特集 豊昇龍 10年ぶりの決まり手で沸かせる23歳~ふた桁勝利を目指して~

九州場所は序盤戦最後の5日目。
14人も1敗力士がいる中で会場を沸かせたのが関脇・豊昇龍だ。
十両時代も含めて過去5回の対戦で一度も勝ったことがない前頭3枚目の翠富士との一番だった。
立ち合い、右上手を取りに行った豊昇龍に対し、懐に入った翠富士がひざを入れて切り返し。
またも勝負は翠富士かとなったところで軍配は豊昇龍に上がった。
体が浮き上がりかけたが持ち前の身体能力で逆に自分の足を掛け、最後は上手を離して先に倒した。
決まり手は「かわづ掛け」
幕内では平成24年春場所で隆の山が勢を相手に決めて以来、10年ぶりだった。
きわどい勝負に珍しい決まり手。
会場は大いに沸いた。
1敗を守った豊昇龍は取材に応じ「しっかり集中できた相撲だったなと思う。狙ったわけじゃないので流れで。体の動きは悪くない」と冷静に振り返った。
決まり手が幕内で10年ぶりと伝えられると「珍しい技で勝ったという感覚はなかったのでよかった」と笑顔を見せた。
この取組について大相撲中継の解説を務めた元横綱・北の富士の北の富士勝昭さんは「豊昇龍の足腰はいいね。あの体勢から掛けるもんね」と絶賛した。
強靱な足腰に最後まで勝負を諦めない負けん気の強さは、おじの元横綱・朝青龍ゆずりだが今の豊昇龍はそれだけではない。
ことしの春場所、新小結で勝ち越し。
さらに夏場所、名古屋場所も勝ち越して新関脇として臨んだ先場所も勝ち越した。
今場所は初日の琴ノ若戦に勝ち3連勝のスタートを切った
三役昇進後も確かな実力を示している。
その背景にあるのが兄弟子、明生との連日の激しい稽古。
「どっちも負けたくない気持ちはあるし、僕は先輩には負けたくない。明生関は後輩には負けたくない。お互い毎日、真剣勝負をしている」
さらに食事やトレーニングで体重も140キロを超えるまでに成長した。
豊昇龍は今場所前、精力的に稽古をこなしてきた
稽古で培った確かな実力と自信を胸に、三役昇進後初のふた桁勝利に向けて気合いは十分だ。
「しっかり体を作ってきた。1年納めの場所だから良い成績を残したいし、一番でも多く勝ちたい」
4日目ですでに全勝の力士はいない。
三役には48年ぶりに関脇3人小結4人が座る。
その1人豊昇龍が星を伸ばすのか、それともほかの力士が待ったをかけるのか。
混戦の九州場所は中盤戦に入る。
この記事を書いた人

持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。