特集 水上由伸 "育成出身新人王"を支える強気な姿勢 プロ野球・西武

プロ野球、パ・リーグで今シーズンの新人王に輝いた西武の水上由伸投手。パ・リーグで育成出身の選手が新人王になるのは史上初の快挙となりました。活躍を支えたのは「ネガティブになることはない」と話すほどの強気な姿勢です。
新人王を受賞 2年目が飛躍のシーズンに
新人王の表彰をうけたた水上選手(2022年11月25日)
「数字だけ見れば100点のシーズンだった」
西武の2年目、24歳の水上投手は新人王を受賞したあとの会見でこのように喜びをかみしめました。今シーズンは主に中継ぎとして60試合に登板して4勝4敗1セーブで防御率1.77、35ホールドポイントと堂々たる成績をマーク。新人王のほか最優秀中継ぎのタイトルも獲得し大きな飛躍を果たしました。
水上投手の持ち味はインコースへの強気なピッチングです。最速152キロのストレートとキレのあるスライダーとシュートでバッターを打ち取ります。一時は首位に立つなど激しい優勝争いを繰り広げたチームを勝ちパターンの一角として支えました。
水上投手
得意のスライダーをどう生かすかと考えた時にバッターの近いところを突くのが一番有効的。小さいころからずっと投げていたので、インコースのコントロールには昔から自信がある。だいたいここら辺でリリースすればいいところにいくという感覚は自分の中で持っている。
ピンチの時こそ ”思い切り腕を振る”
水上投手のもうひとつの魅力がどんなピンチの場面でも動じないメンタルの強さです。接戦の場面で投げるシーンが多かった今シーズン。気持ちの強さを象徴するようなピッチングがありました。
7月14日のロッテ戦で1点リードの8回に登板した水上投手。ヒットとフォアボールでノーアウト満塁の大ピンチを招きました。それでも「逆に開き直っていけた」と次のバッターに投げたのが得意のインコースへのシュート。サードゴロで狙いどおりのダブルプレーに打ち取りました。続くバッターには追い込んでからアウトコースへの得意のスライダー。空振り三振に抑えマウンド上で大きく叫びました。
「ピンチで真価を発揮する」水上投手の魅力が詰まったピッチングを披露してチームの勝利につなげました。
ロッテ戦でノーアウト満塁の絶体絶命のピンチを切り抜けた(2022年7月14日)
水上投手
ピンチの時こそ、大胆に思い切って腕を振っていこうと思っている。来てくれているお客さんもやっぱりピンチで抑えたほうが盛り上がると思うし、マウンド上でそういう思考に持っていっている。絶対に打たれないという気持ちだけは持っているのでその表れかと思う。
水上投手が去年、西武に入団した際の順位は育成の5位。ドラフト会議で名前が呼ばれたのは同期の中で最後でした。そこから這い上がって育成入団としてはパ・リーグで史上初めて新人王に輝きました。成長を支えたのがピッチングと同様の強気な考え方です。
2020年12月に行われた新入団選手会見でポーズをとる(後列左端が水上投手)
水上投手
育成5位だからといってそんなにネガティブにならず、プロに入ったもん勝ちだろうと思っていた。一番下なのでその中で一番活躍してもっと上の順位で取っておけばよかったなと思わせたいと、そのくらいの気持ちではずっといた。
水上投手の強気な考え方は高校時代に始めたメンタルトレーニングによって身につけたものです。それまでは「人並みの喜怒哀楽だった」という考え方が大きく変わり、今もプロの世界で戦う上で大きく役立っているといいます。
水上投手
全てをプラスに考えるのは癖づいているので、ネガティブになることはないし、打たれても別に次やればいいやと思っている。やっぱり中継ぎなので、その日打たれても次の日もあるので、切り替えなければどんどん引きずってしまうし、そういった面でやっぱり切り替えというのは一番大事。
西武対オリックス18回戦 9回に登板し4勝目をマーク(2022年8月4日)
今シーズンを収穫が多かったと振り返りながらも4敗を喫したことについて「負けがついちゃいけないポジション。そういった面では悔しかった」と反省も口にする水上投手。持ち前の気持ちの強さを生かして来シーズンはさらなる活躍を誓います。
水上投手
マウンドで気持ちが上がらなかったらダメだと思っているので、いい気持ちの高ぶりと気合いだけは忘れずにやっていきたい。来年もっといい成績を残そうかなと思う。