三役として
春場所は12日目を終え、優勝争いが激しさを増してきた。小結・大栄翔が力強い立ち合いから得意の突き押し相撲で北勝富士を圧倒して2敗を守り、2場所連続となるふた桁勝利をあげた。平幕の翠富士が2連敗となったため、トップに並んで残り3日間を迎える。(※2023年3月24日スポーツオンライン掲載)
<大栄翔>
『立ち合いから持っていけたのでいい相撲だった。まずはふた桁勝ててよかったと思う。』
今場所、大栄翔が土俵で感じているのが三役としての責任感だ。
現在の関脇、小結の中では最年長に並ぶ29歳で、最も長い通算11場所で三役を務めてきた。昭和以降で初めて横綱と大関が不在となる中、報道陣から三役として場所を盛り上げたいか問われ、迷わず答えた。
<大栄翔>
『そういう気持ちでやりたい。本当に1日一番、集中してやるだけだ。』
責任感がプラスに
その責任感が大栄翔の好調も支えている。大栄翔が持ち味とする突き押し相撲は相手を突き放して威力を発揮する。だが、とっさに引かれた時には体勢を崩して前に落ちたりするなど攻防のバランスを取るのが難しい。
師匠の追手風親方が「連敗ぐせがある」と言うように、西の前頭筆頭で臨んだ先場所は、前半戦は好調だったものの、中日8日目から3連敗を喫するなど調子を崩し、優勝争いに名乗りを上げることはできなかった。
際立つ修正力
しかし、今場所は負けた翌日に反省点を修正して臨むことができている。7日目、小結・若元春に立ち合いから一気に攻め込んだものの、土俵際で突き落とされて初黒星を喫した。しかし、取組の映像を見て「攻め急ぎすぎ、自爆したようなものだ」と冷静さを欠いていたことを反省。
翌日の阿炎との取組では「相手をよく見て攻められた」と振り返ったように相手のはたきなどにもしっかりついて行きながら万全の相撲で勝って連敗しなかった。
残り3日でトップに並び、2年前の初場所以来となる2回目の優勝を目指せるところまでやってきた。2敗で2人、3敗で3人が並ぶ大混戦の様相を呈しているが、12日目、幕内後半の審判長を務めた佐渡ヶ嶽親方も今後の優勝争いについて「横一線だけど少し抜けているのは大栄翔かな。優勝の経験があるから」と大栄翔が優勢であると評する。
三役力士としての責任感と、冷静に修正する力を身につけた大栄翔が、最終盤も土俵を沸かせられるか、注目だ。
<大栄翔>
『(ここまでは)地力がついてきた結果だと思う。本当に残り3日間なので、集中してやっていきたい。』
この記事を書いた人
足立 隆門 記者
平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。