特集 ソフトバンク 周東佑京選手 リーグNo.1の得点力でCSに臨む

ソフトバンクは優勝へのマジックナンバーを1としながら、ラスト2連敗で2位に終わり2年ぶりの優勝を果たせなかった。
クライマックスシリーズのキーマンとなるのが周東佑京選手だ。
周東選手は2年前のパ・リーグ盗塁王。
13試合連続盗塁のプロ野球記録を持つ球界屈指のいだてんだ。
プレーで痛めた右肩を去年秋に手術し、ことし5月に1軍復帰。
攻守にわたりチームを支えた。
周東選手の”得点力”がすごかった
今シーズンのソフトバンクの個人打撃成績を見て気がついたことがあった。
周東選手は80試合に出場し48得点。
「得点」とは出塁してホームにかえってくることだ。
ソフトバンクで見ると得点が多いのは柳田悠岐選手(117試合、63得点)、三森大貴選手(102試合、58得点)、今宮健太選手(130試合、56得点)。
周東選手の得点はこれに次ぐ4番目。
出場試合数が少ないことを勘案すると、極めて優秀な成績だ。
ホームに生還した周東選手(2022年7月9日の日本ハム戦)
周東選手の1試合あたりの得点は48÷80=0.6。
この数字がどれほどなのか調べて見た。
今シーズン、パ・リーグで得点をあげた選手は163人。
このうち上位の選手の1試合あたりの平均得点はどのようになっているのか。
周東選手がトップの数字だったのだ。
(ちなみにセ・リーグ三冠王の村上宗隆選手は141試合で114得点。1試合平均0.80得点)
2022年 パ・リーグ 1試合あたりの平均得点で上位8人の選手
周東選手はいわば得点力がリーグトップのプレーヤーということがいえる。
さらに特筆すべきは周東選手が得点した試合のチームの勝率は6割9分4厘。
シーズンを通してのチームの勝率が5割3分9厘なので、周東選手が得点すると勝率が跳ね上がっていることがわかる。
得点力が高いことについて本人はどう考えているのか。
周東選手
塁に出て得点できれば勝てる。自分のやることはよりシンプルになる。まずは塁に出ることだけを考えている。それが先制点や決勝点につながれば一番いい。
”打撃職人”による指導で得たものは?
足が速いので、ホームにかえる確率が高いのは間違いないのだが、今シーズンの周東選手で見逃せないのが、打撃のパワーアップ。
チームは今シーズン、サヨナラ勝ちを2回しているが、いずれも周東選手のサヨナラホームランによるものだ。
サヨナラホームランを打ち、チームメートの祝福を受けた(2022年6月18日の楽天戦)
今シーズンはけがのリハビリ期間中に体作りを進め、体重を大幅に増やした。
得意としてきたセーフティーバントなどの小技のうまさに、サヨナラホームランに象徴される力強さが加わった。
去年現役を引退した長谷川勇也打撃コーチのアドバイスが大きかったようだ。
長谷川コーチは平成25年に首位打者と最多安打のタイトルを獲得した「打撃職人」だ。
長谷川打撃コーチとのバッティング練習
長谷川打撃コーチ
僕が現役時代に見ていても周東はいいバッティングをするという感じがしていた。よくなったというより、もともとこれ位できるバッティングは持っていた。ただいろいろと考えすぎて試行錯誤していく中で、上体への意識がすごく強くなっていると思った。スイングする時、ボールに対して手をすごく意識してしまう。でもそうではなくて、下半身をしっかり使えば上の動きはある程度決まった動きになってくる。下半身に意識を置いて手元や上体への意識を薄れさせる、やること減らす、そういうアプローチをした。
周東選手
打席の中であれこれ考えすぎないこと。気持ちの面で落ち着くことが一番と思う。長谷川コーチといろいろ話し合って、その日その日でいいフォーム、こうしたらきょう1日いけると話し合っている。手の力を抜いて体に力が入りすぎないようにとよく言ってもらっている。
手元ではなく下半身に意識を置くことで力強く安定した打撃が可能になった。
また球種をストレートに絞ってはじきかえす意識が功を奏しているという。
今シーズン、ストレートを捉えてのヒットが半分以上を占め、球種別の打率をみるとストレートは3割3分を超えている。
さらにホームラン5本のうち、サヨナラホームラン2本を含む4本がストレートを捉えたものだった。
周東選手
自分は変化球を狙って打てるバッターではない。基本的にストレートを待っている。変化球が来たとしてもまっすぐを狙った中で変化球に対応する。ことしはそれができている。速いまっすぐをどう打つか、どう打ち返せるかを考えながらやっている。
最後に力を出せなかった悔しさを糧に
ソフトバンクは優勝へのマジックナンバーを「1」とした最後の2試合、西武とロッテに連敗し優勝を逃した。
今シーズンは新型コロナやけがで選手の離脱が相次ぎ、厳しい戦いではあった。
しかし藤本博史監督のもと苦境を乗り越えてきた。
そのご褒美を信じていた記者はことばを失った。
首脳陣や選手たちの悔しさは想像を絶することだろう。
周東選手もそのひとり。
しかもラスト試合で、得点はおろか出塁すらできなかった。
レギュラーシーズン終了後に聞いた。
周東選手
ふだんの試合よりも緊張した。現状、技術的にも精神的にもそこまでなのかと思った。ああいう場で自分の力が出せない弱さをすごく感じた。一番最後に本当に悔しい思いをした。この悔しさをしっかり晴らせるように1試合1試合戦って、勝ち進んでいきたい。
長谷川打撃コーチ
佑京が塁に出るだけで攻撃に勢いが生まれるとすごく感じる。塁に出ることで相手にプレッシャーをかけることもできる。僕らからしても塁に出ると『よっしゃ、行ける!』という気持ちになる。彼が数多く出塁することが、チームの勝利に直結すると思う。
周東選手にとって、けがで出遅れ最後は本来のプレーを見せることができないレギュラーシーズンだった。
ただ挽回する機会が残されている。
まずはクライマックスシリーズ突破へ、彼ならではの活躍を期待したい。