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特集 坂倉将吾 飛躍の先に見据える“本職”でのプレー プロ野球・広島

野球 2022年12月23日(金) 午前9:12

プロ野球・広島の6年目、坂倉将吾選手は今シーズン、チームをけん引して成長をみせました。慣れないサードでの起用。初めての全試合出場で経験した疲労との戦い。多くの壁を乗り越えた今、来シーズンに向けて、念願の“本職”でのプレーに備えています。

打撃部門でキャリアハイ

10月2日、シーズン最終戦の後でした。

 

坂倉選手

全試合に出場したことで、責任感や難しさ、そして達成感といろいろな感情があります。チームの結果は出ませんでしたが、個人的には最後までプレーできてよかったと思います。

坂倉選手はチームでただ1人、全試合で先発出場を果たしました。打率2割8分8厘のリーグ9位。ホームラン16本、68打点、さらにヒット155本はいずれもキャリアハイの成績です。

 

阪神対広島24回戦で15号ホームラン(2022年9月21日)

なのに坂倉選手はどこかすっきりしない様子でシーズンを振り返りました。

慣れないサードに挑戦

サードを守る坂倉選手

バッティングで大きな存在感を示した坂倉選手は、守備で新しいポジションに挑戦する1年となりました。平成29年にドラフト4位でキャッチャーとして入団しましたが、今シーズンはキャッチャーでの出場が22試合にとどまり、昨シーズンの62試合から3分の1にまで減らしました。その代わり定位置となったのがサードでした(119試合出場)。持ち味のバッティングを生かすため起用されたのです。

キャッチャーへのこだわり

 

「キャッチャーで出たい」。小学校から始めたキャッチャー。試合の行方を大きく左右し、チームを勝利に導くこのポジションが何よりも代えがたい“喜び”でした。坂倉選手はシーズン中もポジションへの思いを問われるとたびたびそのこだわりをみせました。それでもチームの勝利のために個人の思いを置いて「任されたところで結果を残す」と目の前の1球に集中しました。サードでのエラー数はリーグ2位の13個。それは慣れないポジションを最後まで守り抜いた証ともいえました。

坂倉選手

サードを守ることでいろいろと迷惑もかけたし大変なことは多かったです。それでも違った視野、角度から野球を見ることができたので、それを今後の野球人生で大事にしていきたいです。

全試合出場で疲労との戦い

坂倉選手が初めての全試合出場で直面したのは疲労との戦いでした。前半戦は5番バッターとして21試合連続ヒットを打つなど順調。打率も3割5厘で前半戦を折り返しました。そんな中でも「疲労感がないと言ったら嘘になる。これもひとつの糧としてやっていきたい」と長丁場のシーズンを戦い抜く難しさを感じていました。

 

広島対阪神16回戦 8回のチャンスに三振(2022年8月5日)

初めて選ばれたオールスター戦を終えた後半戦。坂倉選手のバッティングに陰りが見え始めました。およそ1か月の間に打率が2割8分台前半まで落ちました。坂倉選手は「バテた」とバットを思うように操ることができず、ボールを捉えられなくなっていました。8月には打順が6番に。それでも1日8時間の睡眠とバランスのいい食事。みずから疲労回復に努める工夫をして最後までサードのポジションと打席に立ち続けました。

坂倉選手

自分のバッティングができたときもあれば、できなかったときもありました。中心選手としてはもの足りない成績で、納得してないしもっとできたと思っています。来シーズンに向けてもう1回やり直さないといけません。

来季はキャッチャー専念

プロ野球選手として成長を続ける坂倉選手は来シーズン、こだわりの強いキャッチャーに専念することになりました。シーズン終了後、新たに就任した新井貴浩監督からもその方針を伝えられました。

 

坂倉選手と新井新監督

坂倉選手

身が引き締まり、しっかりやらないといけないという思いが芽生えました。課題は山積みなので目的を持って練習したいです。

11月に行われた宮崎県日南市での秋季キャンプでは、新井監督の要請で就任した藤井彰人ヘッドコーチとともに、キャッチャーの基本となる“キャッチングの形”から見つめ直しました。

 

藤井新ヘッドコーチ

藤井コーチから指摘されたのは、キャッチングの際にピッチャーのボールを前に捕りにいって頭が突っ込んでしまう悪い癖でした。坂倉選手は今シーズン、盗塁阻止率が1割3分3厘と低迷しました(15回中2回阻止)。頭が突っ込むことで体勢が崩れてスムーズに送球につなげることができていなかったのです。

 

 

キャンプでは投げる動作にスムーズに移るため“捕る形”を見つめ直しました。全体練習の2時間以上前の朝7時半からどの選手より早くグラウンドに来て自主練習を行いました。キャッチングの形を体にしみこませていました。キャッチャーへのこだわり。坂倉選手はまさに「0」からチャレンジしようとしています。

 

坂倉選手

キャッチャーはプレーが勝ちに直結するという意味で責任感があり大変なポジションですが、その分の勝ったときの達成感や喜びが忘れられません。キャッチャーですべての試合に出場したいし、最後はキャッチャーで終わりたいという思いがあります。まだキャッチャーとしてどれくらいできるのか未知数なところはありますが、より高いレベルを目標に頑張りたいです。

“悔”から“喜”へ

オフに入った坂倉選手にことしの漢字を尋ねると、すぐに「悔」という字を選びました。個人として、そしてチームとしての悔しさが勝った今シーズン。本職のポジションで1試合でも多くチームを勝利に導き、「喜」という漢字を選ぶ未来を描いて来シーズンに向かっています。

 

この記事を書いた人

横山 悠

横山 悠

平成28年NHK入局

前橋局、長野局を経て広島局

ことしからプロ野球・広島を担当

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