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特集 Shigekix「ブレイキンが誰かの支えや学びになれば」 エースの決意

アーバンスポーツ ブレイキン 2023年1月11日(水) 午後0:15

ブレイキンが新競技として実施される2024年のパリオリンピック。その舞台で初めてのメダル獲得を目指しているのが「Shigekix」のダンサーネームで活動する半井重幸選手だ。

 

日本男子のエース、Shigekixは若い頃から世界の大舞台で実績を積み上げてきた。2018年のユースオリンピックで銅メダルを獲得すると、その2年後には世界最高峰の国際大会「BC One」で優勝を果たし、20歳にして世界トップレベルの実力を身につけてきた。

 

ユースオリンピックに出場 銅メダルを獲得(2018年10月)

そして2024年のパリオリンピックはブレイキンの魅力を広める絶好の機会だと考えている。

Shigekix

ブレイキンの魅力やエネルギーを日本はもちろん世界に発信していきたい。金メダル以上にそっちが目的になるかな。

ブレイキンを始めたのは7歳の時。AYANEのダンサーネームでパリオリンピック出場を目指す、姉の彩弥選手の影響だった。

 

姉のAYANE(左)とShigekixが大阪狭山市の観光大使に任命された(2017年)

Shigekix

見たことない動きをしているなと。どんどん引き込まれていってのめり込んだ。好奇心でしかなくて、とにかく技を習得するのが楽しかった。

しかし2021年の秋、1つの試練が訪れた。練習中に左手の薬指を骨折したのだ。痛みを抱えるなか、この年は11月の世界最高峰の大会で優勝を逃し、続く世界選手権でも決勝トーナメントに進めなかった。

Shigekix

自分が求めていた踊りや結果を出すことができなかったので、あんなに悔しいことはないなってくらい、悔しかったですね。「しばらく1人にしてくれ」ってくらい。

しかしこの経験が精神的な成長につながった。気持ちを切り替えて挑んだ、2022年1月の全日本選手権。音楽にあわせて動きを止める得意の「フリーズ」など、持ち味を存分に発揮して大会2連覇を達成した。

 

全日本選手権で2連覇を達成(2022年1月)

その後、Shigekixは国際大会で結果を出し続けている。2022年7月のワールドゲームズで銅メダルを獲得すると、10月には前の年、決勝トーナメントに進めなかった世界選手権で準優勝を果たした。

 

そして海外の有力選手も出場して11月に東京で初めて開催されたジャパンオープン。Shigekixはさらに成長した姿を見せた。ダイナミックな回転技に加え、キレのある「トップロック」や表現の多彩さも兼ね備えたダンスを披露し、危なげなく決勝まで勝ち進んだ。

 

決勝の相手はNORIのダンサーネームで活動する36歳の菊地教稔選手。Shigekixが「尊敬している、熱い思いで挑める先輩」と話す存在だ。日本選手どうしの決勝はそれぞれの個性がぶつかり合う熱戦となった。

 

ジャパンオープン決勝 Shigekix(左)とNORI(右)

1ラウンドではNORIが表現力豊かなダンスとスタイリッシュなムーブで先手を取ったのに対し、Shigekixは身体能力の高さを生かした「パワームーブ」とスピード感あふれるステップで応戦。2ラウンドと3ラウンドを連取して逆転でこの大会の初代王者に輝いた。

 

2022年最後の大会を締めくくったShigekixはこう語った。

 

Shigekix(中央)がジャパンオープン初代王者に輝いた(2022年11月)

Shigekix

世界選手権から1か月ほどの調整で、自信を持って踊れるのか、自分自身との向き合いがあった。課題はあるがやってきたことが踊りに出たと感じたので良い経験になった。2022年は過酷なトーナメントをやってきて、メンタル的にもフィジカル的にもハードだったが、新しい発見や学びにつなげられた。それもあっての今回の結果だと思う。

そしてブレイキンの魅力を発信していくことへの強い思いを語った。

Shigekix

僕もブレイキンに救われた1人で、感謝できるくらい、いろいろなことを与えてもらった。ブレイキンが誰かの支えや学びになり、ブレイキンによって人生が豊かになってくれればうれしい。きれいごとではなくて、本当にそう思っている。2024年に向けてブレイキンは勢いを増すと思うし、その後も影響を与えていきたい。

オリンピックの初代金メダリストとなること以上に、Shigekixが大切にする思い。オリンピックの先にある夢に向かって、日本のエースが次に目指すのは全日本選手権での3連覇だ。

 

JDSFブレイキン春合宿の公開練習(2022年3月)

NHKは「第4回全日本ブレイキン選手権 男女準決勝・決勝 」を生中継。放送予定など詳細は特設サイトでご確認ください。

 

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この記事を書いた人

松山 翔平 記者

松山 翔平 記者

スポーツ新聞社での営業職を経て平成22年にNHK入局。
大分局、千葉局、広島局を経てスポーツニュース部。

 

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