ストーリー野球

大阪桐蔭・根尾昂×大越健介 対談真剣勝負!後編

2018-10-23 午後 08:45

2018年のドラフト会議、大きな注目を集めたのが大阪桐蔭高校の根尾昂(ねお あきら)選手です。強豪の末に中日ドラゴンズに入団した根尾選手。このドラフト直前、サンデースポーツ2020では「運命の日」を待つ根尾選手に大越健介キャスターがインタビュー。この記事では、放送に入りきらなかった未公開部分を含め前後編に再構成し、根尾選手の「すごさ」の本質に迫っていきます。

成長の礎は「ふるさと」

野球選手・根尾昂の練習を間近で見ていると、その動きのしなやかさに目を奪われる。例えば大谷翔平選手のように圧倒的に恵まれた体格を持っているわけではない根尾選手だが、走攻守、そして投球。全ての動きに躍動感を感じるのだ。

 

 

取材に訪れた日のシートノック。ショートに入った根尾選手はたとえ捕球で体勢が崩れても、すぐさま立て直して正確な送球を見せた。決して筋肉トレーニングで作られただけではない、ある意味「野性味」すら感じるその体幹の強さ、強い肉体はどのように生まれたのか。根尾選手にその原点を尋ねた。

根尾 体をここまで成長させてくれたのは、やっぱり地元の力だと思います。自分は岐阜県出身なんですけど、小さい頃からスキー場や山が近くにありました。上級生の先輩たちと一緒に遊びながら、体を動かしていた記憶しかないですね。今の体がスキーや山遊び「だけ」で作られたものではないと思いますが、ひとつの要因かなとは思います。

大越 岐阜県の高山の方ですか?

根尾 高山のもうひとつ北の方です。もう山しかないです。

大越 山しかない!じゃあ子どものころは野山を駆け巡っていたような感じですか。

根尾 そうですね。結構身近に山があったので。

大越 ふるさとで思い出に残っている場所とかはありますか?

根尾 小学校の時の野球のクラブチームで練習していたグラウンドですね。3歳年上の兄が野球をやっていて、それが楽しそうで一緒に連れて行ってもらったのが始まりでした。僕が小学校2年生の時に軟式のクラブチームに入らせてもらって、上級生の先輩たちと一緒に野球したことが一番思い出に残っています。最初は試合も出られないので遊び感覚で思いっきり投げて、思い切り走って、思いっきりバット振って、という感じでしたけど、そこが一番の思い出ですね。

 

 

根尾選手のふるさとは、岐阜県飛騨市の山々に囲まれた小さな町だ。野球を始めたのもメンバーが10数人のチームだったという。根尾少年は2年生の時から体の大きな上級生に囲まれながら、夢中で白球を追った。コーチの福田利憲さんは、当時を振り返り一番印象に残っているのは、根尾少年の野球への向上心の高さだと話してくれた。

 

 

福田利憲さん

一番違うのは「意識レベル」だと思うんです。本当に野球がやりたい、勝ちたい、上手くなりたいっていう意識が高かったのは間違いないです。他の子たちは大会で3位に入賞したら大喜びでしたけど、根尾くんだけは不満そうな顔だった。「まだ出来るはずや」って感じで。うちは飛騨の田舎のチームで、親とか指導者にも有名な人もあまりいないので、野球の本当に基礎しか教えられないんです。その中で、「お兄ちゃんたちはこういうことができるのか」って自分で考えながら野球をしていたと思うんです。特別なことは教えていない、教えられないからこそ、あの子なりに考えて野球ができる環境だったんだと思いますね。

 

飛騨の小さな町で野球を始めた少年は、ふるさとで培った高い向上心で高校野球の頂点に立ち、そしてあらたなステージへ向かおうとしている。
 

「全てのポジションで上のレベルに行きたい」

今、根尾選手はプロ野球の扉の前に立っている。投手としても打者としても素晴らしい活躍を見せてきた彼の周囲では、大谷翔平選手に続く「二刀流」としての期待の声も寄せられている。
根尾選手は自身の野球選手としての将来をどのように思い描いているのだろうか。

 

 

大越 これからプロ野球のドラフトがあります。プロ野球の中で、希望としてはどういう風に自分を磨いていきたい伸ばしていきたいと、例えば大谷選手の例を考えながら考えたことはありますか?球団に伝えたい気持ちとかはありますか?

 

根尾 あそこまで活躍出来るかは分からないですし、自分がどういう形で挑戦させてもらえるかも決まっていない、というか決めてないです。自分自身まだ迷っているというか、決めていない部分もあるので、まあこれからかなと。大阪桐蔭ではショートで背番号6番をつけさせてもらいましたし、ピッチャーもさせてもらいましたけど、その経験は必ず将来に生きてくると思います。それを活かして、その時に目標は決めたいなって思います。

 

 

大越 根尾選手の場合は、「走攻守」、「何刀流」っていう言い方がなかなか出来ないほど、守備、ピッチング、バッティング、いろんな面で秀でています。ご自分の中ではその全てが一体となっているものでしょうか?それとも特にこのポジションで伸ばしていきたいっていうのがあるんでしょうか?

根尾 今の時点では、「全てのポジションで上のレベルで通用するようなレベルにまで持っていく」というのが、自分の中でテーマになっています。今日は練習ではショートに入らせてもらって、この後ピッチングもするんですけど、自分がどのポジションで良い結果が出るかは自分で決められないですし、どこにその可能性があるか分からないので、とにかく出来ることをやるという感じです。ひとつに集中してやるのも効率が上がっていいかもしれないですけど、他の事をやることによっても良い効果があると思っています。いずれは1本に絞るにしても今は両方、というか出来ることは全部やった方がいいと思ってやっています。

大越 投手なのか野手なのか?あるいはその両方なのか?可能性、伸びしろはまだまだ沢山あって、自分の中で決めきれないってことですかね?

根尾 自分は「全然完成していない」というか、レベルもまだまだ低いしどれかに絞ったにしろプロで通用するようなレベルではないと思っています。自分自身本当にどのポジションでも上に登っていきたい、どこでもいいから登っていきたい気持ちが強いので、ポジションがどこかっていうのは今は考えてないですね。

「まだ決めていない」ということは、言い換えれば全ての可能性を否定しない、伸ばしていきたいということ。まさに彼の向上心の高さを表す、力強い意思表明だった。

野球が終わった後も通用する人間に

大越 特段おだてるわけではないんですけど、やっぱり勉強も野球もとても大事だし、その上いろんな分野を知りたいという探究心を持つことも、とても大事だと思います。今の根尾選手は野球が一番で、球界の一番高いレベルでやりたいという気持ちだと伺いましたが、どうでしょう、その先の将来を考えたことはありますか?

根尾 野球が出来なくなってからのことは自分でもなかなか想像つかないところではあります。いつ大けがするかもわからないので、とにかく「通用する人」というか、野球がなくなった時にもどこかで通用する人間ではいたいなとは思っています。


「通用する人でいたい」。野球に対しても学びに対しても、人生に対しても向上心を持ち、将来を真っ直ぐに見据える人の言葉だと感じた。あまりに18歳離れした回答に、私もちょっと「振りかぶった」質問を投げてみた。


大越 高校野球の選手にこんなこと聞くのも変なんですけど、根尾選手のように肉体的なもの、技術的な野球の素質、加えて学力のみならず探究心に恵まれた人っていうのは、社会でも大きな役割が求められているように思います。生意気な聞き方ですけど、そういう自覚みたいなことを感じられたりすることはありますか?

根尾 うーん、そうですね。自分たちの大阪桐蔭高校は応援がすごくて、甲子園に行く前には「頑張れ」、帰ってきてからも「おめでとう」とたくさん言ってもらえました。やっぱり「その人たちの為に」という気持ちがあります。自分たちも親元を離れて学校に通わせてもらっている訳ですし、そういう人たちに「恩返し」はおかしいかもしれないですけど、とにかく良い報告をしたい気持ちがあります。そこはちょっとつながっている部分があるかなとは思います。

 

 

大越 それだけ高校野球というスポーツは国民的に愛されています。その輝く舞台で活躍出来た経験は、これからのあなたの人生の中で野球のみならず、きっと意味を持つんじゃないかなって私は思うんです。

根尾 全国の高校生が目指していた夢の舞台でやらせてもらえて、素晴らしい経験・結果を残せたことで、やっぱり自分たちの力に自信を持てて、もっともっと自分たちの力を高めたいっていう気持ちにもなりました。「貴重な経験」と言ってしまったらそれで終わるかもしれないですけど、なかなか出来ない事をやらせてもらったなっていうのは思います。「負け試合」をなんとかひっくり返した試合もありましたし、本当に自分たちの力だけじゃどうにもならなかったような春と夏だったので、自分たちの力以外の部分も感じました。応援であったり周りの力であったり、何かそういうものを感じることができた時間というか、高校生活だったと思います。


57歳の振りかぶって投げた質問にも戸惑うことなく、18歳は地に足をつけた自分のスイングで、こちらが気持ちよくなるほどしっかりと打ち返してきた。

「プロ野球選手、根尾昂」へ

大越 改めて、高校生活を終えておそらく来年からはプロ野球選手としての根尾選手が見られるのではないかと期待しています。新しい舞台に立つにあたって心がけていきたいことはなんでしょう。

 

 

根尾 まず今の時点で社会人、大学、プロ野球に上がらせてもらうにせよ、今の体ではついていけないと思っていて、まず体づくりが基本にあると思います。そこから経験や練習を積んでいって、プロの上のレベルの一番強いところでプレーしたいって思っているので、そこに向けて少しずつ日々上達して行きたいと思います。

大越 上達っていうのはメンタルの強さ、あるいは学びの部分でもっていうことですか?

根尾 はい!

大越 プロ野球に入ってもきっと本は読むんでしょうね。英語の勉強もするんでしょう?

根尾 どうですかね、へへへ(笑)。ちょっとはすると思います。

大越 やっぱり野球が好きですか?

根尾 そうですね!はい!

大越 期待しています。可能性は無限大ですね!本当にありがとうございました。

根尾 ありがとうございました!

 



夏の高校野球の大会後、国際大会に臨んだ18歳以下の侍ジャパンのメンバーの中には、大阪桐蔭で見慣れた「背番号6」ではなく「背番号5」をつけた根尾選手の姿があった。その背中には、番号だけでなく高校野球ではつけられない、選手名のアルファベット表記があった。そこに縫い込まれていた文字は――。

 

 

「NEO」。

投手としても、打者としても、学生としても、あらゆることに全力で向き合って結果を出し、そして未来の自分の可能性を信じて上を目指し続ける。まさに「新世代」の代表のような根尾昂選手にぴったりの選手表記だった。プロ野球の世界で、彼はいったい何色のユニフォームに「NEO」の名を背負うのだろう。
プロ野球ドラフト会議は、10月25日である。


根尾選手はドラフト会議の末、中日ドラゴンズに入団。
この記事は2018年10月21日放送のサンデースポーツ2020を元に制作しました。

 

この記事を書いた人

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大越 健介 キャスター

昭和60年NHK入局、初任地は岡山局。政治部の記者、NW9キャスターなどを経てサンデースポーツ2020キャスター。
"スポーツをこよなく愛する親父"の代表として自ら楽しみながら伝える。

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