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特集 横綱 照ノ富士 ~再起に向けて~

相撲 2023年3月10日(金) 午後6:00

「早く復帰したいという気持ちがなかったら、逆に頑張る気持ちにならないと思うので焦りが出て当然」

 

横綱の口から出た「焦り」ということば。その背景には初場所までの3場所連続での休場がある。去年の秋場所、ひざのけがで途中休場し、両ひざの手術を受けた後土俵に戻れていないのだ。春場所も休場となったが、復帰をめざし稽古に打ち込む瞳には変わらぬ力強さがある。

けがを乗り越え横綱に

 

照ノ富士は長年、ひざのけがと戦ってきた。5年前の2018年には、3回目となる手術。このときは長期休場を余儀なくされ、序二段まで番付を下げた。


当時は、しこすら踏めない状態からのスタートだったが地道に番付を上げていき、おととし、番付最上位の「横綱」まで登りつめた。振り返ってもらうとなりふり構わない覚悟で臨んでいたことがうかがえた。

 

序二段で復帰した2019年春場所初日 勝ち名乗りを受ける照ノ富士

照ノ富士

いつ辞めてもいいという覚悟の上でやっていましたし、体が壊れてもいいという覚悟を決めてやっていた。本当に横綱になると思っていなかったし、目標としては置いてやっていましたけど、まさかなるとは思っていなかった。

その一方で、師匠である元横綱・旭富士の伊勢ヶ濱親方にはあることを伝えていた。

照ノ富士

横綱にはなりましたけど、もうみっともない姿を見せたくない。「本当に自分がもうだめだと思ったときには辞めさせてください」というのははっきりと親方に言っていた。

またもひざのけがに・・

 

去年、またしてもひざの状態が悪化。珍しくためらいがよぎったという。

照ノ富士

やっぱり4回目ですから。手術後の痛みとか全部覚えているし、ふだんの生活に戻るまでの情けなかった姿をもう1回想像したくなかった。

それでも原点とも言える「強さを追い求める気持ち」は消えなかった。「去年の自分より強くなれるチャンスだ」と前向きに捉えた。

 

照ノ富士

「もうちょっとやれるんじゃないか」と、もうちょっと自分を追い込める気力がまだあったんですね。それがあるうちに辞めると後悔する。

今が引き際ではない

さらに、気持ちを後押ししたのは部屋の弟弟子の存在だった。

 

照ノ富士が弟弟子たちを熱心に指導する

ある日の稽古でも熱心に指導に当たる姿が目立っていた。横綱に昇進するまでは「自分のことでせいいっぱいだった」と振り返る照ノ富士だが、自分の背中を追う力士たちのためにも、いまが引き際ではないと考えている。

 

照ノ富士

目標に掲げているふた桁優勝を目指して頑張るという数字的な目標はもちろんあるけど、それがすべてじゃなくて、もうちょっと背中で語っていきたい。次を育てたいというのが大きくて、いま辞めるということではなくて、もう1回頑張るというのはそこにありましたね。

復帰へ地道に

 

手術を決断したあとはひざへの負担を考えて一時は体重を20キロも落とした。器具を使った筋力トレーニングだけでなく、しこ、すり足、てっぽうといった基礎的な稽古を徹底して、相撲で使う筋力を徐々に取り戻していった。現在は体重もほぼ戻り、復帰への準備は着々と進んでいる。


新型コロナウイルスによる制限も緩和され、観客の人数制限はなくなって声援も一部が解禁されている。ファンヘの思いも胸に再び土俵を目指す。

 

照ノ富士

「きょう相撲を見に来てよかった」という気持ちにさせて帰ってもらう。土俵に上がる以上はやっぱり結果を残すことが大事ですけど、自分が考えている『横綱としての相撲』というか、いままで鍛えてきたものをはっきりと出して、頑張りたい。

 

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