NHK sports

特集 NHK杯フィギュア 日本選手はどう挑む 宇野昌磨選手や坂本花織選手が意気込み語る

フィギュアスケート 2022年11月7日(月) 午後3:30

フィギュアスケート・グランプリシリーズ第5戦のNHK杯が11月18日から20日まで札幌市で行われる。

4年後のミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックに向けた最初のシーズン、北京大会のメダリスト2人は気持ちを新たに技術や表現に磨きをかけて臨む。

一方、若手は存在感をアピールしようとNHK杯での飛躍を誓っている。

男子シングル 宇野昌磨 新たなモチベーションを力に 

今大会の男子シングルで優勝争いの軸になるのは去年の大会を制した宇野昌磨選手であることに疑いはない。

昨シーズンはフリーで4種類の4回転ジャンプ5本を跳ぶ高難度の構成に挑戦して北京オリンピックで2大会連続のメダルとなる銅メダルを獲得、さらに3月の世界選手権では初優勝を果たした。

 

世界選手権で演技終了後、ガッツポーズを見せる宇野選手(3月)

さらなる飛躍を期待された新たなシーズンを前に世界のフィギュアスケート界、特に男子シングルでは大きな出来事があった。

オリンピック2大会連続金メダルの羽生結弦さんのプロ転向。

そして北京大会で金メダルを獲得したネイサン・チェン選手もしばらくの間、競技会から離れることを決めた。

宇野選手はことし10月、NHKのインタビューに対して率直な思いを明かしている。

宇野選手

いつかこの時が来ると思っていたが寂しい気持ちがあった。ずっと追いかけていた2人が、いざいなくなった時にすごく寂しい。

いつもそこにあったものを失った喪失感。

目標を失いかけた時、それを埋め合わせるかのように宇野選手は新たなモチベーションを手に入れた。

それが目の前に現れた新たなライバルの存在だった。

アメリカの17歳、イリア・マリニン選手。

史上初めて4回転アクセルを試合で決めた新星と10月のジャパンオープンで初めて競い合った。

 

ジャパンオープン マリニン選手のジャンプ(10月)

宇野選手はマリニン選手の4回転アクセルだけではなく、ほかの4回転ジャンプの質の高さに驚いたという。

宇野選手

僕は4回転アクセルを見てもあまり刺激を受けないというか、本当にすごいなと思うだけで、僕もやってやるぞとは思わなかった。それ以上にアクセル以外が本当に素晴らしかったのでそこに刺激を受けたと僕は感じた。1年、2年たてば(マリニン選手は)もっと圧倒的な存在になる。置いていかれないようにちゃんといつまでも戦えるようにしたいというのが僕の現状の位置なのかな。 

マリニン選手を語る時、その表情は生き生きとしていた。

やっとの思いでつかんだ世界チャンピオンの称号を脅かす存在が現れたことを、歓迎しているかのように。

宇野選手

僕が追われる立場なのかなという印象を持っていたが、追われる立場ではない。ジャパンオープンのときバックヤードでマリニン選手は僕と同じ大会に出たそうにしていた。「グランプリシリーズはどの大会に出るの?」と。結果、出場する大会はいずれも違う大会だったがマリニン選手も、きっと僕と同じ大会に出ることが面白いんだと思う。そう思ってもらえることがすごくうれしい。

グランプリシリーズカナダ大会での宇野選手の演技(10月)

今シーズンはショートプログラムとフリーともにプログラムを一新した。

フリーでは昨シーズンと同様に4回転4種類5本に挑戦する。

目標はまだ実現したことがないノーミスでの演技だ。

男子シングル 友野一希・山本草太 飛躍の足掛かりに 

男子シングルに、日本から出場する友野一希選手と山本草太選手もNHK杯をきっかけに世界への飛躍を期している。

友野選手は2年ぶりのNHK杯出場。

繰り上げで出場した3月の世界選手権ではショートプログラムで初めて100点超えを果たし6位に入った。

これまでグランプリシリーズや世界選手権は出場予定の選手の欠場によるいわゆる“代打”での出場が多かったが、その立ち位置から脱却したいと今シーズンは3種類目の4回転習得にも意欲を示している。

 

3位に入ったグランプリシリーズフランス大会 友野選手の演技(11月)

友野選手

今シーズンは“代打の神様”ではなく代表を自分でつかみ取りたいと思っている。そのためには4回転ジャンプを決めるだけではなく、その質、さらに演技全体の完成度が一番のキーになってくると考えている。NHK杯では1番を目指し結果も出しながら、見てよかったと思ってもらえるような演技を目指す。

山本選手はNHK杯には5年連続の出場。

今シーズンはここまで好調で8月の国内大会で優勝すると、9月の中部選手権ではフリーで3種類目となる4回転、4回転フリップを初めて試合で試した。

惜しくも着氷はならなかったが、心身ともに充実した姿はNHK杯でも活躍を予感させる。

 

山本選手はグランプリシリーズフランス大会で2位となった(11月)

山本選手

オフシーズンから練習を積んでくることができた。ことしも自分らしく練習してきた成果を出せるように全力で頑張っていきたい。

女子シングル 坂本花織 表現力の幅を広げてレベルアップ

女子シングルは大会3連覇を目指す坂本花織選手の演技から目が離せない。

昨シーズン、北京オリンピックで日本女子として3大会ぶりのメダルとなる銅メダルを獲得したほか、3月の世界選手権はロシア出身の選手が出場しない中ではあったものの、しっかりと力を発揮して初優勝を果たした。

 

坂本選手はグランプリシリーズアメリカ大会で優勝(10月)

安定した結果を残すことができた理由には演技全体の質の向上が挙げられる。

トリプルアクセルや4回転ジャンプといった大技への挑戦を封印して、1つ1つのジャンプや演技のつなぎの動きに磨きをかけたことが功を奏した。

坂本選手

試合で見つけた失敗や修正ポイントを次の試合までにしっかり直して1個1個のクオリティを上げていくことで、これだけ点数が変わってくるんだというのを実感した。ジャンプにしても振り付けにしても1つ1つ最上級のものにしたら、ここまで点数が出るって発見できたので、そこはすごく自信になったし今後の自分にもいかされる。

4年後のオリンピックを見据えて、今シーズン特に力を入れているのが表現力だ。

ショートプログラムとフリーともにオリンピックシーズンとは違う振り付け師に依頼して、新たな表現の方法を身につけようと取り組んでいる。

坂本選手

フリーはショートとは違った女性らしい柔らかい動きを出してほしいっていうことをすごく言われた。一番、自分にとって苦手な分野なので、そこを表現するのは苦労はしているけれど、そこが出来たらやっぱりすごい。もう一段階レベルアップできると思いながらやっている。 

3連覇がかかるNHK杯は、得意のジャンプと磨きをかけた表現が一体となったプログラムを見せたいと意気込んでいる。

坂本選手

シーズン後半に向けてどんどんジャンプがプログラムに溶け込んでるようになればいいなと思っている。どれだけ自分のベストが出せるかというのをNHK杯で確認できるようにショートもフリーもしっかりノーミスで揃えて、最上級にもっていける良いきっかけになればいい。

 

女子シングル 住吉りをん・渡辺倫果 4年後を目指して

さらに、女子シングルに日本からは19歳の住吉りをん選手と20歳の渡辺倫果選手の若手2人が初出場する。

シニア1年目の住吉選手はジュニアで出場した去年の全日本選手権で8位。

最大の注目は大技の4回転トーループだ。

去年夏ごろから本格的に取り組み始めていまでは半々の確率で着氷するまでになったという。

今シーズンはフリーの冒頭に4回転トーループを組み込んでいて、試合で成功すればシニアの日本女子では初めての快挙となる。

またフリーの振り付けは世界的な振り付け師のシェイリン・ボーンさんに依頼した。

ステップシークエンスやコレオシークエンスの激しい手の動きなどが注目で“自信を持って挑戦して世界に羽ばたいていく”というみずからの思いをプログラムに重ねる。

 

住吉選手はグランプリシリーズフランス大会で3位に入った(11月)

住吉選手

NHK杯といういままでずっと見る立場だった夢の舞台に自分が立てるというのが本当に楽しみなので、その舞台でたくさんの人に自分の演技を見てもらって、私を応援したいなと思ってもらえるような演技がしたい。

渡辺選手は去年の全日本選手権のフリーでトリプルアクセルを決めて6位に入った。

今シーズンはトリプルアクセルに安定感が増していて、9月の国際大会ではショートプログラムとフリーともに挑戦してフリーでは高い出来栄え点を獲得。

さらに10月のグランプリシリーズ第2戦のカナダ大会ではグランプリシリーズ初出場で初優勝を果たした。

NHK杯ではショートプログラムで1本、フリーで2本の計3本のトリプルアクセルに挑戦したいと意気込んでいる。

 

渡辺選手はグランプリシリーズカナダ大会で初優勝(10月)

渡辺選手

今回のNHK杯はオリンピックの夢に向かう第一歩でもあるのかなと思っている。自分の納得のいく演技で、今できるベストが出せるよう頑張りたい。

ペア りくりゅう 世界で戦える自信がついた

ペアの注目は2年連続の出場となる三浦璃来選手と木原龍一選手、“りくりゅう”の愛称で呼ばれる2人だ。

2人は昨シーズン、NHK杯を含むグランプリシリーズの2大会で表彰台に上がると、北京オリンピックでは日本勢として過去最高の7位。

3月の世界選手権では銀メダルを獲得して、日本選手どうしのペアで初めて表彰台に上がった。

結成から4年目を迎える今シーズンはグランプリシリーズ第2戦のカナダ大会で、日本選手どうしのペアとしてグランプリシリーズを初制覇した。

NHK杯に向けた会見に練習拠点のカナダからビデオメッセージを寄せた2人の表情は明るかった。

 

グランプリシリーズカナダ大会で演技終了後、観客の声援に応える(10月)

三浦選手

ショートプログラムは曲が後半につれてどんどん盛り上がっていく。そこのフットワークを見て欲しい。またフリーでは真ん中にあるコレオシークエンスが見どころ。

木原選手

北京オリンピックを経験できて世界で戦える自信がついた。その自信がスケートにも表れている。

自信を深めた“りくりゅう”ペアがNHK杯でどんな演技を見せてくれるのか期待は高まる。

アイスダンス 日本から2組のカップルが出場

かなだい2人で描く“オペラ座の怪人”に注目

アイスダンスは結成から3シーズン目に入った村元哉中選手と高橋大輔選手のカップルの演技に注目だ。

昨シーズンは日本の歴代最高得点を更新し、1月の四大陸選手権では銀メダルを獲得。

3月の世界選手権に初出場を果たすなど着実にその足元を確かめながら進んできた。

そして5月、カップルを継続することを正式に表明した。

 

グランプリシリーズアメリカ大会の公式練習で調整する村元選手と高橋選手(10月)

高橋選手

続行に関してはほとんど僕の意見次第といった部分が大きかった。マリーナ(コーチ)もかなちゃんも続けていきたいという感じはしていた。ただ僕としてはとりあえず2年間という形でスタートしてそのままの流れであんまりいきたくなかった。でも去年辞めていたら、すごい中途半端だったかなという感覚が大きい。

村元選手

もう1年やり続けるというのを聞けて、ほっとしたというか、ただただ素直にうれしかった。

いま2人はこれまでより一層、正確さや丁寧さを追求していると語る。

前半のリズムダンスの今シーズンの課題は”ラテン”。

“かなだい”ならではの速いステップは見どころの1つだ。

村元選手

マリーナコーチが「かなと大輔にしかこういう速さのプログラムは出来ないよ」っていうぐらいすごく速いステップ。「ステップで音を奏でる、そういうことはかなと大輔にしかできないよ」とコーチに言われているので、それが持ち味だと思う。

フリーダンスは「オペラ座の怪人」。

高橋選手にとってはシングル時代、初出場のトリノオリンピック後に扱った思い入れの深いプログラムだ。

しかし今回は村元選手がみずから音楽を編集するなどシングルとは全く別物の2人の作品として仕上がっている。

村元選手

もちろんだいちゃんのシングルのオペラ座の怪人のプログラムも大好きなプログラム。でも全くの別物。アイスダンスは別物にしたいなというのもあったので、自分がだいちゃんと一緒に滑っているのを想像できるように編集していった。

高橋選手

俺はファントム。ファントムなんです、自分は。出てくるとかじゃなくてファントムなんですっていうぐらいあまり考えていない。本当に曲が好きすぎて。

2人の目標は全日本選手権での優勝と来年3月にさいたま市で開かれる世界選手権への出場だ。

目標達成のためにもNHK杯は重要な大会になる。

高橋選手

ちょっとずつ進化していければいいな。1回1回の試合で100%の結果を求めるんじゃなくて、何に一番フォーカスするかというところを大事にしながら、結果にとらわれず自分たちの今できるベストをやっていって自信をつけていけば、いい流れで最終的に進んでいけるんじゃないかな。

小松原美里・ティム コレト 北京大会の悔しさを糧に

NHK杯に3年連続の出場となる小松原美里選手とティム コレト選手のカップル。

夫婦でもある2人は初のオリンピックの舞台となった北京大会で日本の団体銅メダル獲得に貢献した。

しかしその一方で個人戦では後半のフリーダンスに進めなかった。

小松原選手

自分たちの結果に関してはものすごく悔しかったので、じゃあそこから続けるっていう意味は、上手くなりたいからということ。言い換えると上手くならないとやっている意味がないと思った。

厳しい表情でそう語った小松原選手。北京大会の悔しさが新たな原動力となっている。

今シーズンに向けて小松原選手はその髪をオレンジ色に染めた。

フリーダンスのプログラム、SF映画「フィフス・エレメント」のヒロインを演じるためだ。

 

グランプリシリーズカナダ大会でのフリーダンス(10月)

小松原選手

先生が私たちが得意なものは何かって考えて下さった時にすごく楽しいプログラムをするのが得意だと。実は3年前、けがをしたシーズンにアップテンポな曲を踊っていて完成まで持っていけなかった。それならばことしはそこにまた挑んでみようって。後半ちょっとアップテンポで、これまでしたことのない動きをしている。

2019年に札幌市で開催されたNHK杯はけがの影響で出場がかなわなかった。

今度は思う存分に自分たちの実力を発揮するつもりだ。

ティム コレト選手

もっともっと上手くなりたいという思いがなかったら競技を続ける意味がないということに自分の中で気づいた。今から4年後に向けて頑張りたいと思っている。もっともっと踊りたいという気持ちが強い。

この記事を書いた人

今野 朋寿 記者

今野 朋寿 記者

平成23年 NHK入局
岡山局、大阪局を経てスポーツニュース部。一児の父として、子育てにも奮闘中

関連キーワード

フィギュアスケート NHK杯フィギュア

関連特集記事