特集 8年目の覚悟 中日・小笠原慎之介投手 ~担当記者のイチオシ~

プロ野球・中日の小笠原慎之介投手は去年、自己最多でチームトップとなる10勝をマークした。今シーズンの目標に「開幕投手を務めた上で先発ローテーションを守ること」を掲げ、春のキャンプを送った。入団して一度もクライマックスシリーズすら経験していない左腕の8年目の覚悟を取材した。
選手会長の決意に触れて
キャンプイン前日の1月31日に沖縄県北谷町の宿舎で行われた全体ミーティング。小笠原投手はそこで選手会長を務める柳裕也投手が呼びかけた「弱いドラゴンズを終わりにしよう」という決意表明を聞いて、チームの勝ち頭に去年初めてなった自分にも引っ張る責任があると感じた。
小笠原慎之介投手
「『弱いドラゴンズを終わりにしよう』ということばを聞いて、柳さんのことしにかける気持ちが全然違うなと。選手会長になって思っていることを口に出し、責任を持ってやろうとしています。ただ柳さんだけに引っ張らせる訳にはいかないとも思いました。そういう先輩を見ると僕もついていくというか、追い越さないといけないという気持ちになりました。柳さんが話したあいさつは僕の中ですごく響きました」
キャンプではどんな練習でも人一倍大きな声を出す姿が目立っていた。柳選手会長のことばを受け、どんな時でもチームメートの先頭に立つという思いからだ。
2月10日に210球の熱投 背景には…
チームを引っ張る覚悟はブルペンでの投球練習にも見られた。キャンプが中盤にさしかかった2月10日の金曜日。
投球練習を終えたピッチャーが、1人、また1人とブルペンをあとにする中で、小笠原投手はミットにめがけて力強いボールを投げ続けた。そして1時間30分が経過し210球を投げたところでようやくピッチングを終えた。直後の取材で小笠原投手は投球数を語呂合わせしたことを否定した上で、相当な球数を投げた意図を説明した。
小笠原慎之介投手
「第1クールと第2クールの前半でだいぶ状態がよかったので、この状態なら投げてもいいかなと。なあなあにならないように『この日に投げる』と前もって決めていました。そこに向かって調整していく能力を含めてそれまでの間にどれだけ自分の体を追い込めるかと」
そしてこの投げ込みが3月31日の金曜日に行われるシーズン開幕戦を意識した調整の一環だったと明かした。
小笠原慎之介投手
「(開幕投手の意識が)ないと言ったら嘘になります。僕の中では『そういう気持ちで投げています』という意思表示になりますね。シーズンが始まるまであと7週間。あっという間に始まると思うので、1日1日悔いがないようにレベルアップできるようにやっていきたい」
今シーズンの覚悟を体現した210球は、キャンプを最後まで見た上で開幕投手を決めると話していた立浪和義監督にも強い印象を与えた。
立浪和義監督
「小笠原に聞いたら(開幕戦がある)金曜日に球数を多くしていると。何も伝えていないし正式には決めていませんが、十分に(開幕投手)候補の1人だし、順調にいけばいいと思っています」
さらなる飛躍のカギは“ツーシーム”
投球面のレベルアップにも余念がない。キャンプ序盤、小笠原投手がひととおりの練習を終えた後、再びブルペンに戻って投球練習をすることがあった。入念に確認したのは新しい球種「ツーシーム」。
左バッターの懐に食い込むように小さく変化するツーシームの習得を目指すのには理由がある。小笠原投手は昨シーズン、右打者の披打率が2割2分8厘だったのに対して左打者は2割5分7厘。左対左はピッチャー優位と言われることがある中で逆の結果になっていたからだ。左バッターだった立浪監督からもシュート系のボールを身につけるようアドバイスを受けていた。
小笠原慎之介投手
「投球の幅は広がります。現状維持で戦うというのに関してはちょっときついところがあります。『去年と変わらないね』と言われたら終わりだと思いますし、これでいいと満足してしまったら、野球人生が終わると思っています。ツーシームの仕上がりは順調にきています」
ツーシームを生かすためにあわせて必要だと考えるのがストレートの平均球速を上げることだ。2キロから3キロ球速を増すことで150キロ近くにしたいと考えている。
小笠原慎之介投手
「まっすぐに強さがないと他の変化球は効いてこないと思います。まっすぐあっての変化球というのはいろんな人に言われています。そこは気にしてやっていきたいです」
小笠原慎之介投手
「今シーズンは自分の背番号くらい(11)は勝ちたいですね。勝たないといけないとも思っています。そのくらいの覚悟を持ってキャンプに入っていました。しっかりアピールして『(開幕投手を)任せる』と言ってもらえるように大事に過ごしていきたい」