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特集 琴勝峰 再び上を目指して

相撲 2023年3月1日(水) 午前10:00

初場所に千秋楽まで優勝を争って11勝を挙げ、敢闘賞を獲得した琴勝峰は、春場所は番付を一気に8枚上げて東前頭5枚目で臨みます。琴勝峰はスピード出世で、令和2年初場所には前頭3枚目まで番付を上げたあと、けがで十両落ちするなど苦しみましたが復活を果たしました。

優勝争いの経験を生かして再び上位陣に挑む琴勝峰に、NHKの大相撲中継でおなじみだった大阪学院大学特任教授の藤井康生元アナウンサーがインタビューしました。

 

琴勝峰(右)と藤井元NHKアナウンサー(撮影時だけマスクを外しています)

どんな場面でも対応できる万能力士を目指したい

ーー初場所の成績で自信を深めたのではないかと思うのですが、これから先に向けて、関取自身がこんなふうになっていきたい、という目標はありますか。


大ざっぱなんですけれども、やはりまだまだ強くなりたいですね。また、ひとつの型を磨き上げるというのはすごくかっこいいことなんですけれども、私はどんな場面でも対応できるというか、相手に対応して弱点を突くような、万能な力士になれたらいいなと思います。


ーー初場所をきっかけに大きく羽ばたくのではないかと見ているのですけれど。


良い成績が挙げられたんですけれども、あまり意識しすぎず、春場所も肩の力を抜いていきたいです。


ーー初場所を振り返ると、関取にはまず千秋楽の話を聞きたいのですが、大関貴景勝関との相星決戦、勝てば優勝という相撲にどんな思いで土俵に上がったのですか。

 

優勝をかけた一番  琴勝峰は貴景勝のすくい投げに敗れた(初場所千秋楽)

土俵に上がるまではそう意識もせず、千秋楽の最後にしっかり自分の相撲が取れたらいいな、というぐらいでいたのですけれども、三役そろい踏みをしたあたりからいつもと違うなと思っちゃって、やはり硬くなっていたかもしれないです。土俵に上がって懸賞が土俵を回り出すと、異様な雰囲気というか、千秋楽の結びという実感がだんだんわいてきて、やっぱり意識してしまう形になりました。


ーーさらに勝てば優勝というのはものすごいものではなかったかなと思うのですが。

 

初場所はあまり優勝というのを意識しなかったから、あそこまで争えたのかなというところがあります。前頭の13枚目でしたから、注目もされていないだろうなと無欲だったので、あそこまでいけたのかなと思うのです。けれども、最後はどうしても優勝がちらついてしまい、初めての経験ということもあって考えてしまいました(笑)。

 

ーー終盤に入って千秋楽が近づいてくると、まわりから「優勝」という言葉は。

 

優勝っていうより三賞がほしいなあ、という意識でいました(笑)。三賞をまだ取っていなかったのでそっちが先にあって、優勝という意識はあまり。

 

結びの一番で貴景勝に敗れた琴勝峰(初場所千秋楽)

ーー千秋楽結びの一番で制限時間いっぱい。いつもと違いましたか。

 

やっぱり違いました。盛り上がりというか、観客の視線の集中の具合というのもいつもと違うような感じがして、思ったような立合いができなかったですね。

 

ーーしかも初場所から、お客さんからの声もかなり大きくなっていました。今までコロナの中で、そういう経験がなかったわけですからね。


そうですね。私は十両に上がって3場所目には無観客だったので、やっぱりテレビで見ていた大相撲だという感じがしました。


ーーそして貴景勝関と取って、どうでしたか。


強かったです。もちろん地力も違ったんですけれど、気持ちの面での強さを感じました。ああいうところで自分の流れに持っていけるというのが強さだなと思いました。

頭から当たってしまった千秋楽の貴景勝戦

貴景勝が琴勝峰を攻める(初場所千秋楽)

ーー師匠(佐渡ヶ嶽親方)に聞くと「初場所は頭から当たっていかないようにしていたが、あの相撲は頭から行ってしまった」と言っていましたが、頭から行ったという意識はありますか。


本当は胸から当たるつもりだったんです。しかし固くなってしまって、立ち合ってみたら頭で当たっていた。そこでまずいと思ってしまい、もう流れに飲まれていたんだなと思います。


ーーそれでも念願の三賞も取りましたし、終わってみればいい場所だったではないですか。


敢闘賞を取れたのはうれしかったですけれども、最後に自分の相撲を出し切れなかった。そういう部分の悔いはあります。

 

初の敢闘賞を獲得(初場所千秋楽)

ーーそれは次に生きますね。

 

こういう経験を1度できたので、次にこういう場面が来たら経験を生かして自分の相撲を取れるようにしたいです。

 

ーー間違いなく来ますよ。次の春場所だって来る可能性は十分にありますからね。2年前に前頭3枚目まで上がって、そこからけがもあったのですけれども、苦しい時期がありました。初場所で変わってきたのはどういう点だったのでしょうか。

 

今まではどの相撲も頭から思い切り行っていました。120%の力を出さないと幕内では通用しないという気持ちがあって、がむしゃらに頭で行って、バランスを崩したりするという相撲が多かったんです。けれども師匠から「負けてもいいので余裕持って肩の力を抜いて胸から行ってみよう」と言われて、やってみたら意外と力を抜いた方が余裕があった。次につながるというか、初場所はこれで良かったかなと思うんです。

 

阿炎を突き落としで破り白星を2けたに乗せた(初場所13日目)

ーー関取がけがで下がっている間に同学年の王鵬関や豊昇龍関などが上がってきた。同世代の活躍というのはどう考えていましたか。

 

番付が私の方が上だったときは、遅かれ早かれ自分と同じような所でやるだろうなと思っていました。今は豊昇龍関の方が上で、肩を並べたいという気持ちはありますけれども、まあそこは肩の力を抜いて行きたいですね。でも負けたくはないです。

 

ーーさらにちょっと年下の若い力が迫って来ています。そういう意識はどうですか。

 

本当に刺激になると言うか、うかうかしていられないですよ。

 

ーー佐渡ヶ嶽部屋では、弟の琴手計(幕下)さんも近づいてきましたね。


(弟は)自分より順調に来てるというのもあって(笑)。すごいです。でもまだ追いつかれないようにはしたいです。

プライベートは切り替えてリラックス

土俵入りする琴勝峰(初場所4日目)

ーー関取はとても真面目で、私たちとの対応もとてもきちんとしています。もう少しリラックスしてもいいのかなと思うんですけれども。

 

プライベートではさすがにリラックスしていますよ。

 

ーープライベートで、切り替えたりリラックスしたりしているときにはどんなことをしているんですか。


銭湯に行ったり、ゲームをしたり、漫画を読んだり、ネットフリックスを見たりと、普通の同年代と同じようなことをしてます。

 

ーープライベートの時間も相撲のことを考えている、ということはないんですか。

 

私はメンタルがすごく強いというわけではないので、そういうところで休まないといけないですね。

 

ーー最後に、ことし1年の目標はなんでしょうか。

 

番付的には三役を目指していきたいですね。

 

インタビューに答える琴勝峰

ーーいや、三役は大丈夫でしょう。

 

目標を立ててやることも大事なんですけれども、一つ一つの積み重ねが大事だと思っているので、1日1日を積み重ねていって、良い結果が出るようになっていきたいなと思います。 一発のチャンスをつかみ取る力も必要ですし、我慢して我慢して続けるというのも大事だと思います。

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