特集 西武のエース・高橋光成投手 初のCSへ 引退するベテランのことばを胸に

リーグ戦を3位で終え、ソフトバンクとのクライマックスシリーズに臨む西武。キーマンは初戦の先発を託されたエースの高橋光成投手です。
今シーズンの防御率は2.20。リーグ2位となる12勝をあげ、去年の成績(防御率3.78、11勝)から大きく改善しました。
その成長を支えたのがコントロールの向上です。持ち味の力のあるまっすぐとフォークボールに加え、今シーズンはスライダーのコントロールの精度が高まったことで、多彩な球種をバッターのインコースへ投げられるようになりました。その結果、バッターに的を絞らせないピッチングができたといいます。
やっぱり内に突っ込むと、バッターは詰まるのが嫌だと思うので、そこをどんどんいくとバッターも踏み込めなくなって外が遠くなる。そこからスライダーを曲げたりフォークで落としたりまた内にいったりと何でもできるので、そこはすごい自分にとって大きい。
コントロール改善の背景には
コントロールが良くなったのはなぜか?高橋投手があげたのが体幹を鍛えながら柔軟性を高める「ピラティス」をトレーニングに加えたことです。
体の細かい部分を使いこなす感覚を高めるためにことし1年間続けてきたといいます。
高橋投手がトレーニングに加えた「ピラティス」
けがをしないで長いイニング、1年間投げられた要因でもあるし、ボールは裏切らないので、そういう地道な作業をやって来たからこそちょっとずつ、成果として出てきたのではないか。
さらに今シーズン印象的だったのがピンチでも最少失点でしのぎ、大崩れしない姿です。
それを支えたのはメンタル面での変化でした。
何が起こっても試合中はポジティブに考えて、フォアボールを出してもゲッツーで流れを持ってこようとか、ホームランを打たれてしまった時はもう全然気にならず、ここから立て直したほうが格好よくないかみたいな、そういうポジティブシンキングに変えたのが要因かと思う。
引退する先輩のことばが力に
西武は終盤、激しい上位争いを繰り広げました。
エースとしての重圧がかかる中、金言となったのは、かつて巨人でエースとして活躍し、今シーズンで引退する先輩の内海哲也投手からのアドバイスでした。
引退セレモニーであいさつする内海投手(2022年9月19日)
優勝できるかできないか、クライマックスシリーズにいけるかいけないかの試合で、自分自身すごく気負ってしまったときに内海さんに相談して、「それは自分で打破するしかないし、それに立ち向かう覚悟を持たないといけない」ということばをもらった。内海さんもこういう経験をして自分でどんどん乗り越えてきたのだと思って、やっぱり自分も自分自身で乗り越えるしかないと思ったときに何か吹っ切れてそこからすごくよくなった。すごく感謝している。
内海投手からアドバイスをもらった次の登板。高橋投手は新たな手応えをつかみました。チームが7連敗を喫し一時は首位だった順位が4位まで後退して迎えた9月20日の3位・楽天との一戦。そこで高橋投手は今シーズン最多の130球を投げて8回1失点の力投。チームの連敗を止めエースとして申し分ないピッチングを見せました。
なかでも8回ツーアウトで楽天の主軸、島内宏明選手と対決した場面。すでに球数は120球を超えていましたが、この試合最速の152キロをマークしました。
大事な試合で8回1失点の力投、エースとしての存在感を見せた(2022年9月20日の楽天戦)
自分の中でも一皮むけるぞという気持ちで試合に入って、そこでいい投球ができたというのはすごく自信につながった。あそこでもう1個がっとギアが上がったのは今までにない感覚だった。
シーズン終盤の好調の裏には生活面での新たな取り組みもありました。
実はことし8月ごろにみずからのスマートフォンを手放したといいます。
携帯を見すぎているなと思って、その時間を減らしたら何かもっと有意義な時間の使いかたができるんじゃないかと思ったのがきっかけ。気持ちと脳をリセットしなければいけないと思うので、やっぱり携帯を見ているといらないことを調べて、ネガティブな情報ばかり入ってくるので携帯がなければ入ってこないと思った。そしたら、また次の試合をスムーズに迎えられてちゃんとリセットした状態で試合に入れたと思う。
心身ともに充実した状態で迎えるクライマックスシリーズは意外にも今回が初の登板。目指すのは3位からの日本一です。
誰が来ても自分がやることは変わらない。やっぱり0でベンチに返ってくる。その積み重ねだと思うので本当に楽しみ。失うものはないと思うので、本当に挑戦者の気持ちで、僕自身も初めての登板ということで、自分がどこまでできるか、どんな自分が出てくるのかというのをすごい楽しみにしているし、絶対日本一になりたい。