ストーリー野球

大阪桐蔭・根尾昂×大越健介 対談真剣勝負!前編

2018-10-22 午後 07:32

2018年のドラフト会議、大きな注目を集めたのが大阪桐蔭高校の根尾昂(ねお あきら)選手です。
強豪の末に中日ドラゴンズに入団した根尾選手。このドラフト直前、サンデースポーツ2020では「運命の日」を待つ根尾選手に大越健介キャスターがインタビュー。この記事では、放送に入りきらなかった未公開部分を含め前後編に再構成し、根尾選手の「すごさ」の本質に迫っていきます。

人間・根尾昂に迫りたい

9月中旬。つづら折りの山道の先に見えてきた人工芝の野球場の前で車を降りると、猛暑の甲子園が遠い昔に思えるような秋の風が吹いていた。新大阪駅から高速道路を使って車で40分。生駒山を登った山中に、大阪桐蔭高校野球部のグラウンドはある。史上初2度目の春夏連覇を成し遂げたチームは、その栄光にじっくりひたる間もなく、3週間後に迫った国体に向けた練習を行っていた。見ているこちらにも伝わるほどの高い集中力。中でも今回の取材の目当ての選手は、甲子園球場で躍動していたときと全く変わらぬキレのある動きでノックをさばいていた。

根尾昂選手。
投げては150キロの速球。打っては夏の甲子園で3本のホームラン。守ってはショートで抜群の守備範囲を見せたかと思えば、外野でも強肩を発揮。さらに、聞くところによると学業成績もいいらしい。

 

 

甲子園では、大谷翔平選手の「二刀流」を越えていくような「万能さ」を見せた根尾選手。いったいどんな18歳なのだろう。どのように野球に向き合ってきたのか。そして将来をどうイメージしているのか。
「野球選手・根尾」はもちろんのこと、「人間・根尾」に迫りたい。私、大越健介は57歳。根尾選手は、自分の息子よりもはるかに年下の18歳。39歳差の対談・真剣勝負が始まった。

 

大越 きょうは時間をとっていただきありがとうございます。そして甲子園優勝おめでとうございます。練習を拝見していて、この時期は1、2年生中心の練習であるにも関わらず、3年生たちの練習に非常に熱が入っていることに驚いたんですけど、皆さんそういうことは意識しているんですか?

根尾 「春夏連覇」という記録は残したんですけど秋の大会が始まってますし、自分たち3年生も国体という大事な大会が控えているのでまだまだ気が抜けないです。甲子園が終わって高校野球の大事な公式戦は区切りがついたんですけど、高校が終わってからも大学、社会人、プロという上のレベルで野球をやりたい選手ばかりなので、とにかくそこに向かって一生懸命にやれる事をしっかり練習していることが、そう見えているのかなと思います。

大越 夏の大会が終わって少し休みたいなって言う気持ちは?

根尾 夏の大会は金足農業さんとの決勝戦で終わったんですけど、優勝したあともまだまだこのチームでやる気持ちだったので、終わった感じが全くありませんでした。決勝の次の日は練習がなかったんですけど、そんなに休みたいなっていう気持ちはなかったですね。

大越 ずっと続いているわけですね。高校野球生活そのものが。

根尾 監督の西谷先生に「今は休め」って言われることはあったんですけど、「とにかく練習したい、やらないといけない」っていう気持ちが強いです。

大越 
高校によっては監督やコーチが非常に細かく指導する、注文をつけるチームもありますけど、大阪桐蔭は比較的選手が練習から自主運営しているイメージを持つんですけど、どうでしょうか?

根尾 今の自分たちは「3年の夏のチーム」なので、ある程度試合も重ねてきてチームとしての選手同士のコミュニケーションが取れているんだと思います。今の3年生もレベルはまだまだ低いですけど、前よりは出来ているかなというか。他の高校よりはそういう所は固まっているかなって思います。

大越 時には厳しい事も言い合いながら、お互いチームワークを高めていくことが自分たちなりに出来たっていうことですか?

根尾 
そうですね。意識的にやってきました。自分たちも最初はコミュニケーションが取れなくて上手くいかないことが多かったです。なのでとにかくお互いに意見を出し合ってやっていこうって、去年の秋からやってきました。

「大阪桐蔭に来て良かった」

インタビューした9月中旬、当時は国体前とあってプロ志望届をまだ提出していなかった根尾選手だが、「あえて遠慮なく」、卒業後の進路を直球で聞いてみることにした。

大越 可能であればプロにいきたいという気持ちが強いですか?

 

根尾 はい!

大越 根尾選手の場合は学校の成績も非常にいいと聞いていますし、私なんかは大学野球経験者なので、ぜひ大学野球に来て頂きたいっていう気持ちもあるんですけど、そういうことが頭をかすめたりはしませんでしたか?

 

 

根尾 高校を選ぶ時から、「高校野球からプロ野球に行きたい」という気持ちが強かったです。大阪桐蔭高校が一番全国の中でもハイレベルで日本一に近いチームだと思って入らせてもらいましたし、その時点で大学に行きたいっていう気持ちは、ほぼゼロでした。

「もしかしたら答えにくい質問かもしれない」とこちらが思った問いに対しても、はっきりと「プロ志望」を言葉にした根尾選手。どうしてここまでしっかりとした将来像を18歳にして持てているのか。そのことを尋ねると、背景にあるのは「大阪桐蔭高校」という環境で過ごした時間なのだと語り始めた。

根尾 大阪桐蔭高校の練習を、中学校3年生のとき実際にこのグラウンドに来て見させてもらったんです。そこにあったのは自分のやったことがないようなレベルの野球でした。選手たちの上手くなりたいという欲というかオーラが漂っていて、やっぱり上には上がいる、こういうレベルがあるんだって思いました。自分もここで試合に出られるようになりたい、活躍できるようになりたいと思って、ここに来ることに決めました。

 

 

大越 高校3年間はまさに野球中心の生活だったと思います。そこに悔いというものは全くありませんか?

根尾 僕は、大阪桐蔭に来て良かったなと思います。ここでやらせてもらったことが自分をここまで成長させてくれたんだと思いますし、「習慣」がついたので、とても素晴らしいところで野球をさせてもらったと思っています。

大越 「習慣」っていうのはしっかり野球に没頭ということですか?

根尾 素晴らしい環境があることもそうですし、先輩たちもプロに行かれているのでモチベーションもあがります。そういう先輩たちを教えてこられた監督、部長、コーチの方々が見てくださるので、心強くやらせてもらいました。

自己管理が一番大事

プロ入り前の高校野球の選手に、じっくり時間をかけて単独インタビューをするということは、実はNHKではあまりない。せっかくの機会、野球以外の部分での根尾選手に迫ろうと、ひとつ小道具を用意した。

 

 

根尾選手の1日の過ごし方を書いてもらったフリップだ。さすが野球強豪校。授業と部活中心の生活だが、あれだけ甲子園で活躍した選手の1日には何か野球が上達する秘密があるはず。そこで根尾選手の「こだわりの時間」を聞いてみると、それは練習の時間ではないちょっと意外な時間だった。

根尾 大切にしているのは「練習が終わったあとの時間」ですね。毎日結構ハードに練習もしますし、大会中はお風呂の時間も取れなかったりするほど夜の時間はタイトなんですけど、そのお風呂から上がったあとの時間が大事です。ストレッチやトレーニングをしています。練習をやり過ぎていたら、体のケアやストレッチ中心にして、練習が休みに入ったときはトレーニングを入れる感じです。あとは寝る前に、ちょっと静かにするというか「ぼーっとする」時間を作って、空っぽの集中していない時間を作ることは意識していますね。

大越 僕はほとんど仕事をしているか、あと空っぽかどっちかなんですけど(笑)。

そして一人のアスリートとして、一人の人間として、根尾選手が最も大切にしていることを教えてくれた。

根尾 自分では、「自己管理」がやっぱり一番大事だと思っています。1年生2年生の時はケガをしていたんですけど、その原因を考えると自分の中でこういう動きをしたい、こういう体になりたいというものに対して、ストレッチやトレーニングが足りていなかったんですね。それで、ちょっとずつ合間に入れていく時間を取るようになりました。


大越 24時間それだけストイックに自己管理をしていて、時々くたびれてサボってしまう時とか、投げやりになったりすることってないですか?

根尾 ないですね。まあ何か飲みながらだったり音楽を聴きながらだったり、そんなにストレッチやトレーニングに夢中になってやることはないので。力を抜きながら、ストレスとかプレッシャーを感じないような意識で自主練はやっています。

 

 

厳しい自己管理を自らに課して過ごした3年間。その結果が、あのしなやかなでかつ力強い動きをグラウンドで見せる肉体を生んだのだろう。その成果として、根尾選手の腹筋には指の第一関節が埋まるほどはっきりとした「シックスパック」が刻まれている。

「知りたい」という心

根尾選手の1日。円の中にきっちり引かれた線で区切られた時間の中で、根尾選手が文字を書き加えた部分があった。それは、学校の授業の枠の中に書かれた「読書」。聞いてみればこの時間こそ、「人間・根尾昂」を形作る重要な時間なのだという。

 

大越 読書ってありますけど、これはどういう時間ですか?


根尾 学校の休み時間とかに読んでいます。

大越 学校の休み時間?時間を見つけて本を読む感じですか?

根尾 はい。なかなか読書だけのために時間を取っていられないので。

 

 

大越 いつも読んでいるという本の一部を持ってきていただいたんですが、「思考の整理学」、「論語と算盤」、「中南米野球はなぜ強いのか」、「ラテンアメリカ式メジャー直結練習法」。ジャンルが幅広いですね。こうした本を拝見していると、根尾選手は物事を論理立てて自分の中に収めたい気持ちが日頃から強いのかなと思ったんですが、どうですか?

根尾 やっぱり知らないことがあると知りたくなるというか、いろんな事を知りたいと思うと発見があるので。

大越 自分でも知的好奇心が強い方だと思いますか?

根尾 そうですね。知らないことばっかりなんで。常識は身につけたいなとは思っています。やっぱり野球でも「これだ」っていうことを見つけたいっていうのが強いです。まだまだ見つかってないですけど。野球でもまだまだわからないことが、当たり前ですけどたくさんあるので。それを「知りたい」、「わかりたい」っていう気持ちはあります。

大越 でも、一見すると野球とは関係なさそうな本もたくさん読むんですね?

 

根尾 もちろん野球の本も読みます。ただ、西谷監督によく言われる言葉なんですけど「最後は人間、人だ。野球がどれだけ上手くても人間性が伴ってなければ信頼されない、最終的には大成しない」と言われるんです。だから野球以外の本で学ぶことからも、野球に通じるところは多いと思います。常に「これは野球につながるかな」って思って読んでいるわけではないですけど、それがどこかで野球に通じる、最終的に人として成長していくのに必要なのかなと思っています。

野球も学びも手は抜かない

大越 僕は自分自身学生のときそうだったんですが、ひとつのことに没頭する時はそれしか出来なくて、全く授業に行かなかったり授業中も寝ていたりしていた学生だったんです。根尾選手の場合は野球が生活の一番の軸だとしても、それ以外の学校生活、勉強、読書とかも手を抜きたくない気持ちは強いんですか?

根尾 やっぱり野球を極めるために高校に入ったんですけど基本は学生ですし、先生方からも部活動は学業・勉強の次だって毎日言われます。そこが疎かになってしまってはこの学校に来ている意味がないので。そこは自分が出来ることだけはしっかりやろうかなとは思います。

大越 でも学業の方もちゃんとやりたい、学ぶことがそれだけ面白いっていうことになればですね、やっぱり大学に進学して「学びのことも極めてみたい」と思うこともあると思うんですけど、その悩みや気持ちの揺れというのはなかったですか?

根尾 なかったですね。やっぱり自分にとっては野球が一番だと思います。学生なので勉強が一番にならないといけないという気持ちも、もちろんあるんですけど、やっぱり野球がやりたくて大阪桐蔭高校に入らせてもらいましたから、そこが自分の中では一番大きかったんだと思います。読書や学びというのは、やっぱり自分の中では「趣味」っていうか、自分で時間を見つけてやることだと思っています。

「文武両道」と言葉にすることは簡単だが、高校野球であれだけの実績をあげながら、学びの面でもすばらしい「探究心」を持ちつづけることの大変さは、なかなか想像できないものだ。それだけに根尾選手の言葉からは、「野球に全ての情熱を傾ける」というような高校球児のイメージを飛び越えた、新しい価値観のようなものも感じさせる。そうした根尾選手の日常は仲間たちからどう見られているのだろう。

大越 そういう根尾選手の性格っていうのはチームメイトからどんな風に言われているんですか?


根尾 どうなんすかね(笑)

大越 「お前真面目だなー」とか言われない?

根尾 「ちょっと変わってるなー」みたいには言われます。そんなことないと思うんですけど(笑)。

 

 

根尾選手の「真面目さ」。特別に見せてもらった根尾選手の英語のノートにも、その片鱗が見られる。きれいな文字で、見やすく改行されながらまとめられている。しかも一回の授業でノートを取りきり、あとから清書することは野球のために欠席しなければならない時を除けばほとんどないと言う。「授業の漏れは絶対にしたくないんです」と力強く語る根尾選手に、東大野球部出身の私は、つい「禁じ手」の質問をしてしまった。

大越 あの、東大野球部に来ませんか?

根尾 いやいや、そこまで勉強出来ないです(笑)。

残念ながら、東大野球部への「スカウト」は、失敗に終わった。
57歳の「意地の悪い」質問にもぶれることなく真っ直ぐ答え、「プロ野球」の世界を見据える根尾選手。そして話はプロ入りの先、根尾選手が見据える野球選手としての将来の話へと移っていく。

 

 



後編では、根尾選手のルーツとなった少年時代、そして将来への展望に迫ります。

 

 

この記事を書いた人

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大越 健介 キャスター

昭和60年NHK入局、初任地は岡山局。政治部の記者、NW9キャスターなどを経てサンデースポーツ2020キャスター。
"スポーツをこよなく愛する親父"の代表として自ら楽しみながら伝える。

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