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特集 今永昇太 理想のストレートの感覚をつかむ

野球 2022年12月15日(木) 午後0:52

プロ野球・DeNAの今永昇太投手は今シーズン、史上85人目、96回目となるノーヒットノーランを達成するなど、11勝を挙げてチームの2位躍進に貢献しました。好調の背景には7年目にして初めて理想のストレートの感覚をつかんだことがありました。

ストレートを軸にした勝負で結果残す

今永投手は今シーズン、セ・リーグ3位タイの11勝。防御率も3位となる2.26をマークしました。さらに6月には日本ハムとの試合でノーヒットノーランを達成。8月は5勝0敗、防御率1.25で月間MVPを受賞するなど投手陣の柱として活躍しました。結果を残した今シーズンついて今永投手はこう分析しています。 

 

ノーヒットノーランを達成した日本ハム戦後の今永投手(2022年6月7日)

今永投手

8割の力でストレートを投げていても、バッターから見れば僕が9割の力でストレートを投げてきている感覚だったと思う。そのピッチングをある程度のラインで保てたことがよかった。

今シーズンの今永投手のスタッツを見ると、ストレートの被打率は自己最多の13勝を挙げた3年前のシーズン以来となる1割台(1割9分9厘)となったほか、132個の三振の6割以上をストレートで奪いました。また全投球の中でストレートの割合は昨シーズンと比べて4ポイントほど増えて53.9パーセントと、ストレートを軸に勝負をしていました。

プロ7年目でつかんだ初めての感覚とは?

8割ほどの力加減でもなぜストレートが打たれなかったのか。それはことし1月の自主トレーニングでつかんだ“ある感覚”だったといいます。

 

自主トレーニングは高知で行った(2022年1月19日)

今永投手

腕を速く振るのではなくてボールの重さを利用して投げていくというか。腕を振ってボールをリリースした時に、腕に反射的に“ブルン”と波のように力が返ってくる感覚。1年目から6年目まではなかった感覚だった。

今シーズン初勝利は中日戦の完封勝ち(2022年5月17日)

今永投手はボールの重さを感じながら腕をしならせるイメージで投げる練習を繰り返し取り組んだ結果、フォームの力感が少なくなりました。このため8割ほどの力で投げていてもバッターから見れば、フォームと実際に投げ込まれてくるストレートとのイメージが合わず勢いや威力のあるボールに感じ、このギャップで抑えることができました。

大事な試合で結果残せず “情けない選手”

好成績を残し昨シーズン最下位のチームを2位に押し上げた今永投手。それでも阪神とのクライマックスシリーズファーストステージ1戦目では5回2失点で負け投手となり、チームも1勝2敗でファイナルステージに進むことができませんでした。来シーズンは大事な試合で結果を残すピッチャーになりたいと誓っています。

 

阪神とのCSファーストステージ第1戦 5回2失点で負け投手に(2022年10月8日)

今永投手

あの試合で勝てなかったことが今の自分の力を表している。まだまだ自分はもの足りない、情けない選手だ。来シーズンはチームが優勝するために引っ張っていけるような数字を残していきたい。

“手応えは一切ない” 国際試合で強さ見せるも

悔しさが残った今シーズン。それでも自信を深めたストレートを携え臨んだ11月のWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの強化試合。今永投手はオーストラリアとの第1戦で先発して4回1失点、三振10個のうち7個をストレートで奪いました。これで国際大会の通算成績は26イニングを投げて2失点、48奪三振と相性のよさをみせた今永投手。WBCへの思いについて『日本代表に選出されれば』と前置きをした上でこう話します。

 

オーストラリアとの強化試合第1戦に先発(2022年11月9日)

今永投手

これまでは国際大会で結果が出ているが、レベルがもう2段3段上の相手にどうかっていうのは僕にもわからないので、手応えは一切ない。よりトップの選手に球速で勝負したりとかは、今からそんな技術はつけられないので、9割のストレートを7割ほどの力で投げているように見せられるか。そういうギャップで抑えていきたい。

 

この記事を書いた人

阿久根 駿介 記者

阿久根 駿介 記者

平成25年NHK入局。福岡局、津局、札幌局を経てスポーツニュース部。DeNA担当。物心ついたころから大学まで野球一筋。ポジションは投手。

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