まるという単純なものではありませんが、こうした調教などを積み重ね、関係性が深まってきていると栗田調教師は感じています。
今回手綱をとるのは、去年ともに天皇賞(春)を制した横山和生騎手。1年以上コンビを組み、数々の大舞台を戦ってきました。去年より磨きのかかった人馬の関係性を武器に史上6頭目の春の天皇賞連覇を狙います。
打倒タイトルホルダー!勢いある4歳馬たち
打倒タイトルホルダーを各馬が目指す中、注目されるのが勢いのある4歳馬たちです。
ジャスティンパレス(2023年4月26日)
その筆頭は、天皇賞の前哨戦、3000mの阪神大賞典(G2)を勝ったジャスティンパレスです。序盤からスローな展開でしたがしっかりと折り合い、最後の直線で抜け出す鋭い脚を見せて重賞2勝目を挙げました。去年秋、3000mのG1菊花賞ではレコードタイムが出る速い流れのなか、優勝馬と0秒1差の3着。長距離レースで安定した成績を残しています。
管理するのは2020年の三冠牝馬デアリングタクトを育てた杉山晴紀調教師です。阪神大賞典前から全体的に馬体が大きくなり、瞬発力がさらに増したとジャスティンパレスの成長に目を見張っていました。
ジャスティンパレスの杉山晴紀調教師
また京都での天皇賞(春)については「京都競馬場は最後の直線が平坦。これは瞬発力のあるジャスティンパレスにプラスに働くのではないか。G1なので阪神大賞典のようにスローな展開にはならないと思う。ただ、速い流れの長距離戦は去年の菊花賞で経験しているので、うまくこなしてくれると思う」と話していました。
あん上はクリストフ・ルメール騎手です。春の天皇賞はフィエールマンで2019年、2020年と連覇した経験があります。
クリストフ・ルメール騎手
ジャスティンパレスはスタミナがあり距離は問題ないとしたうえで、G1を勝つには最後の瞬発力が大切だと話していました。そのためには「天皇賞(春)は距離が長いので馬のパワーをセーブする必要がある。リラックスして走ることと、内側のコースを走ることが大事です」と話していました。
ボルドグフーシュ(2023年4月26日)
阪神大賞典で2着に入ったボルドグフーシュ。デビュー戦から2000m以上のレースを戦ってきました。去年の菊花賞・有馬記念とG1レースでともに2着。初の重賞制覇をこの春の天皇賞で果たせるのか注目です。
あん上の川田将雅騎手は「京都は3コーナーに独特な上り下りがあるが、それもこなせるタイプだと思っている。距離も走ってきていますし問題ないと思います」と自信をのぞかせていました。
去年の菊花賞を制したアスクビクターモア(2022年10月23日)
もう1頭注目の4歳馬は、去年の菊花賞で勝利したアスクビクターモア。スタートから2番手の好位置でレースを進めて押し切りました。ただ、ことしの初戦となった日経賞ではスタートで出遅れ、9着という結果になりました。
春の天皇賞ではしっかりとスタートが切れるのか、いいスタートが切れた場合、似たレーススタイルのタイトルホルダーとのポジション争いやペースはどうなるのか、注目です。あん上は先日の皐月賞をソールオリエンスで制した横山武史騎手に替わります。3200mをどう導くか目が離せません。
この記事を書いた人

増村 聡太 アナウンサー
平成29年入局 徳島局―和歌山局
これまで印象に残っているのは、2012年春の天皇賞。1番人気の3冠馬オルフェーヴルが11着に沈み、終始前でレースを進めた14番人気のビートブラックが押し切ったレースです。有力馬がオルフェーヴルをマークして力をためている間に、リードを広げて逃げ切ってしまう展開に競馬のだいご味を見ました。ことしはどんなレースになるのか楽しみです。