特集 新体操ウクライナ選手団来日 戦禍の祖国に思いをはせる選手たち 村上茉愛が聞く

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、新体操ウクライナ選手団が来日しました。群馬県高崎市で合宿するチームを村上茉愛さんが取材しました。戦禍の祖国に思いをはせながら1分1秒を大切に練習する選手たちのその胸に秘めた思いとは。(サンデースポーツ 2023年1月22日放送)
私(村上茉愛)が訪ねたのは来日した翌日。選手たちはウクライナから陸路ポーランドに移動し、3日間かけて日本に到着しました。ウクライナ選手団が高崎市で合宿するのは、昨年10月以来2回目です。
村上さん「時差ぼけもあると思うのですが、早速練習を始めているのですごいですね」
パリオリンピックで上位を狙うトップ選手からジュニアまで、コーチを含め29人の選手団です。到着してわずかな仮眠をとり、寸暇を惜しむようにさっそく練習。チームはこの1年、練習場所の確保に苦しんできました。ロシア軍による攻撃が続く首都キーウ。市内にある新体操の練習場では停電が頻繁に起き、暗く寒い中での練習を強いられています。
イリナ・デリューギナヘッドコーチ「私たちは厳しい環境に置かれています。ここ(高崎)は第二の家です」
選手団の中でひときわ美しい動きを見せる選手がいました。19歳のエース、ビクトリア・オノプリエンコ選手です。東京オリンピックでは正確なターンとダンサブルな動きで個人総合10位に入りました。
村上さん「おお柔らかい。足を180度上げたら私だったら絶対倒れちゃうんですけど。足を上げたときのつま先とかも一段と美しいです。」
今もキーウに暮らすオノプリエンコ選手に話を聞きました。
村上さん「チームや個人の練習はウクライナではどういう状況になっていますか?」
オノプリエンコ選手「自分の国や町にミサイルが飛んできて、誰の命も保証されていません。練習も困難です。電気が消えると何も見えないし、どうしようもないです。(暖房設備が十分ではないので)たくさん着込んでいます。ズボンも靴下も2枚重ねです」
オノプリエンコ選手がみせてくれたのは、困難な状況の中開かれた国内大会の映像。試合中に停電が起き、観客や審判が携帯電話のライトで選手たちを照らし演技を続けていました。
オノプリエンコ選手「戦争によってウクライナ人は精神的に大人になりました。みんな勇敢になったのです」
村上さん「一切安心する場所がない中で、毎日練習や試合のために頑張るモチベーションを保つにはどうしていますか?」
オノプリエンコ選手「何もしないでただ泣きたい日もあります。私の場合はお父さんもおじいさんも祖国を守るために戦場に行っているので特につらいです。自分を支えているのはウクライナ人としての自覚です。最強の男たちが私たちを守ってくれています。私たちが安心して眠れるように、彼らは眠らずに戦っています。私たちが試合で勝つことがウクライナの兵士たちを励ますことにつながるのです」
戦禍の祖国に思いをはせて、オノプリエンコ選手はパリオリンピックでの勝利を見据え、合宿に臨みます。
オノプリエンコ選手「以前とは考え方が変わりました。必ず最後までやり遂げるようになりました。新しいシーズンに向けて、この合宿を有意義に過ごしたいと思います」
取材をおえて
村上さん「これはオノプリエンコ選手にもらったブレスレットになります。ウクライナのシンボル“ひまわり”をイメージして、ウクライナカラーで作ったものになるそうです」
中川キャスター「村上さん、ブレスレットを常に持ち歩いているということですよね」
村上さん「そうですね、今も仕事に行くかばんにつけて持ち歩いています。想像を絶するような話ばかりですが、それでも練習の合間にチームメートと笑顔で楽しそうにお話しするところがとても印象に残っています。いつかウクライナに平和が訪れて、何の心配もなく笑顔で練習に打ち込める日が来ることを心から願っています」