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特集 山下良美さん 女性初の主審候補 FIFAワールドカップ2022  

サッカー 2022年12月6日(火) 午後2:15

FIFAワールドカップ2022。日本は決勝トーナメント1回戦でクロアチアに敗れ目標のベスト8入りを逃しましたが、大会はまだまだ続きます。そして大会の楽しみは選手のプレーだけではありません。サンデースポーツ中川安奈キャスターがカタール大会で史上初の大役に挑む女性を取材しました。(2022年10月30日放送)

ワールドカップ 初の女性主審候補

 

中川キャスター:こんにちは。サンデースポーツの中川です。

 

山下さん:サッカー国際審判員の山下良美です。よろしくお願いします。

 

女性では日本唯一のプロの審判、山下良美さん36歳。数々の国際大会で主審を務めてきた実績が評価され、今回のワールドカップの主審候補36人に女性で初めて選ばれました。

 

 

中川キャスター:最初に連絡来た時はどんな気持ちでしたか。

 

山下さん:正直いちばん最初は驚きという気持ちもありましたけど、責任をすごく強く感じて。その時にいちばん最初にぎゅーっと体が締めつけられるような、そんな気持ちになりました。

正しい判定をするために取り組むことは

山下さんは史上初のワールドカップでの大役に向け、更なるレベルアップに取り組んでいました。持久力のトレーニングで基準にするのは距離やタイムではなく“心拍数”です。

 

 

山下さん:心拍数を見ながら強度を決めてトレーニングしています。心拍数が上がって息が切れた状態で事象を見ても正しい判定ができない可能性があるので。

 

試合中の心拍数も記録している山下さん。1分間に170回を超えることもある心拍数を低く抑えることが目標です。

 

山下さん:常に余裕を持って90分間フィールドに立てるよう、常に心肺機能を高めることを意識してトレーニングをしています。

 

ジムでは山下さんの持ち味、短い距離の“スプリント力”をさらに鍛えています。その能力が特に必要になるのがペナルティーキックかどうかの微妙な判定の時だといいます。

 

 

山下さん:ファールのポイントがラインに少しでもかかっていればPKになります。あちらのボール、今ここから見て、ペナルティーエリアの中にあると思いますか、それとも外にあると思いますか。

 

中川キャスター:線の外側にあるように見えているんですけど。

 

山下さん:そうですね。あそこでファールが起こりそうな時には走らないと!

 

 

中川キャスター:私も全力で!全然追いつかない。こう見るとちょっと線に乗っているんですね。

 

 

山下さん:そうなんです。より正しい判定をするために、短い距離でもスプリントが必要な時があるんです。

 

そして山下さんが審判として最も大切だと考えているのが、“きぜんとした態度”です。その意識は背筋をぴんと伸ばして走る姿勢にも。

 

 

山下さん:判定をする時、より説得力がある見え方にさせたいので、そのためには走り方も大事だなと。

 

難しい判定を選手に伝える時は言葉だけではなく、あらゆる手段を使います。

 

山下さん:メッセージさえ伝えられれば何でも。笛もありますし顔でもジェスチャーでも目線でも。伝える方法はいくらでもあるので。

 

中川キャスター:かっこいいです。

 

山下さん:目を見ながら言っちゃいました。

 

 

コイントスが「一番緊張します」

最後にもう1つ練習していることがあるそうです。

 

山下さん:これなんですけど。

 

 

これはFIFAから国際審判員に毎年届くコイン。

 

山下さん:試合前にトスするコイン、私はここが一番緊張します。落としたりちゃんとキャッチできなかったりするんじゃないかと。手も震えてしまうので。

 

中川キャスター:そうなんですね。

 

山下さん:最初の笛を吹いてしまえば試合中は緊張しないんですけど、それまでがとても緊張します。

 

そんな山下さんの理想のトスとは。

 

山下さん:まず顔からですね。

 

中川キャスター:顔から?

 

山下さん:緊張感を出さないこと。

 

 

山下さん:まずコインを落とさないことですね。そこそこ高くまで上げて。(コインを受ける)手をピシっとして、手のひらに落とす。これがベストですね。

 

中川キャスター:コイントス、見せていただけますか。

 

山下さん:緊張しちゃうので。

 

 

山下さん:いい出来じゃないでしょうか。

 

ワールドカップで世界のトップ選手のプレーを判定するために山下さんのトレーニングは続きます。

 

1次リーグ ベルギーvs.カナダで第4審判として男子のワールドカップデビューを果たした山下さん

山下さん:今回で男性女性かかわらず、すべての審判員がワールドカップを夢に持てるという可能性が広がったことは本当にすばらしいことだと思っていますし、その思いを笛にのせられたら私自身がとてもうれしいなと。

 

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