NHK sports

特集 中田翔 2度の2軍降格も通算1000打点を達成 記録の背景にあったのは?

野球 2022年12月20日(火) 午後7:01

プロ野球・巨人の中田翔選手は今シーズン、プロ野球史上47人目となる通算1000打点を達成しました。2度の2軍降格から4番を任され節目の記録に達するまで。その道のりは平たんではありませんでした。

平成生まれで初の記録達成

8月23日の中日戦。4番ファーストで先発出場した中田選手は5回の第3打席。レフトにタイムリーヒットを打ち通算1000打点を達成しました。史上47人目。平成生まれの選手では初めてとなる記録達成でした。

 

試合後にファンの歓声に応える(2022年8月23日)

中田選手

送りバントや進塁打など犠牲になってチャンスを作ってくれる選手がいるからこそ打点が生まれる。ホームランよりもずっと打点にこだわってきた。

記録達成の背景には2つの取り組みがありました。

自主トレで体をいじめ抜く "33歳で一番、体の状態はいい"

沖縄での自主トレーニング(2022年1月)

ことし1月。中田選手は3週間にわたって沖縄の石垣島で自主トレーニングを行いました。トレーナーの秀島正芳さんと主にケアやコンディショニングを担当する早川怜さんの2人と体を徹底的にいじめ抜きました。

 


「1月が1年で一番厳しい」と漏らすほどの猛練習で体を作り上げた中田選手。トレーナーの秀島さんもシーズンに向け手応えを感じていました。

 

秀島さん(左)と早川さん(右)

秀島さん

腰痛などで落ちていた筋力をシーズンオフから2月にかけて戻せたことが大きい。1月にいいトレーニングができたから体重も増やしたのではなく増えていった。33歳でもこれまでで一番、体の状態はいい。

順調な滑り出しも 4月に最初の2軍降格

自信を持って臨んだ今シーズン。オープン戦から結果を出し中日との開幕戦では5番・ファーストで先発出場。第3戦ではホームランを打つなど順調な滑り出しを見せました。しかし長くは続きませんでした。首痛の影響もあって4月22日に1軍の出場選手登録を抹消。ちょうどこの時期、秀島さんは中田選手から相談を受けたといいます。


「トレーニングの重量を増やして体を鍛え直そうと思う」

 

しかし秀島さんが出した答えは状態の維持でした。

秀島さん

もともとは開幕ではなく半年以上続く長いシーズンを見据えて5月に状態が上がるようにメニューを組んでいたので体自体の調子はよかった。なのでこれからという時期に重量を重くするのではなくバッティングの動作に直結するトレーニングの方が大切だ。

なかでも秀島さんが重視したのは内転筋を強化するトレーニングです。バッティングの際にバランスを安定させるとともに下半身の力を生み出す重要な筋肉の1つです。取り組んだのは足を大きく開いて腰を落とし両手を合わせてひざでひじを挟み込み体を上下させる『拝み』と名付けられた秀島さんが編み出したトレーニングです。一見簡単そうに見えますが、嫌がる選手も多い厳しいメニューです。

 

秀島さんが編み出した『拝み』トレーニング(2019年1月)

中田選手は「『拝み』をやると打てるようになった」と話し、このトレーニングを毎日ルーティンに取り入れるようになりました。秀島さんは『拝み』を続けることで下半身の力強さが出てきてバッティングにも生きてきたと指摘します。

秀島さん

内転筋を鍛え続けることで下半身が安定するようになり持っている力を伝えやすくなる。中田選手も結果につながることから日々の練習でも習慣化して自信にもつながっていると思う。

6月に2回目の2軍降格 ミスターの指導に応える

6月12日。打撃不振で今シーズン2回目の2軍降格となった中田選手のもとを長嶋茂雄終身名誉監督が訪れました。ジャイアンツ球場の室内練習場で黙々とボールを打ち返す中田選手の真後ろから熱いまなざしを送り「オーケー」や「よし」と声をかけ、左腕の使い方やバットの出し方などを身振り手振り教えました。そして「バットを短く持ってはどうか」などと中田選手にアドバイスを送りました。

 

長嶋さんから打撃指導を受ける(2022年6月12日)

中田選手

7割くらいの力感でコンパクトに振ることやバットを短く持つといった打席で工夫することを指導して頂いた。長嶋さんは雲の上の存在。指導して頂けたことは野球人生の財産になることです。試行錯誤して自分のスタイルにしていければいいと思います。

「バットを短く持つ」。高校時代からホームランを量産し、日本ハムでも主軸を任されていた中田選手にとってバットを短く持ち続けることは初めての経験でした。

 

「内転筋の強化」と「バットを短く持つ」。この2つの取り組みを続け、中田選手は6月17日に1軍に復帰。長嶋さんが東京ドームに観戦に訪れた6月23日には代打で出場し、およそ1か月ぶりとなる6号ホームランを打ちました。さらに7月6日にも再び長嶋さんの前で8号ホームランを打ち、長嶋さんの指導に結果で応えました。

 

長嶋さんが観戦に訪れた試合でホームラン(2022年6月23日)

中田選手

長嶋さんの前で打てたことはとてもうれしい。アドバイス通りバットを指1本から2本分、短く持っている。

中田選手はその後も安定した成績を残し7月は打率3割7分3厘でホームラン5本をマーク。8月11日からは4番を任されました。そして迎えた8月23日。通算1000打点を達成しました。

中田選手

家族や自分を支えてくれた人たち、日本ハムファンや巨人ファンのおかげで達成することができた。

来季は全試合出場で自己最高の結果を目指す

中田選手は最終的に規定打席には到達しなかったものの、打率2割6分9厘、ホームラン24本。こだわってきた打点はチーム2位の68打点を挙げて、シーズン最後まで4番に座り続けました。

 

巨人のファン感謝イベントで笑顔(2022年11月23日)

中田選手

2軍で学べたこともたくさんあったがその期間が長く悔しかった。来年は全試合に出場したいしすべての面で自己最高の結果を残したい。

34歳を迎える来シーズン。中田選手はキャリアハイの成績を残す覚悟です。

この記事を書いた人

金沢 隆大 記者

金沢 隆大 記者

平成24年 NHK入局 広島局、大阪局を経て、スポーツニュース部。巨人担当。

関連キーワード

関連特集記事