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特集 大関 貴景勝 ~綱とりへ磨く対応力~

相撲 2023年3月13日(月) 午後6:00

「チャンスは何度も来ないし、やれることはすべてやろうと思う」

 

春場所で綱とりを目指す大関・貴景勝のことばだ。その覚悟が示す通り、得意の突き押しに加えて不利な展開での対応力を磨き、勝負の場所に臨む。

“心で引かない”突き押し

阿炎(右)を攻める貴景勝 押し出しで下す(初場所6日目)

貴景勝の持ち味である突き押し。そのルーツは相撲を始めた小学生のころまでさかのぼる。当初はもろ差しの相撲に取り組んでいたが、全国大会では自分よりも体格ではるかに勝る相手に歯が立たなかった。そこで家族などと相談し、まわしを取られないように突き押しを磨くことを決意。空手をやっていたこともあって突きは体になじんだという。

 

身長1メートル75センチと力士としては小柄な体で戦うために意識してきたことがある。それが「気持ちの強さ」だ。立ち合い頭からぶつかり、時には流血しても絶対に引かない。気迫あふれる取組で大相撲ファンの心をつかんできた。

 

貴景勝

反骨心だけでやってきた。身長が止まった時に普通のことをしていたら横綱は無理だと思って心を武器にしようと。突き押しは気持ちで負けたら一切歯が立たないので、絶対に気持ちで負けないというポリシーを持ってやってきている。

“対応力”で上へ

突き押し1本で4年前の春場所後に初めて大関昇進を果たした貴景勝。しかし、ここから壁にぶつかった。得意の攻めを警戒され、上位との対戦では突き押しだけで勝ちきれない場面が増えた。3年前の11月場所で優勝し、次の初場所で初めて綱とりに挑戦したが初日から4連敗を喫するなどして失敗。その後はけがの影響もあって優勝争いに加われない場所が続いた。

 

初めての綱とりに挑戦したが初日から4連敗(2021年初場所4日目)

横綱を目指すために必要なものは何か。考えた末に磨いてきたのが、突き押しで攻めきれないときの対応力だった。稽古では同じ部屋で幕内力士の隆の勝を相手にあえて突き押しを封印し、立ち合いから四つに組む場面も。そこから寄り切ったり、投げで崩したりして不利な展開になっても勝ちきる力を養ってきた。

 

稽古で隆の勝(右)を相手に突き押しを封印し投げで崩す

貴景勝

突き押しで攻めきれなかった時でも勝っていかないといけないのが横綱や大関。稽古場は勝ち負けも大事だが、勝ち負けを意識しなくてもいい時もある。自分で課題を持ちながら体にしみこませていければ、ちょっとずつよくなっていくのかなと。

初場所で見えた成果

稽古の成果が見えたのが1月の初場所だった。優勝争いが激しくなってきた10日目、過去の対戦成績で五分だった小結・明生との一番では立ち合いから押し切れず土俵際に追い込まれた。しかし、そこから相手の腕を取り、小手投げで逆転して白星をつかんだ。

 

明生(右)に追い込まれてから腕を取り小手投げで下す(初場所10日目)

そして、千秋楽、勝った方が優勝となる琴勝峰との一番でも、組む展開となったものの、すくい投げで勝ち3年前の11月場所以来となる賜杯を手にした。

 

 

先月、所属する部屋のある東京・板橋区の駅前で開かれた優勝報告会では、会場からあふれるほどのファンが集まり、6年ぶりとなる日本出身横綱誕生へ決意を示した。

 

 

「自分の夢でもある横綱に向かって、勝とうが負けようが気迫のある相撲を取って満足感であふれるような15日間にしたい」

 

得意の突き押しに加えて対応力を磨いてきた貴景勝。春場所でも優勝すれば夢の横綱昇進が近づいてくる。

 

貴景勝

ほとんどの人がそういう挑戦もできない中で、挑戦させてもらえるところまで来たので、あとはやる。小さいころからの夢をかなえるか、かなえないか、それだけだと思っている。

 

この記事を書いた人

足立 隆門 記者

足立 隆門 記者

平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。

 

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