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特集 村上宗隆選手のホームラン数に大リーグの担当記者が注目!

野球 2022年10月5日(水) 午後6:41

ヤクルトの村上宗隆選手がレギュラーシーズン最終戦で56号ホームランを打ち、日本選手のシーズン最多記録を更新しました。そしてセ・リーグの首位打者、ホームラン王、打点王の3つのタイトルを獲得して、22歳の史上最年少で令和で初となる三冠王にも輝きました。その圧倒的な成績にアメリカからも熱い視線が注がれています。大リーグ取材歴17年のジョン・ポール・モロシ記者にサンデースポーツの中川安奈キャスターが聞きました。

村上選手の活躍は驚異的

モロシ記者は村上選手が54号、55号のホームランを打った9月13日、大リーグの公式サイトに村上選手のホームラン記録を紹介する記事をいち早く公開していました。なぜ、村上選手のホームランに注目したのでしょうか?

 

中川キャスターがモロシ記者にリモートでインタビュー

中川キャスター
大リーグの公式サイトにかなり早く記事をアップしていましたね。前もって記事を用意していたのでしょうか?

 

モロシ記者
答えはイエスです。私たちは何日も前からあの記事に取り組んでいました。私が記事を提出したのは彼が54号を打つ前でしたが、その数字はすぐに更新されるであろうことはわかっていました。その予想通り、直後に彼が立て続けに54号と55号を打ったのです。偉大な王貞治さんの記録に並ぶ(取材当時)という意味で55号という数字の重要さは分かっていましたから、編集者たちと話をして、すぐに彼の功績を反映できるよう記事の数字を更新しました。

 

モロシ記者が村上選手の活躍を紹介した記事(2022年9月13日公開)

私たちは日本の野球を心からリスペクトしています。いちはやく記事をアップしたのは、私たちが日本の野球に敬意を持っていることを日本のファンの方々に知ってもらいたかったからです。また私は村上選手が55号を打つ数日前にヤクルトのチームメートであるパトリック・キブレハン選手とサイ・スニード投手に話を聞くこともできました。彼らは「村上選手は模範的なチームメートだ」と言っていました。

 

56号ホームランを打ち、日本選手のシーズン最多を更新(2022年10月3日)

中川キャスター
記事では、村上選手が日本のファンなどから「村神」と言われていることも触れられていましたね。

 

モロシ記者
「神」という漢字が使われていることは、彼の現在の実績に対する正当な評価だと思います。活躍ぶりは驚異的ですからね。そして彼の伝説は今後さらに大きくなるでしょう。まだとても若く才能があり、おまけに非常に謙虚ですからね。

 

中川キャスター
村上選手の存在を知ったのはいつですか?

 

モロシ記者
深く知るようになったのはことしです。ヤクルトが去年優勝したことはもちろん知っていましたし彼の名前も以前から聞いていました。ことし彼が王貞治さんの記録に近づくにつれ、どれだけ素晴らしい選手なのかを実感するようになりました。大リーグでは今シーズン、アーロン・ジャッジ選手がアメリカン・リーグのホームラン記録に迫っています(取材当時)。また、アルバート・プーホールズ選手の700号ホームランも話題です。日本とアメリカの両方で、ホームランの記録が話題になっているというのは素晴らしいことですよね。

 

 

中川キャスター
村上選手の長所はどこだと思いますか?

 

モロシ記者
彼とプレーしてきた人や日本野球を長く取材している人に聞いた話から判断をすれば、彼の強みはストライクゾーンを非常によく把握しているという点でしょう。ボールの見極めがすばらしく、徹底して打てるボールしか振らないという点です。打席の状況を理解する知性や自分が設定したストライクゾーンから外れたボールを振らない能力は驚異的です。

松井秀喜さんのようなインパクトを与えられる選手になれる!

中川キャスター
大リーグで村上選手を見たいと思いますか?

 

モロシ記者
それについては選手本人の判断が大切ですね。「生涯日本のプロ野球一筋」というのも、それはすばらしい選択だと思います。ただ村上選手本人がそれを望むなら、もちろん見たいです。私たちは大リーグという道を選ぶ選手を常に感謝しています。彼らは非常に才能があり、野球に対して誠実で、いつだってアメリカの野球を高めてくれるのです。

 

ジョン・ポール・モロシ記者

中川キャスター
もし村上選手が大リーグ入りしたら活躍できるでしょうか?

 

モロシ記者
できると思います。彼の大リーグでのキャリアは松井秀喜さんに匹敵するものになるでしょう。長打を狙え、頼れるバッターという点で2人はとても似ていると思います。いまや大リーグの多くのチームは日本選手にどのような手助けをしたらいいのか、どうしたら心地よくなるかについて非常に豊富な知識を持っています。鈴木誠也選手はカブスでの大リーグ1年目、非常にいいシーズンを送っています。けがもありましたが、トータルで見れば素晴らしい才能を見せてくれたと思います。村上選手はただちに大きなインパクトを与える選手になるという意味で松井さんや鈴木選手の部類に入ると思います。そして機が熟せば、世界有数の選手たちと互角に戦えることを証明するでしょう。

 

モロシ記者は村上選手と松井秀喜選手(2005年撮影)の類似点を指摘する

WBCはアメリカでもスターになるチャンス

中川キャスター
アメリカでは今、村上選手はどれくらい知られているのでしょうか?

 

モロシ記者
どんどん有名になっていると思いたいですね。アメリカのファンの誰もが口にするのは、ジャッジ、プーホールズ、そしてショウヘイ・オオタニ。この3人です。彼らのように村上選手の名もアメリカで知れ渡ってほしいです。来年春に予定されているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はアメリカのファンの間でもスターになれる絶好のチャンスでしょう。かつての松坂大輔さんやダルビッシュ有投手を思い出します。彼らのWBCでの活躍にアメリカのファンは圧倒されたのです。「彼らが大リーグでプレーする日が待ち遠しい」と。そういった意味で、WBCはとても特別なイベントだと思います。来年は、ぜひ村上選手に直接会って取材したいですね。

 

中川キャスター
あなたの周りの記者たちは村上選手について知っていますか?

 

 

モロシ記者
海外特派員など日本野球に詳しい記者はもちろん知っています。また松井さんやイチローさんが大リーグに来た時代と比べて大きく変わったのがSNSの出現です。私たち記者は村上選手のホームランの動画やそれに対するファンの反応をSNSで見ることができます。村上選手に対する記者の認知度は20年前の松井さんやイチローさんと比較して高いでしょう。

 

中川キャスター
村上選手は今シーズン何本のホームランを打つと予想していますか?

 

モロシ記者
願わくば、61本!日本記録であるバレンティンの60本を超えれば、それは彼にとって特別な数字になるでしょう。とても厳しいであろうことは分かっていますが、そうなると信じています。61本に届いたら、また記事を書きたいですね。

ジョン・ポール・モロシ記者

大リーグ公式メディア「MLBネットワーク」記者。2005年から大リーグを取材。2017年春に日本ハム時代の大谷翔平選手にインタビューして以来、現在までの活躍を追えたことは「私のキャリアにとって特別なこと」と語る。1982年5月17日生まれの40歳。

 

 

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