特集 2023プロ野球展望 パ・リーグ編

2023年、プロ野球はWBC=ワールド・ベースボール・クラシックで世界一を勝ち取った日本代表の熱気をまとったままシーズンへと突入します。優勝に向けてしのぎを削る各球団の戦力は?躍進のカギを握る選手は誰か?そして戦い方は?パ・リーグの担当記者がまとめた各チームの戦力分析です。
オリックス
昨シーズン、リーグ2連覇と日本一に輝いたオリックス。絶対的エースの山本由伸投手と宮城大弥投手の、ともにふた桁勝利をあげた2枚看板に加えて、150キロ台後半の速球が持ち味の3年目、山下舜平大投手がオープン戦で台頭するなど先発陣はさらに強化されました。
山本由伸投手(左)、宮城大弥投手(右)
リリーフ陣も宇田川優希投手、山﨑颯一郎投手のWBC日本代表を中心に安定し、投手陣の層の厚さはリーグ随一です。この投手陣をリードするのはFAで新加入のキャッチャー、森友哉選手です。
新加入の森友哉選手
西武時代に首位打者を獲得した森選手には、打撃面でも大リーグに移籍した吉田正尚選手の代わりに打線の中心としての活躍が期待されます。
ソフトバンク
ソフトバンクは投打に大型補強を進め、リーグ優勝、そして日本一奪還を狙います。昨シーズン、優勝へのマジックナンバーを点灯させながらオリックスに逆転でリーグ優勝をさらわれ、クライマックスシリーズも敗退しました。シーズンオフには大型補強を進め、日本ハムから近藤健介選手、DeNAから嶺井博希選手、そして投手ではいずれもプロ野球で実績のある有原航平投手、オスナ投手(前ロッテ)、ガンケル投手(前阪神)を獲得しました。
近藤健介選手(左)や有原航平投手(右)など投打に大型補強
投手陣では、7年連続ふた桁勝利の千賀滉大投手が大リーグに移籍した穴を埋めるため、藤本博史監督は先発投手陣を20代前半から40代の10人を超えるメンバーで争わせてきました。千賀投手に代わるエースの誕生が期待されます。
野手陣は、WBC組4人を欠く中、オープン戦をこなしてきました。柳田悠岐選手、栗原陵矢選手などに加えWBC組が戻って開幕を迎え、戦力が充実します。
柳田悠岐選手(左)、栗原陵矢選手(右)
藤本監督は「『目標は優勝』ではなく『優勝します』」と話し、早くも勝利宣言しています。去年の悔しさをバネに常勝チームへの復活を遂げ、リーグ優勝、その先に日本一奪還を狙うシーズンです。
西武
松井稼頭央新監督のもと、15年ぶりの日本一を目指す西武は充実の投手陣と足を絡めた攻撃に注目です。西武のオープン戦のチーム防御率は12球団で唯一の1点台。3年連続で開幕投手を務める髙橋光成投手を中心に、昨シーズンいずれも10勝をあげた與座海人投手やエンス投手など、充実の先発陣がそろっています。これに、今シーズンから先発に転向した平良海馬投手も加わり、先発ローテーション争いは激しさを増しています。
3年連続開幕投手の髙橋光成投手(左)と先発に転向した平良海馬投手(右)
平良投手は、オープン戦で登板した17イニングで失点ゼロと、抜群の安定感を誇っています。また、昨シーズン、新人王に選ばれた水上由伸投手らリリーフ陣も順調に調整を進めてきました。
一方、打線は、松井監督が「走魂」(そうこん)をチームスローガンに掲げるように、足を絡めた攻撃を目指しています。
山川穂高選手の長打力に加えて足を絡めた攻撃を目指す
昨シーズンはチームの盗塁数がリーグで最も少なかった西武が、ホームラン王と打点王の2冠に輝き、WBCにも出場した山川穂高選手などの長打力に加えて、足を絡めた攻撃でどのようなチャンスの場面を作り出すか注目です。
楽天
球団初のリーグ優勝と日本一から10年。楽天は去年までゼネラルマネージャーを兼任していた石井一久監督が監督業に専念して臨みます。その石井監督が新たにキャプテンに指名したのが浅村栄斗選手です。FAで西武から楽天に移籍し丸4年。パ・リーグ屈指のスラッガーは「優勝するために楽天に来たが、まだ達成できていない」と今シーズンから4年契約を結び直しました。石井監督は「彼に中軸を任せる」とシーズンでの4番起用を明言しています。
新キャプテンの浅村栄斗選手
石井監督が「不安材料の1つ」と課題に挙げる投手陣は、先発を担う若手の台頭が待たれます。大黒柱の田中将大投手は、日本球界復帰3年目にしてフォームを大幅に改造するなど巻き返しを期しています。
開幕投手を務める田中将大投手
高校時代を過ごした北海道で臨む開幕戦で勝利し、本人もチームも勢いに乗りたいところです。
ロッテ
吉井理人新監督のもと18年ぶりの日本一を目指すロッテ。先発はWBCで世界に衝撃を与えた佐々木朗希投手が柱になります。昨シーズン史上最年少で完全試合を達成した“令和の怪物”も4年目を迎え「獲れるタイトルはすべて獲りたい」とシーズン通してのフル回転を誓います。また開幕投手を務める5年目の小島和哉投手はオープン戦防御率1点台前半と安定した活躍が期待できるほか、中継ぎ陣には大リーグから復帰した澤村拓一投手が加わり、投手陣に厚みが増しています。
佐々木朗希投手(左)と開幕投手を務める小島和哉投手(右)
一方、昨シーズン長打率でリーグワーストの打線は若手の成長がカギを握ります。昨シーズンホームランチームトップの山口航輝選手は「30本」を目標に掲げてオフにはフォームの改造に取り組みました。
山口航輝選手
30本越えとなれば球団の日本選手としては37年ぶりの記録となります。巨人から入団したポランコ選手の長打力にも期待がかかります。
日本ハム
日本ハムは昨シーズン、新庄剛志監督が就任し注目を集めた一方で、成績は最下位と奮いませんでした。新庄監督は昨シーズン、選手の能力を見極めるとして、ほぼすべての選手を公式戦で起用しましたが、新球場で迎える今シーズンは「日本一を目指す」と宣言してレギュラーを固定する方針を示しました。
(左から)松本剛選手、野村佑希選手、清宮幸太郎選手
2月のキャンプから、打線は昨シーズン首位打者の松本剛選手を3番に固定し、4番は5年目の野村佑希選手、5番は清宮幸太郎選手とチームの軸作りを進めていて、狙いどおり機能するか注目です。
(左から)上沢直之投手、伊藤大海投手、加藤貴之投手
一方、先発投手陣では、大リーグ挑戦の意向を示しているエースの上沢直之投手をはじめ、2年連続でふた桁勝利をあげた3年目の伊藤大海投手、左投げの加藤貴之投手、それにノーヒットノーランを達成したポンセ投手が軸になります。