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特集 湯浅京己 飛躍につながったあの1球 勝負の2年目へ

野球 2022年12月19日(月) 午後6:01

セ・リーグ最長の開幕9連敗を喫しながらも徐々に巻き返し3位で終えた阪神。原動力となったのは12球団トップの防御率をマークした投手陣です。なかでも今シーズン、ブレークを果たしたのが最優秀中継ぎのタイトルを獲得した4年目の湯浅京己投手。飛躍につながった忘れられない1球がありました。

独立リーグから入団し4年目で開花

阪神対広島4回戦 延長10回から登板し2回無失点(2022年4月8日)

2019年に独立リーグからドラフト6位で入団した湯浅投手。たび重なる腰のけがに悩まされ昨シーズンまで1軍での登板数はわずか3試合でした。ところが4年目の今シーズンは150キロを超えるストレートと鋭く落ちるフォークボールを持ち味に59試合に登板。防御率1.09、45ホールドポイントをマークして最優秀中継ぎのタイトルを獲得しました。

 

阪神対広島4回戦 延長11回を投げ終えガッツポーズ(2022年4月8日)

湯浅投手

1年間1軍でやれたのは初めてで、初勝利やオールスターゲーム、日本代表の強化試合と今まで経験できないことばかりを経験できた。開幕前はわからないことだらけで始まったが、シーズンを通して自分の中で成長できた。充実した1年だった。

今シーズン初の被弾でスイッチが入る

今シーズンの飛躍を後押しした1球がありました。7月1日の中日戦。6月末まで30試合に登板してわずか5失点と結果を残し「8回の男」に定着していた湯浅投手はこの日も8回、1対1の同点の場面でマウンドへ上がりました。しかしランナーを二塁に背負った場面でアリエル・マルティネス選手に高めに投じたストレートをとらえられて勝ち越しホームランを打たれ敗戦投手となりました。今シーズン初めて打たれたホームランでした。

 

中日対阪神12回戦 8回に決勝ホームランを打たれた(2022年7月1日)

湯浅投手

めちゃくちゃ悔しかったし、なんで打たれたのかいろいろ考えた。

試合後、涙が出るほど悔しさであふれ、その日は打たれた映像を何度も見返したという湯浅投手。こみあげてきた強い思いがありました。

 

「狙われていても打たれないボールを」

湯浅投手

コースも球種も狙われているボールと同じであっても、それでも打たれないボールを投げれば打たれない。バッターが待っている想像を超えるボールを投げたいと思うようになった。

翌日、再びマルティネス選手と対戦した湯浅投手。マウンドに上がる前、キャッチャーの梅野隆太郎選手に「同じボールでやり返したい」と伝え初球以外はすべてストレートで勝負。最後は152キロで空振り三振を奪ってみせました。気迫を込めた1球でやり返すことができた湯浅投手。この試合以降、ホームランは1本も許さず無失点で今シーズンを終えました。

湯浅投手

何が変わったとか、どこを変えたからよくなったとかではないが、あのホームランで自分の中でもう1つスイッチが入った感じがした。今思えば、あの試合があったから、次の試合から最後まで無失点でいけたと思う。

勝負の2年目へ“何においても成長したい”

CSファーストステージ第3戦に勝ちファイナルステージ進出(2022年10月10日)

湯浅投手はクライマックスシリーズのファーストステージでは9回のマウンドに上がり試合を締める役割を担い、来年3月に行われるWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの強化試合にも出場しました。抑えや日本代表入りなど周囲からの期待が一層高まる中、“勝負の2年目”に向けた抱負を聞くと、謙虚で誠実な湯浅投手らしいことばが返ってきました。

湯浅投手

(改善したい部分は)すべてです。ことしの成績に不満があるとかはまったくないが、満足していたらこの先成長できない。何においても、すべてにおいて来年成長した姿を見せられるようにしたい。

この記事を書いた人

中村拓斗 記者

中村拓斗 記者

平成30年NHK入局 福岡県出身

東筑高校野球部出身(ポジションは三塁コーチャー)

令和4年シーズンから阪神を担当

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