特集 やくみつるさん 大相撲九州場所を展望「年間6場所すべてで違う力士の優勝」となるのか?
11月13日に初日を迎える大相撲九州場所の見どころを、好角家で知られる漫画家のやくみつるさんに語ってもらいました。やくさんは以前から、ことし令和4年は年間6場所の優勝力士が全部異なる「戦国の1年」になると予想していましたが、初場所が御嶽海で春場所が若隆景、夏場所が照ノ富士、名古屋場所が逸ノ城、秋場所が玉鷲と、ここまですべて違う力士が優勝しています。さて九州場所はどうなるでしょうか。
熊本出身の大関正代が心配
私が前から言っている「ことしは6場所すべてで優勝力士が違う」という予想。
いよいよあと1場所となりました。
ことしまだ優勝していない力士で九州場所の優勝候補は貴景勝か高安か。
はたまた豊昇龍か霧馬山、琴ノ若かといくらでも候補がいます。
乱戦の1年を象徴するような結末にしてもらいたいもんだなとワクワクしています。
九州が地元の正代(熊本県出身)が優勝しても予想は達成されるわけですが、まあそう考えるのはよほど奇特な人でしょう。
名古屋場所では白鵬の助言によって覚醒したようなことを言っていて、秋場所は初日に勝ったので「おおっ」と思いましたけれども、あとは負けっぱなしでした。
大転換を図らないと、むしろいつまでもつのかと心配したほうが現実的です。
向こう1年の間に大関の顔ぶれががらっと入れ替わってしまうんじゃないかなというぐらい、下との実力差はなくなってきています。
今回は御嶽海が陥落して、連鎖になっていかなければいいなと思うんですが。
正代の相撲で言えば「頼むからもっとかがめ」っていうところですよね。
スキージャンプのスーツは前傾する姿勢に矯正されるような形になっているそうです。
正代はそういうスーツをずっと着ていたらどうかと思います。
もちろん本場所の土俵は脱ぎますが、この「後傾姿勢矯正スーツ」のネタは漫画にしてもいいですね。
もっと前かがみで相撲取ってくれよと思います。
正代(31歳)と御嶽海(29歳)はまだ老け込む年齢ではありません。
正代はどこか悪くてそれが集中力を削いでいるのかなとは想像します。
でも出ているからにはあの秋場所の相撲はないだろうと思います。
九州場所では正代は大関を守るために8勝、御嶽海は大関に戻るために10勝を挙げることが必要ですが、低いハードルではないと思います。
どれだけ修正できるんだろう。
前頭の上のほうで渋滞していた実力者が番付を上げ、平幕にはまだ高安がいて琴ノ若がいて宇良もいてということですから、正代も御嶽海もしんどいことになると思いますね。
琴ノ若 霧馬山に大関への期待
琴ノ若には期待をしています。
秋場所は出だしの感じから見ると優勝争いに割って入るかなとも思いました(結果は8勝7敗)。
大関あたりにはもう普通に勝ちますから相当強くなっています。
次期大関候補争いに関して筆頭は若隆景で揺るぎませんが、その次を狙う霧馬山や豊昇龍といった現三役陣に琴ノ若が割って入ってきそうです。
霧馬山は立ち合いから突っ込んでいった時に”はまる”とすさまじい勝ち方をします。
あっけなく負ける相撲は少ないですし、そうこうしているうちにコンスタントに勝っていくようになるんだろうと思います。
豊昇龍と琴ノ若はいずれ大関に上がると思っていますが、霧馬山はここで”善戦マン”で終わるのか実力者になるかはこれからの1年間が境目になりますね。
小兵力士は面白い!
九州場所で新三役の翔猿は見ていて凡戦がありません。
小さいと言われた翔猿や宇良は体が大きくなって、今や小兵でも何でもない感じになっていますが、この2人が三役・横綱大関と対戦すると必ず好取組になります。
このグループには本当に小兵の翠富士もいて幕内力士はなかなか面白い構成になっていると思います。
翠富士は得意の肩透かしがありますが、ときどきタタタと前に走っていくことがあります。
さっそうとしていて面白いですね。
”けなげ”に相撲を取る熱海富士にも注目
新入幕の熱海富士は楽しみです。
お相撲さん然としているのがね。
私の妻は熱海富士のお面を買ってきて居間に飾っています。
気付かないでいてパッと顔を上げると、そこに熱海富士がいるんですよ。
北の湖が上がってきた時の、何か子ども子どもしているけれどもデカいのがきたと思ったころをほうふつとさせますね。
北の湖ほどのふてぶてしさはなくて、何か”けなげ”に相撲を取っているという感じが面白いですね。
王鵬は秋場所の前半の取組を見ていると優勝争いに食い込んでいくかと思っていたんですが、11日目から千秋楽まで5連敗して負け越してしまいました。
なりは祖父の元横綱大鵬で、ときどきおやじ(元関脇貴闘力)ばりの突っ張りを見せることもあるんで、気迫を見せればそう負ける素材でもないと思うんですがね。
不思議ですが、ここが最高位で終わるような人でないことは自明ですから。
相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から