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特集 宇田川優希 育成からはい上がり日本一の立て役者へ

野球 2022年12月12日(月) 午後3:55

プロ野球・オリックスは今シーズン、少ないリードを守りきる必勝パターンで26年ぶりの日本一に輝きました。リリーフの中心として活躍したのはシーズン中盤まで育成選手だった2年目の宇田川優希投手です。

すい星のごとく現れた育成出身の右腕

宇田川投手

自分でも予想できない活躍で本当に日々成長できた1年だった。

オリックスの投手陣にすい星のごとく現れた宇田川投手。シーズン中盤まで育成選手でしたが150キロ台後半のストレートと落差の大きいフォークボールを武器にことし7月に支配下登録選手に昇格。8月以降は勝ちパターンのリリーフの一角として19試合に登板。防御率0.81と好成績をマーク。チームに欠かせない存在へと大躍進を遂げました。

投球の幅を広げたのは”2種類のフォークボール”

西武戦でプロ初勝利をあげた(2022年9月8日)

飛躍の背景にあったのはフォークボールの使い方でした。これまでの宇田川投手のピッチングは力強いストレートでバッターを追い込み、最後は落差の大きいフォークボールで三振にしとめるというスタイル。しかし1軍のバッターを相手にすると追い込む前にカウントを取りにいったストレートを狙われる場面が増え、投球内容の改善を迫られました。そこで取り組んだのがストレートとほぼ同じ150キロに近い球速で小さく落ちるフォークボールを使うことでした。

宇田川投手

ストレートに近い軌道で高めから落とすのでバッターは浮いたと思って見逃すがボールが落ちてストライクになる。ストレートだけに頼らずカウントを追い込めるようになり投球の幅が広がった。

カウントを取る時の握り(左)と三振を奪いにいく時の握り(右)

三振を取るための落差の大きいフォークボールとストライクを取る小さなフォークボール。宇田川投手はこの2つを腕の振りは変えず、ボールの握りの指の開きを変えることで操ってピッチングの幅を広げました。

磨きをかけたフォークボールで日本一に貢献

鍛え上げたフォークボールが威力を発揮したのはヤクルトと対戦した日本シリーズでした。オリックスは第3戦まで勝利がなく初勝利を目指した第4戦。1点リードで迎えた5回、オリックスの先発・山岡泰輔投手がスリーベースヒットを打たれワンアウト三塁のピンチを迎えました。この場面で中嶋聡監督は宇田川投手をマウンドに送りました。

 

日本シリーズ第4戦の5回 中嶋監督が宇田川投手への交代を告げる(2022年10月26日)

中嶋監督

ヤクルトには1発の怖さがあった。どうしてもバットに当てられたくなかったので三振を取りにいけるピッチャーを選択した。

宇田川投手はピンチの場面で完璧に抑えた(2022年10月26日)

宇田川投手はヤクルトの2番・山崎晃太朗選手に初球からフォークボールを投げて空振りを奪うなどツーストライクとし、最後はフォークボールを低めに落として空振り三振を奪いました。続く3番・山田哲人選手は力強いストレートで追い込み、5球目に高めから小さく落ちるフォークボールを投げて見逃し三振を奪ってピンチをしのぎ監督の起用に応えました。

 

先発した山岡投手(右)の出迎えを受ける宇田川投手(左)

宇田川投手

考える時間もなくマウンドに上がったが、“やばい”という気持ちは一切なかった。自分のピッチングを心がけ三振を奪って無失点に抑えられ気持ちの成長も感じた。

来年は開幕1軍で活躍を

育成選手からはい上がってピッチングの幅を広げ、日本一の立て役者となった宇田川投手。来年はさらなる活躍を誓います。

 

契約更改交渉のあと”開幕1軍”と書いたボールを手に笑顔

宇田川投手

ことしはチームに貢献できたのは8月からだったので、来年は開幕1軍で1年を通して活躍できるよう頑張りたい。

 

この記事を書いた人

林 知宏 記者

林 知宏 記者

平成21年 NHK入局 福岡県出身

学生時代はラグビー部に所属

ことしからオリックス担当

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