特集 ウルフアロン 柔道講道館杯に再起をかけて挑む

柔道のオリンピック金メダリスト、ウルフアロンが1年3か月ぶりに実戦復帰する。
けがや新型コロナウイルスで思うように柔道ができない時期を経験し、再起を懸けて講道館杯に臨むウルフの思いは。
けがとコロナで翻弄された日々
去年の東京オリンピック。
男子100キロ級で日本選手としてシドニー大会の井上康生さん以来、ウルフは5大会ぶりの金メダルを獲得した。
東京オリンピック柔道100キロ級決勝で韓国の選手に勝って金メダルを獲得した
豪快な技で華々しい結果を残した姿からは予想できないほどその後は苦しい時期が続いた。
ことし4月の全日本選抜体重別選手権は右足首のけがで欠場。
世界選手権の代表の座もライバルに譲った。
過去の実績を評価され、8月のアジア選手権では代表に選ばれたものの、今度は新型コロナウイルスの感染が判明。
欠場を余儀なくされ、実戦から遠ざかる日々が続いた。
ウルフ選手
1年以上実戦から離れていて、パリオリンピックを2年後に控えた中で、まだ実戦に復帰していないところで少し焦りみたいなものもあります。
オリンピック後、初の実戦となる講道館杯。
オリンピックチャンピオンとして、世界に打って出ようとする国内トップクラスの選手たちを迎え撃つ。
ウルフ選手
ぼくと戦う選手はすべてをかけてやってくると思っているんで、緊張するというよりは楽しみなところはありますね。試合での実力がどういうものかを今回の大会を通じて確かめることができたらと思います。
徹底して自分と向き合う
大会を2週間後に控えた追い込みの時期。
ウルフは自衛隊体育学校に出稽古に訪れた。
練習を始めるまでは穏やかな表情だったが、畳の上に立つと表情が変わる。
去年の世界選手権で100キロを超えるクラスを制した影浦心などを相手に乱取りで鋭い技を見せていた。
26歳のウルフが大会に向けてもっとも警戒するのは「けが」。
不用意なけがのリスクを減らすことを常に意識し、稽古での乱取りもあえて本数を抑えることもある。
ウルフ選手
若手の選手ではなくなっている。これから先いちばん怖いのは大きなけがなので、激しい練習をした後はしっかりとケアをしてできるだけ長く戦えるように努めていきたい。
さらに実戦から遠ざかっていた間に変更されたルールに対応するため、組み手を繰り返し確認していた。
ウルフ選手
ルールが新しくなって組み手の切り方次第で指導をもらう可能性が高くなっているのかなと思うので練習の中で詰めていきたい。どういうふうに組み手をするのか、考えながらやっていく。
勝つことに執着したい
体と向き合いながら冷静に調整を進めてきたウルフ。
講道館杯をパリオリンピックへのスタートラインと捉え、優勝だけを見据えて挑む。
ウルフ選手
オリンピックチャンピオンとして鮮やかに勝つというよりは、確実に勝つ柔道を見せられたらと思います。勝つことに執着して試合をする。勝ったのちに自分自身がどうだったのかを見つめ直して次につなげていければいい。
ここからは、こぼれ話。
ウルフは料理上手で知られる。
東京オリンピックの際は自炊で体重管理を行っていたが、講道館杯に向けても体重が減りやすい体作りを心がけてきたという。
みずからさばいた刺身
魚をさばくのも得意だが、最近、お気に入りのメニューは…。
ウルフ選手
ハマっているのは鶏肉ときのこを薄めの鶏ガラスープで煮る。そこに玄米を加えて『おじや』みたいな感じにして。栄養はとるけど無駄なものはとらないようにしています。
この記事を書いた人

舟木 卓也 記者
平成25年NHK入局。令和2年秋からスポーツニュース部。
プロ野球(ロッテ)担当を経て、現在は大相撲や柔道など格闘技担当。