特集 アイスダンス転向!髙橋大輔が村元哉中と語るその理由

「まさかアイスダンスに挑戦する日が来るとは!」
来年1月にアイスダンスへ転向することを発表した髙橋大輔選手。パートナーはピョンチャンオリンピック代表の村元哉中選手です。「氷上の社交ダンス」と呼ばれるアイスダンスへ、異例の転向の理由。そしてふたりが目指す先は…?サンデースポーツ2020に2人が生出演し、じっくり語りました。
口説かれちゃいました(笑)
――よろしくお願いします。
髙橋、村元 お願いします。
――髙橋選手をアイスダンスの世界に誘い、「口説き落とした」のは村元さんの方からだと聞いたんですが。
村元 はい、口説いちゃいました(笑)
髙橋 そうですね、口説かれちゃいました(笑)
――髙橋さんといえば表現力が魅力的ですが、これまでアイスダンスはどんなイメージを持たれていたんですか?
髙橋 シングルだと一人で作り出す世界観にはやっぱり限界があるので、二人でしか出せない世界観を見せられるっていうのは魅力的だなとずっと思ってました。
――かなりお好きで以前からずいぶんご覧になってきたそうですね。
髙橋 長野オリンピックくらいから、アイスダンスがすごく好きで見てました。自分の試合の時も、次の日が休みだったらアイスダンスの試合を見に行ったりもしていたので、昔から憧れてました。
そもそもアイスダンスって?
アイスダンスってそもそもどんな競技なの?と分からない方もいるのではないでしょうか。ここでアイスダンスについて簡単にまとめます。
写真はピョンチャンオリンピックの金メダリスト、テッサ・バーチューとスコット・モイヤーの演技。アイスダンスは「氷上の社交ダンス」の名の通り、男女でペアを組んで音楽に合わせて演技します。シングルとは違い、日本はまだオリンピックのメダルを取ったことがありません。
3回転や4回転のジャンプはなく、ステップやスケーティングなどをふたりで息を合わせて表現できるかが大きなポイント。
そしてシングルにはない見どころが女性を持ち上げる「リフト」です。
さらに、アイスダンスはスケート靴自体も違います。
まず注目がブレードの先。見てみるとシングルで使うスケート靴の方が先端がとがっています。また足首の部分は、シングルの靴は足首が固定されるような作りですが、アイスダンスの靴は深く切れ込みが入っています。
――この靴の違いはどうしてなんでしょうか?
髙橋 シングルではつま先で跳ぶ「トージャンプ」っていう種類のジャンプがあるので、ちゃんと氷を「噛む」ようにエッジのトーの部分のギザギザが高くなっています。アイスダンスの場合はステップをより踏みやすいように、そのつま先の部分がちょっと小さくなっています。
――アイスダンスの先輩として村元さん、今の髙橋さんの説明は正しいですか?
村元 はい、正しいです(笑)
髙橋 すいません、僕まだ初心者なので。
村元 アイスダンスの靴は、足首がつま先まで伸ばせるようになっているんです。シングルはジャンプの着地があるので足首がちゃんとホールドされてるんですけど、アイスダンスはつま先を伸ばしながらエッジを深く踏めるようになっています。
――髙橋さん、やっぱり履き心地は違いますか?
髙橋 全く違いますね。アイスダンスの靴は足首の可動域が広がるし、エッジ自体もシングルより短いのでシングルのようにかかとに重心が乗っちゃうと「倒れるんじゃないか」って心配になるくらいです。
――髙橋選手はカナダやロシアの選手に比べると体格は小さいですが、リフトの場面などを見ると使う筋肉もまた違うんじゃないかと思いますが。
髙橋 そうですね。やっぱり体は大きい方が有利なんですけど、小さい選手はかかとを高くしたりとか、いろいろ工夫をやってますから。そうやってお互いのリフトを作っていく形になると思います。
知らない世界を知る面白さ!
――こうしたいろいろな違いがあっても、あえてアイスダンスをやりたいと思った最大の理由は何なんでしょうか。
髙橋 昔から興味があったのももちろんですけど、ちょっと哉中ちゃんと組んで滑らせてもらった時に今までと全く違う感覚で、本当に「別物」だなってすごく感じて。これは絶対に自分にとってプラスになる、これから長い間パフォーマンスしていきたいっていう思いを感じました。あと、何ていうか面白さです!知らない世界を知る面白さをすごく感じたので、やってみたいなと思いました。
――村元さんはピョンチャンオリンピックのあと、クリス・リード選手と去年8月にペアを解消されました。そして今年の1月に、髙橋選手と交流のあった村元選手のお姉さんを通じて、オファーをされたと聞いたんですけれども。
村元 元々連絡先を知らなかったんですが、大阪に舞台を見に行ったらたまたま大ちゃんも見に来ていたんです。大ちゃんがアイスダンスに興味があるって話は聞いてたんですけど、ちょっと本人に直接聞きたいなと思って、お姉ちゃんに連絡先を聞いて1月に会いました。そしたらすごく興味があるって言ってくれました。この時はなんかもう、ドキドキしました(笑)。
――オリンピックのメダリストでもある7歳年上の選手に誘いの声をかけるのは、勇気のいる事だったと思うんですが。
村元 正直すごく迷ったところもありました。大ちゃんはシングルで現役に復帰したばかりで、「去年の全日本選手権を終えてまさにこれから」っていう時に声かけていいのかな?って。でもチャンスがあるのであれば絶対話を聞きたいって思いましたし、とりあえず聞いてみてそれでダメだったらいいかなって。聞かないと後悔しちゃうなと思ったので、とりあえず聞くだけ聞こうと決心しました。
――髙橋さんの方には迷いはなかったんですか?
髙橋 最初は僕も彼女とクリスのペアの「いちファン」だったんですよ。アイスダンスで彼女の魅力がより一層増しているのも見ていたので、クリスと解散するって話を聞いた時も「いいパートナーが見つかったらいいな」と思ってました。すごく上手な方と組んだら彼女はもっと上に行けると思ってたので。
髙橋 まさか「初心者の僕がパートナーに?」って驚きましたし、僕が彼女の良さを消してしまうんじゃないか、っていう不安はすごくあったのでそこは考えました。彼女のこれからっていう事を考えるとすごく悩んだところはありましたね。でも自分自身の事だけ考えると、転向する事には全く躊躇もなく、面白さを感じていました。
――村元さんとしては、アイスダンスの経験のある選手に声をかけるのではなく、なぜ髙橋選手がいいと思ったんですか。
村元 経験のある選手でもいいのかなと思ったんですけど、とにかく大ちゃんはすごく魅力を感じるスケーターでしたから。とにかく大ちゃんと一緒に滑ってみたいっていう気持ちが強くて。昔から憧れているスケーターですし、かっこいいな、一緒に滑ってみたいなって気持ちが強かったので決めました。
二人の目指すものは・・・
――お二人はすでにロサンゼルスで練習をされたとのことですが、私たちから見ると既に息があっているようにも見えますね。
髙橋 いやいや全然です。やっぱりぶつかるのが怖いのでまだ距離感も遠かったりして。2人の距離は近ければ近いほど評価が高いんです。僕は本当に初心者なんで、どこに気を付けるか教えてもらいながらですね。2人じゃないとできない体の傾きとか、体の使い方がやっぱり違いますし。
――これからについてですが、髙橋選手はまだシングルの選手でもあります。やっぱりそれに「マル」をつける必要がありますよね。今年の全日本選手権、どんな気持ちで臨みますか。
髙橋 そうですね、今年の全日本選手権がシングルとしては最後になります。前回2014年に引退したときは、世界選手権に出る予定だったのにケガで出られず、そのままフェードアウトしてしまったのでね。やっぱり最後ということでたくさんの方にできるだけ見て頂きたいなと。今できるシングルの全力を全日本選手権でやりきって、すっきり次に移行したいなっていう気持ちで頑張りたいと思います。
――村元さん、ふたりの目標はどこにありますか。
村元 大きいことを言えば、もちろん2022年の北京オリンピックを狙っていきたいと思うんですけど、スタートしてみないとどこまでいけるか実際わからないので。正直言うと、はっきりとオリンピックを狙うとは言いにくいんですね。
髙橋 オリンピックは、「頭と心の片隅」くらいですかね。
村元 そうですね。そのくらいのところにオリンピックという目標を置いてます。でも大きな目標がないと頑張れないと思うので。今はとにかく、来年の全日本選手権で「衝撃的な演技」をしたいなと思います。
髙橋 「衝撃的な」ね。
――髙橋さんは、ソチオリンピックで「The Long And Winding Road」という楽曲に合わせて演技をされましたよね。ご自身の人生、競技人生がまさに「長くくねった道」のように思います。今、そのスケーターとしての道で目指すものは何でしょうか。
髙橋 そうですね。まあ結構いろんな方に「どうしたいんだ?」みたいな事は言われますけど、僕自身スケートを突き詰めていきたいという気持ちでアイスダンスをやりたい。哉中ちゃんは哉中ちゃんで、アイスダンスというものをもっと知っていきたいと思っていると思いますし、そこの気持ちはお互い変わらないです。長く表現者として、スケーターとしてやっていきたいという思い、それひとつだけがずっと心にあるのでそこを突き詰めていきたいなと思ってます。
――本当に期待しています。ありがとうございました。