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特集 カーリング 混合ダブルス世界選手権の見どころ

カーリング 2023年4月20日(木) 午前11:00

今月22日に韓国・カンヌンで開幕するカーリング、混合ダブルスの世界選手権。ことしの日本選手権を制し日本代表として出場するのは松村千秋選手谷田康真選手です。大会の見どころや展望を、今大会の男子4人制の日本代表でサードを務め、混合ダブルスではNHKのテレビ中継で解説を担当する山口剛史さんに聞きました。

 

 

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混合ダブルスってどんな競技!?

ーー今回出場する松村・谷田ペア、どんなペアだと思われますか。


山口さん
守備も攻撃も両方備わっているチームじゃないかなと思います。日本選手権では1エンドで3点、4点とビッグエンドをしっかり取ったり、前半に複数点を取られてもじりじりと追いついて逆転するというのも何度もありました。粘り強さも非常にあるチームだなと思います。今シーズンは世界ツアーでもかなり戦っていますし、今の世界ランキングは16位です。ツアーでも4大会出てすべて予選を突破している。なかなか今まで日本のチームは海外ツアーに出ていないんですけど、初めて出ていっているのに結果を出してるので、安定した力もあるんじゃないかと思います。

 

混合ダブルス 世界選手権(2022年4月)

ーー混合ダブルスの種目の特徴を教えてください。

 

山口さん
特徴は、4人でやっていることを2人でやらなきゃいけないので、忙しそうにやる(笑)。2人でやるので自分で投げて自分でこすりに行くんです。あと混合ダブルスで一番違うのは、最初から石を置いた状態でスタートします。ハウスに入っているストーンとガードストーンが一つずつ最初からあるんです。投数も4人制だと8投ずつなんですけど、混合ダブルスは5投の勝負。しかも、混合ダブルスは投げる順も4人制とは違っています。ひとりが1投目と5投目もうひとりが2、3、4投目という投げ順です。その順番は試合中に変わってもいいんです。


あと、パワープレーという1試合で1回ずつ使える戦術があるんです。普通は最初にセンターライン上に2つのストーンを置いている状態からスタートするんですが、「パワープレーをやる」と宣言したらストーンは端にずらした状態からスタートできるんです。

 

通常のスタート(センターライン上)

これが通常のやり方。ハウスに入っている黄色のほうは、これが後攻。ガードを置いている方が先攻って決まっています。

 

パワープレーのスタート

これが「パワープレーをやります」と宣言したら、そのエンドはこういう形から始まる。真ん中じゃなくて端からスタートするんですよ。これをやることによって先攻が不利になるし、複数得点も期待できるんです。

 

ーーパワープレーが試合の流れを変えるきっかけになる。

 

山口さん
そうです。1点差とか2点差で勝っていて突き放す時にパワープレーを使うチームもあれば、逆に追いつくために使うパターンもあったりとか。使うポイントはチームによって違ったりします。

 

ーー8エンドと団体戦よりも短い分、どこで流れを変えるのかも大事になりそう。


山口さん 
なりますね。時間も4人制だと10エンドで2時間半ぐらいなんですけど、混合ダブルスは1時間半で終わっちゃうんですよ。

 

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松村・谷田ペアの特徴は

ーー代表の2人について、松村千秋選手からどんな選手か教えてください。

 

北京オリンピック 混合ダブルス世界最終予選(2021年12月)

山口さん 
松村選手はもともと中部電力でほぼ全部のポジションをやっていると思うんです。なのでマルチプレーヤー。はじき出すテイクアウト系もできますし、戦術も考えられるし、スイープもできるし、何でもそろっている選手ですね。今回のフォーメーションだと1投目と5投目を投げると思うんですけど、5投目は最後の1投なので、そのショットがすべて点数に結びつくショットになるじゃないですか。なので結構プレッシャーがかかるんですよね。4人制でリードとかセカンドをやっている人たちは、そのプレッシャーをいつも経験しないので投げにくかったりするんですけど、松村さんはスキップもやっていたので、最後のプレッシャーにも強いんじゃないかなと思います。

 

ーー谷田選手はどんな選手だと思われますか。

 

混合ダブルス 世界選手権(2022年4月)

山口さん 
谷田くんはね、マッチョです(笑)。本当にマッチョで、スイープが氷を削っているようにすごい。自分の筋肉を存分に発揮するタイプだと思います。コンサドーレの4人制の時はセカンドが多かったんですけど、大学生の時はスキップをやっていたこともあったので、彼もマルチですね。セカンドの時はダブルテイクアウトとか、はじき出す系も結構やっていたので、ダブルスでもショット精度が高いです。あと谷田くんはおそらく全部のストーンをこすります。松村さんが投げたときもこするし、自分が投げたときもこするんですよ。1試合の中でのスイープ量が多くて、今回の予選では9試合やるはずなので体力的にきつくなってくると思うんですけど、谷田くんはすごくマッチョだし体力もあるので、世界で戦うだけのフィジカルを持っているんじゃないかと思います。
 
ーー男性から投げるのか女性から投げるのかで何が変わるのか。

 
山口さん
フォーメーションが日本選手権と一緒だったら、松村さんが1投目と5投目を投げて、谷田くんが2番目3番目4番目を投げる。世界の8割以上がこのフォーメーションなんですけど、なんで男性が真ん中を投げるチームが多いかというと、先攻の2投目が終わるまでは相手のストーンをはじいちゃいけないんですよ。後攻の2投目からはじき出していいんです。なので後攻の2投目以降では、ストーンを複数出さなきゃいけない場面が出てくるんですよね。そういったときに、速いスピードで壊すようなショットが必要な場合が多いので、男性が2、3、4投目をやるのが多いんですね。

 

混合ダブルス 世界選手権(2022年4月)

ーー自分で投げてスイープもするのは大変では。


山口さん
そうですね、大変です(笑)。松村さんもたまに掃くかもしれないですけど、どちらかというと自分が投げないときはハウスに立って作戦を考えると思います。ここを狙ってよってブラシを立てたり、曲がってきている軌道を見て、こすって欲しいとか欲しくないっていう指示をしたりする。4人制でいうスキップのポジションをやることが多いと思います。

 

ーー2人とも今はダブルスに重きを置いている。これが成績に繋がっているのでは。


山口さん 
ことしはかなり研究熱心にやっているなと、外から見ても思いました。混合ダブルス専門でやると言って、合宿の量も国内でも海外でもかなり多かったと思うので、期待していいと思います。ストーンの溜め方とか相手のストーンへのくっつけ方とか微妙なずらし方。全部が全部、相手のストーンの正面にくっつけるんじゃなくて、半分内側につけるとか、半分外側につけるとかして、最終的にはじくようなショットを投げたときに、自分のストーンだけ残して相手のストーンを出ていくような角度の設定がかなりうまくなっているなと思います。

 

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日本の予選はすべて初対戦

ーー日本代表ペアは世界で16位。それより上位の状況は。


山口さん
カナダが8チーム、かなり入っていますね。ノルウェーが2つ、スイスも2つ。

 

ーーでは今回の出場チームの中で日本はどのぐらいの位置か。


山口さん
これがね…、僕も分かんなくて、きょう谷田くんに連絡したんですよ(笑)。「対戦相手のこと知ってる?」って聞いたら、「同じBグループの人たちは1回も試合をしたことがない」って言ってました。同じグループだと、ノルウェーはオリンピックでメダルを取っているチームがいつも出てきているんですけど、今回は違う人なんですよ。でも世界ランキングを見ると、いつものペアは11位で今回のチームは15位、強いかもしれないですね。スウェーデンのチームも、いつも出ているのはエリクソン選手という男子の4人制の超スーパースターなんですが、今年は違うチームが出ているんです。それでもツアーランキングは19位。あと同じグループだと、アメリカは男性も女性も4人制でも有名な選手なんで、ここは強そうですね。

 

ーー特に気をつけたい相手は。

 

 

山口さん 
同グループだと、僕の予想としてはスイス。世界ランキングは…64位(笑)。ですけど、この2人よく知っています。このあいだの男子の世界選手権で3位になったスキップと、女子の世界選手権で優勝したリードのペアなんです。4人制では超有名選手の2人なんで強いと思います。

 

ーー混合ダブルスは世界ランキングだけでは分からないんですね。


山口さん 
本当に分かんないです。前回のオリンピックでもイタリアはノーマークだったんですけど、流れに乗って無敗で優勝したりもしているんですよ。

 

ーーまず予選リーグで大事になるところは。


山口さん 
前回は6勝3敗で予選落ちしているんです。あと1勝欲しかったんですね。今回もプレーオフに上がるのは予選3位までなので、前回の記録から考えると2敗までしかしちゃいけない。ノルウェーもスウェーデンも強い、スイスもアメリカも強そうだから、大事になるのは、やはり初戦のドイツ戦ですね。ドイツは世界ランキングも25位で自分たちよりは下なんで、勝っていかないと。こうやって見ていると予選突破って本当厳しいなと思いますね。

 

ーー接戦をしっかり取っていくのが大事になりそう。


山口さん 
松村・谷田ペアは、ことし世界で戦っている経験値は相当あるし、日本選手権を見ていても前半やられていても後半で追い上げられるというのは、ベースの力があるからこそできることです。世界から見ても劣ってはいないと僕は思うので、やっぱり大会の初戦の入りが一番大事なんじゃないかなと思います。

 

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過去最高は5位 初のメダルは?

ーーずばり山口さんの予想順位は。

 

 

山口さん
メダルの可能性はあるんじゃないかと思います。やっぱり世界ツアーを回って結果を残してきているっていうのが今までと違いますし、それが大きいと思うんです。それと前回も世界選手権に出て2年連続という意味で、世界選手権の雰囲気に慣れていると思うんですよ。僕自身が2018年、2019年って連続で出たときも、1回目に出たときは大会の雰囲気とか対戦相手の雰囲気が全く分からない状態で行って、最初連敗でスタートしました。2回目に出た時は大体雰囲気は分かっているので、いかに自分の調子を合わせるかっていう方にフォーカス出来たので、今回は2回目だし世界のほかのチームとの対戦経験とか海外慣れもしているので、十分チャンスはあると思って見ていますけどね。

 

ーーメダルを取ると、山口さんが持つ日本勢最高記録(5位)を塗り替えることになるが。


山口さん
ちょっと塗り替えられるのは悔しいですけどね(笑)。でも日本はピョンチャンも北京も混合ダブルスの出場を逃しているんで、今回、予選を突破してくれたり、メダルを取ってくれたりしたら、日本の混合ダブルス界にとっていいことですよね、うれしくなりますよね。

 

混合ダブルス 世界選手権(2022年4月)

ーーメダルを取ったら混合ダブルスの注目度も高くなりそうだ。


山口さん 
そうですね。混合ダブルスって本当に展開がはやいんですよ。どんどん投げなきゃいけないし、その割にストーンがたまって、スーパーショットが出る確率が高いんです。見ている方としても、これはすごく楽しいゲームだと思うので、見始めたら結構みんなはまると思います。

 

ーー4人制よりもスピーディーな分、目が離せない感じがあるんですね。


山口さん 
そうなんです、考える時間が本当に短くて。4人制ってゆっくり作戦を考えられるんですけど、混合は急いで決めなきゃいけない。その割にストーンがたくさんたまって複雑な形になるので、そんな中で冷静に作戦を考えて冷静に投げなきゃいけない。すごく頭も使うし体力も使う、大変な競技ですね。

 

ーーこの中で優勝候補は。


山口さん
あげた方がいいですよね(笑)。でもね、外す可能性は大いにありますよ。4人制って強い国が決まっているんですけど、混合はオーストラリアとかイタリアとかエストニアとか、4人制だと少しマイナーな国でもめちゃくちゃ強かったりするんです。なので非常に難しいんですけども、挙げるとしたら…今、この中で世界ランキングが一番高いチームのカナダ。ジェニファー・ジョーンズとトレントさん。これは両方とも4人制でも有名な選手。ジェニファー・ジョーンズさんはオリンピックでも4人制でもメダルを取っていて強いですが、そこが世界ランキング2位。そしてこの中で2番目は世界ランキング4位のエストニア。そして3番目がスコットランド。このあたりがやっぱり強いでしょうね。

 

ーー3か国とも予選では別のグループにいる。


山口さん
そうなんですよね、チャンスあるな~と思います。ノルウェーとかスウェーデン、アメリカ、スイス。こういうところに負けが少なくいけばチャンスはあると思います。

 

 

ーー選手の2人にメッセージを。

 

山口さん
今回2回目の出場というのと、世界でたくさん経験して準備をたくさんしてからの世界選手権になると思うので、思う存分暴れてプレーして、高いところへ登ってきてください。


ーー解説に向けて意気込みは。

 


山口さん
混合ダブルスは本当にスーパーショットがたくさん出る可能性が高いので、どれだけ冷静に皆さんに解説できるかっていう不安はありますが、ファイヤーしながら解説したいと思います(笑)。 

 

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