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特集 クライミングワールドカップ開幕! ボルダーって!?

アーバンスポーツ オリンピック 2023年4月22日(土) 午後0:00

スポーツクライミングの世界へようこそ!東京オリンピックから正式競技になった人工の壁を登っていく競技です。今月21日に東京・八王子でワールドカップが開幕し、今シーズンがスタートします。それを前に知っておくと楽しい情報をお伝えしましょう。教えてくださるのは、1998年のワールドカップで日本人初の年間総合優勝、そして現在はプロのフリークライマーとしてご活躍の平山ユージさんです。聞き手は上野速人アナウンサーです。(2023/4/21放送 ラジオ「マイあさ!」スポーツコーナーより

ボルダーの魅力

上野速人アナウンサー)

平山さん、よろしくお願いします!平山さんは、フリークライマーということで、今大会に出る選手もフリークライマーの方がいると聞いていますけれども、普段は、どんなことをされているんでしょうか。

 

プロのフリークライマー 平山ユージさん

 

平山ユージさん)

様々なフリークライマーのスタイルがあるんですけど、ワールドカップに出場するフリークライマーの多くは大会を主戦場に世界を転戦している選手です。日本の選手は学業と両立している人もいます。多くはいろんな企業が選手をサポートしてるんです。企業のサポートの上でプロとして活躍しているというのが、ほとんどですね。私なんかは、大会に出なくなくなってからは、世界中の山を登ったりして、情報を発信してフリークライマーとして活動しています。

 

 

上野アナウンサー)

今回のワールドカップはボルダーという種目で、東京オリンピックの時はボルダリングと呼ばれていました。高さが4メートルから5メートルの壁を登ります。壁には様々な突起物(ホールド)がついていて「課題」と呼ばれます。ラウンドごとに、複数の異なる課題があって、どれだけ少ないトライの回数で登れるかを競っていきます。ボルダーの魅力は、どんなところでしょうか?

 

ボルダーの壁を見つめる楢崎智亜選手

 

平山さん)

高さ4、5メートルという短い壁なんですけども、その中で、こんな登り方するの?っていうような、多彩でダイナミックな動きが魅力だと思います。

時には、何も持てるようなものがない、何も足元にない、足元どうやってバランスとっているんだろう?っていうような繊細な動きも見えると思います。

選手一人一人が違う個性を持っていまして、国によって選手の特性もあるんですよね。日本の選手、アメリカの選手、フランスの選手、そういったところも魅力だと思いますね。また、誰も登れない課題を登り切った時は会場の歓声に圧倒されます。

 

高さ約5メートルの壁にあるものは

上野アナウンサー)

詳しく聞いていきます。まずは、登る前にオブザベーションと言われる下見が2分間あるんですよね。あれは何をやってるんですか?

 

平山さん)

登る前に、どうやってここを登ろうかっていうイメージをする大切な時間です。イメージをする中で、なかなか考えづらいかもしれないんですけども、これから競い合う選手どうしが相談したりとかして、その2分の間に、いかに自分自身が登り切れるかっていう、その戦略を立てる時間だと思って頂ければいいですね。

 

 

上野アナウンサー)

教えあうっていうと、性格悪い見方かもしれないですけど、嘘ついたりとか、駆け引きがあったりとかってないのかなと思っちゃうんですが、どうなんでしょうか?

 

平山さん)

多少は駆け引きとかあると思いますね。その中で、嘘をつくっていうよりは、ほんとに短い時間の中で、自分が考えることを話す、それで相手も話す。

選手たちって、いつも岩場で一緒に登ってるような選手だったりもするんで、何かそこでけっこう正直なものがバーッと出てきて、その中で取捨選択していくんですよね。いかに出てきた材料の中で登るイメージを作っていくかっていうところが一番大切になると思いますね。

自分の登る順番が来るまで、選手どうして待機場所で相談の続きをすることもあります。

 

 

上野アナウンサー)

ホールドには、どんな種類がありますか? また、それぞれ特徴をお願いします。

 

名古屋市西区にあるボルダーの施設

 

平山さん)

大まかに分類すると3つあります。1つはハンドホールド。手で持つやつですが、第一関節で掴むような薄さのようなものもあれば、手のひらを使って抑え込むような形状もありますし、親指と残りの4本の指で挟むように持つ形状もあります。

もう1つはマクロ。とても小さくて、主に足を置くホールドですが、映像からは分かりづらい「それホントについてるの?」というくらいのサイズの、小さな足がかりがあったりします。時にはその小さなホールドを使う課題も出てきます。

最後はボリュームといって、両手で抱えきれないくらい大きなもので、大会では多用されます。壁に取り付けることで壁の角度を変えることもできるので、動きに自由度が増します。最近では、大きなボリュームのホールドをたくさん横に並べて設置して、その上を走らせるようなムーブもあったりしますね。またデュアルテクスチャーといって、ツルツルした面とざらざらした面の両方の特徴を持つものも多く見かけるようになりました。

 

注目の選手たちは…

 

上野アナウンサー)

今回のワールドカップのメンバーで、パリオリンピックに向けて注目の日本の選手、覚えておいた方がいいよっていう選手を教えてください。

 

 

平山さん)

まず、女子の選手ですと、森秋彩選手。パリオリンピックでは、新たに「ボルダー&リード」(課題をいくつ登ったかを競うボルダーと、制限時間内に登った高さを競うリードの合計得点で競う)という種目になるんですけど、この「オリンピックフォーマット」で過去に出た大会、全部優勝しています。

それから、今年のボルダー日本一を決める大会で、全ての課題を”一撃”で制し優勝した伊藤ふたば選手。”一撃”というのは、オブザベーションの後に、最初のトライで登り切ってしまうことです。その”一撃”で4つの課題を全て登り切りました。

それから、東京オリンピックで銀メダルを獲得した野中生萌選手ですね。彼女もボルダーが得意なので注目してほしいです。

 

 

上野アナウンサー)

男子はいかがですか。

 

 

平山さん)

2年連続でボルダーワールドカップの年間総合優勝を果たしている緒方良行選手は注目ですね。

それから、東京五輪にも出場したんですけども、ボルダーの世界選手権でも2回優勝している楢崎智亜選手。

さらに、今シーズンワールドカップデビューの高校生、安楽宙斗選手ですね。世界ユース選手権では数々のタイトルを取っているので、シニアの大会でどこまで通用するか楽しみですね。

 

 

上野アナウンサー)

最後に、今回のワールドカップ、NHKでは中継しますが、初めて見るという方もいらっしゃると思います。どこを見たら楽しめるでしょうか。

 

ワールドカップの予選に臨む楢崎選手(4月21日)

 

平山さん)

まずは、日本選手の活躍を楽しんでほしいですね。日本は2014年からコロナ禍の期間を除いて、国別ランキングで1位を獲得し続けています。世代交代もうまく行っているので、次から次へと世界で活躍できる選手がいるので、自分が応援したい選手をみつけるのも面白いですね。登り方1つでも個性が出るし、自分ならどうやって登ろうかなどと考えながら観戦するのもいいと思います。

それと、予選、準決勝、決勝と全て課題が変わります。その課題を作るクリエイティブなセッター陣がいることを知ってほしいですね。真っ白い壁をキャンバスにしてカラフルなホールドでアートのような空間を作り出しています。その中で、セッターの想像を凌駕するようなクライマーたちの登りを楽しんでほしいと思います。

 

上野アナウンサー)

ありがとうございました。ここまでプロフリークライマーの平山ユージさんでした。クライミングのワールドカップは、21日に開幕します。NHKでは、22日の女子決勝、23日の男子決勝をそれぞれBS1で夕方5時から中継でお伝えします。平山さんには、男子の解説もお願いしています。どうぞお楽しみに

 

 

 

この記事を書いた人

上野 速人 アナウンサー

上野 速人 アナウンサー

ラジオ第1放送『マイあさ!』スポーツコーナー担当。
中学から大学までバスケット部一筋。
高校生から男女のトップリーグ、NBAまで多くの実況を担当。趣味はバスケット研究。

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