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特集 なでしこジャパンを中澤佑二が徹底分析 サッカー女子ワールドカップ “次は私たちの番だ”

サッカー 2023年1月27日(金) 午前10:47

「次は私たちの番だ」(なでしこジャパン主将:熊谷紗希選手)。ワールドカップカタール大会閉幕から1か月。その余韻も冷めやらぬ中、半年後の7月には女子のワールドカップが開催されます。世界一に輝き、歴史的快挙を成し遂げた2011年。しかしその後は、最高3位だった世界ランキングが一時13位にまで降下するなど、チームは苦戦が続いています(現在は11位)。それでも今、ヤングなでしこたちが虎視眈々と牙を研いでいます。なでしこジャパンの現在地とは?そして再び頂点に立つためには何が必要か?中澤佑二さんがボナライズしました。(サンデースポーツ 2023年1月22日放送)

なでしこ 世界との「差」

 

中川キャスター:サッカー女子ワールドカップはオーストラリアとニュージーランドで7月20日に開幕。グループCに入った現在世界ランキング11位の日本は、7位のスペイン、37位のコスタリカ、81位のザンビアと対戦します。

 

村上茉愛さん:なでしこと聞くと2011年の優勝のイメージがとても強いんですが、今現在の強さはどれくらいですか?

 

中澤さん:2011年の優勝をもう1度、と思いたいですけど、ちょっと苦戦が続いていますね。

 

 

中川キャスター:2016年のリオデジャネイロオリンピックはアジア最終予選で敗退し出場できず。2019年のワールドカップフランス大会は決勝トーナメント1回戦で敗退。2021年の東京オリンピックは準々決勝敗退ということで、なぜこんなに苦戦しているのか、2011年のメンバーであり、今は日本代表のキャプテンを務める熊谷紗希選手に聞きました。

 

熊谷紗希選手

「世界が本当にすごいスピードで成長していて、テクニックや技術的にうまい選手が増えて、実際(日本は)置いて行かれているんで、正直」

豊原キャスター:圧倒的なスピードとフィジカル、さらにテクニックまで兼ね備え世界を席巻する強豪チームのサッカー。中澤さん、女子サッカー界で何が起こっているのでしょうか?

 

 

中澤さん:変化のきっかけの1つが、2011年のドイツ大会の日本です。素早くボールを回すパスサッカーで頂点に立ちました。これに衝撃を受けた海外のチームは、日本のスタイルをこぞって取り入れたのです。その結果、従来のフィジカルやスピードに加えてテクニックも向上したんですね。

 

熊谷紗希選手

「当時なでしこみたいな(サッカーを目指そう)と言ってくれる海外の監督がすごく多くて、“日本みたいに”と結構言われていたんですけど」

日本の選手が打つべき対抗策は?

熊谷紗希選手

「スピードはまず勝てないです。意味が分からないぐらい速い選手もいて、この選手と対峙して、よーいドンにならないためにはどうするか。先に体を当てるか、自分がフライングするか、先にポジション取るか、いかに「やらせない」にフォーカスするかがすごく大事で。私はずっとヨーロッパでやっていて、その場に行かないと分からない。そういう(強さや速さの)慣れがもっともっと絶対必要で、日本の選手たちが身につけないといけないところかなと思っています」

キャプテンとして迎えるワールドカップイヤー、熊谷選手は初詣で決意を新たにしていました。

 

熊谷紗希選手

「とにかく一日一日を大切にすることですね」

国際大会で輝かしい結果「ヤングなでしこ」

 

中川キャスター:ここ2、3年でなでしこの若い選手たちが次々と海外の強豪クラブに挑戦していますよね。

 

中澤さん: 23歳から26歳くらいの選手たちで、2011年の世界一を小中学生のころに憧れの眼差しで見ていた世代だと思いますね。

 

村上さん:知っているような強豪クラブばかりですが男子よりすごいんじゃないですか?

 

中澤さん:そうですね。2018年には、20歳以下のワールドカップで優勝しました。昨年は同じ大会で準優勝。A代表とは対照的に国際大会で輝かしい結果を残しています。

なでしこが目指すサッカー

豊原キャスター:そのヤングなでしこたちを率いてきたのが、現在の日本代表監督、池田太さんです。スピードやフィジカルだけでなく、テクニックでもハイレベルな海外選手を相手に、池田監督はどんな戦術でワールドカップに挑もうとしているのでしょうか。

 

池田太監督

「体の身長も含めて大きい選手、スピードが速い選手がいるかと思いますけど、一概に体の大きさだけで勝敗が決まるわけじゃないので。チームで戦う上で攻撃も守備もお互いの共有ごとは増やしていきたい」

ヤングなでしこを率いて世界で結果を残してきた池田監督。大切にしているのはチームの約束ごとを決め、選手が連動して個の強い相手に立ち向かっていくことです。その1つが相手ボールへのプレス。

池田太監督

「アグレッシブにボールを奪いにいって、そこからゴールに向かっていく。奪ったボールを相手の守備組織が整う前にフィニッシュまで持っていく。そういったところは1つ武器にしていきたいと思っています」

池田監督が約束ごととして決めた、相手ボールへのプレスを体現したのが去年11月、当時世界ランキング6位の強豪スペインとの一戦。パスをつなぐスペインに対し一人一人がしっかりとマークにつき、前線からプレスしてきた選手がボールを奪取、そこから速いパスを通すと裏に走り出した選手がシュートまで持っていきました。

 

 

池田太監督

「連動した守備からボールを奪って、奪ったボールを前にはやくつけていく。1人ボールに寄った選手と裏に抜ける選手を作れたというところもよかった」

熊谷紗希選手

「チームとしてのコンセプト、こう戦うというものがあって、その上で場面場面で状況判断するのは選手たち、関係性というのは絶対必要だと思っています」

中澤「男女に違いはない」 今後取り組むべきポイントは

豊原キャスター:組織的にボールを奪って速い切り替えからゴールを奪うというのは、男子の森保ジャパンの戦い方にも通じているのでは?

 

中澤さん:はい。男女の違いはないと思いますので、そこに関しては日本がこれからもっともっと取り組んでいくべきポイントだと思いますし、強みだとは思います。

 

豊原キャスター:一方で、森保監督が生出演してくださったときにも話していましたが、これにプラスして三笘薫選手のような個で打開できる選手、そういった力も必要になってくるのでしょうね。

 

中澤キャスター:はい。なでしこにも三笘選手のような、個で打開できる選手がいるんです。藤野あおば選手です。僕にとっては非常に懐かしいところで話を聞いてきました。

“個で打開” 藤野あおば選手

 

中澤さん「出張ボナライズ。日テレ・ベレーザと読売ヴェルディの練習場所であるこちら。一番最初は98年にこのクラブハウスに来て、約20年ぶりに門をくぐりたいと思います」

 

WEリーグ、日テレ・東京ヴェルディベレーザの藤野あおば選手18歳。スピードに乗ったドリブルが武器のフォワードです。去年8月に行われた20歳以下のワールドカップ、藤野選手は背番号10番を背負って全試合に出場、準優勝の原動力となりました。去年10月には初めてなでしこジャパンに選出されました。

 

 

藤野あおば選手「嬉しい気持ちと初選出で満足していられないという気持ちはあって。ゴールを目指してプレーすることが一番大事だと思いますし、ゴールへの推進力というのは自分の持ち味としてやっていきたい」

 

去年11月におこなわれたスペインとの強化試合。先発出場した藤野選手はスピードに乗ったドリブルで何度も仕掛けました。

 

藤野あおば選手「思ったよりできた。ポジショニングがしっかり取れれば自分自身の余裕も生まれて、よりゴールにというところ(自信を)持てたので」

 

 

中澤さん「足速いですよね。50mどれくらいですか?」

 

藤野あおば選手「一番早くて6.8秒ぐらい」

 

中澤さん「6.8秒!俺と同じだね。俺の一番速かった時と同じよ。ってことは俺より速いよ(笑)」

 

持ち味の推進力をゴールに結びつけるためにこの日、藤野選手が力を入れていたのがシュート練習。チームの全体練習後、居残りで行っていました。

 

 

中澤さん「パワーというか、シュートのインパクトがいいですよね。パチンとしっかりとミートして、コースをちゃんと狙っていますよね。キーパーが届かないところにしっかりと低いシュートを打つ。(脚の)振りもシャープだしね。俺は思いっきり蹴っちゃう。思いっきり蹴って思いっきり外すんだけどね(笑)」

 

中川キャスター:その藤野選手は、皇后杯準決勝でアルビレックス新潟と対戦。日本代表池田監督が見守る中、いきなり試合開始3分でゴール。藤野選手のスピードが生きましたね。

 

中澤さん:ボールをもらって、一気にスピードを上げるんですね。ディフェンスを置き去りにして最後は練習していたシュートからの見事なゴール。狙いを定めるために視界をしっかりと開けた状態でシュート、素晴らしい練習の成果だと思います。

優勝するために何が必要か

 

中川キャスター:村上さん、なでしこには続々と新しい世代が出てきていますね?

 

村上さん:もう期待でしかないですよね。若さと勢いと強気でどんどん前に行ってもらって、最高でブラボーな試合を期待したいなと。

 

中澤さん:いいですね。

 

豊原キャスター:来月には、国際大会で世界ランク1位のアメリカ、6位のカナダなど強豪チームと対戦します。ワールドカップに向けて、何を積み上げていけばいいでしょうか?

 

中澤さん:フィジカル、技術的なところもそうですが、何よりも強い相手に対してビビらない。自分たちで主導権を握るという強い気持ちを持ってもらえれば僕はいい戦いができると思います。自信です。

 

中川キャスター:ワールドカップでどこまで結果付いてくると?

 

中澤さん:優勝してほしいですし、優勝できる実力はあります。

 

 

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