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特集 佐々木朗希「我慢の先のさらなる飛躍へ」WBC出場への意欲も語る

野球 2022年12月16日(金) 午後4:56

プロ野球史上最年少で完全試合を達成した今シーズン。ロッテの佐々木朗希投手を待っていたのはまたしても投げられない日々でした。我慢の先にある飛躍を目指して。

“我慢してきた部分” その意味は?

佐々木投手と言えば、4月10日のオリックス戦で完全試合を達成。史上最年少さらにプロ野球新記録となる13者連続奪三振をマークするなど、記録ずくめのピッチングで世の中を驚かせ一気に注目を集めました。その試合後の取材で私が一番印象に残った佐々木投手の言葉があります。

 

完全試合を達成した直後の佐々木投手(2022年4月10日)

佐々木投手

たくさん苦しい思いをしてきた中で、いろいろ我慢してきた部分もあったので。今こうやって投げられていることに幸せを感じる。

佐々木投手は高校時代に球速163キロをマークし注目を集めた一方で、故障を避けるため高校3年生の夏、甲子園出場をかけた岩手大会の決勝は監督の判断で登板回避。ロッテに入団後も異例の育成計画が立てられ、1年目は体作りを優先するため2軍のマウンドにすら立てず我慢の日々が続きました。

また投げられない日々 支えになった存在が

マウンドで投げられる喜びを感じながら、佐々木投手は3年目の今シーズン、完全試合の勢いに乗り6月で6勝目を挙げ奪三振数もリーグトップを独走しました。

 

西武戦で7回3安打無失点と好投し6勝目(2022年6月22日)

このままシーズンを投げ抜いたらどんな成績を残すのだろうか。そんな周囲の期待とは裏腹に、夏場以降待っていたのはまたしても投げられない日々との戦いでした。初めて開幕ローテーションに入った佐々木投手に、シーズンが進むにつれ蓄積した疲労の影響が出始めたのです。

さらに右手の指にまめができておよそ1か月登録を抹消されるなど、マウンドから遠ざかる日々が続きました。前半戦はストレートの球速がたびたび160キロを超えていましたが、後半戦に入ると160キロを超えるボールは少なくなりました。

そうした中、佐々木投手の支えとなったのは年下のキャッチャーで高校卒業1年目のルーキー松川虎生選手の存在でした。完全試合でもバッテリーを組み、グラウンドの内外で仲の良さが目立ちます。

 

春のキャンプで松川選手(右)と笑顔でことばを交わしていた(2022年2月7日)

佐々木投手がまめの影響で離脱していた時もコミュニケーションをとり続け、松川選手は「毎日、手を広げてまめを見せてきます」と明かしてくれました。佐々木投手は松川選手について「18歳かプロ18年目かわからない」と冗談を交えつつ「キャッチャーのポジションで全然違和感がなく普通にできていることがまずすごいですし、松川のリードを信じて投げています」と全幅の信頼を寄せていました。

育成計画に近い成績も 規定投球回に達せず悔しさ 

疲労とまめの影響で後半戦は3勝に終わり、目標としていた規定投球回にも達することはできませんでした。佐々木投手はシーズンをフルで戦い抜く体力に課題を感じたと言います。

 

佐々木投手

春先と終盤では疲労感も違うし、同じ疲労を感じる中でも前半は力が入ったが、後半は力を入れてもそこまで力が出なかった。

しかし登板数やイニング数は当初の計画に近いものでした。みずからの育成計画に基づきシーズン開幕前に佐々木投手が掲げた目標は「20試合以上の登板」。実際20試合に登板し、投球回数も去年の約2倍の129回1/3イニング。これは想定通りの数字でした。

 

秋季練習で汗を流す佐々木投手(2022年10月16日)

佐々木投手自身も「シーズン中、規定投球回が見えている中で到達できなかったのは悔しい」と話しながらも「試合数も夏場くらいに何回か登板を空けてしまったが、それも踏まえて目標を立てていました」と明かしました。投げられない日々を想定しての育成計画。その意味では順調に歩みを進めていると言えます。

新監督は投手陣の柱と期待

チームは5位に終わり体制を一新。吉井理人新監督が就任しました。佐々木投手の入団時から2年間、投手コーチを務め育成計画を立てました。

 

佐々木投手の練習を見守る吉井新監督

吉井監督は就任会見で佐々木投手について「先発として中6日で1年間健康で投げ続け、25試合以上に投げること。投手陣の柱として期待しています」と話しました。

佐々木投手

すごく選手思いで選手の意思を尊重してくれる。これまでの指導で吉井さんの「自分が追い求めている技術や自分がやってきたことをもう少し信じてやっていいんじゃないか」という言葉は僕の中ですごく印象に残っている。

来シーズンに向け吉井監督の期待に応えたいと意気込んでいました。

WBC出場も視野にさらなる飛躍誓う

オーストラリアとの強化試合第2戦に先発(2022年11月10日)

様々な経験をした今シーズン、佐々木投手は日本代表デビューも果たしました。来年3月のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックに向け11月に行われたオーストラリアとの強化試合で先発。4回無失点でしたが、日本の公式球とは違うボールに苦戦しました。4安打1四球という投球内容以上にキャッチャーの構えたところに球がいかず、得意のフォークボールも高めに浮く場面が目立ちました。

佐々木投手

変化球はコントロールが難しいですし、ストレートも指のかかりだったり、日本のボールとは違ったのでどちらも難しさはありました。もう少し試合で力が入る場面で投げていきたい。

今シーズン、完全試合による達成感と、またしても投げられない我慢の日々を経験した佐々木投手。来シーズンの目標を聞くと「飛躍」と答えました。

 

佐々木投手

今シーズン、去年よりもいいシーズンを送ることができたが、まだまだ僕の中でもっとできるという思いはある。できるだけ多くの試合、多くのイニングを投げてチームを助けられるように。もっといい数字を残し続けられるように。まずは来年、大きく飛躍したい。

“令和の怪物”は来シーズンは1年を通してチームのために腕を振り続ける覚悟です。

この記事を書いた人

森脇 貴大 記者

森脇 貴大 記者

平成28年NHK入局。松山局を経て、スポーツニュース部。趣味は草野球、フットサル、美味しいものを食べること。

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