特集 中村 憲剛がサッカー日本代表・森保 一監督を再直撃「カギはビルドアップ」

中村憲剛“博士”が「日本サッカー強化論」を研究する“Kengoʼs Lab”
9月18日放送回は、「中村憲剛VS森保一」第2ラウンド。
今年4月の対談に続き、ワールドカップまであと2か月、どのような策を練っているのか。
森保監督に中村憲剛さんが直撃した。
チームのギアをもう一段上げるため、フォーカスすべきポイントとは
憲剛さん
4月にお話しさせて頂いた時に、ワールドカップへ向けての日本の戦い方。自分たちが主体的に積極的に戦いたいというふうに森保監督がおっしゃっていましたが、その考え方に変化は生じてますか。
森保監督
全く変わりはないですね。ただ、「主体的に」っていうとボールを握って相手を圧倒する、上回っていくっていうことだけをイメージされるかもしれないですけど、世界の舞台で相手を圧倒する戦いがどれだけできるかと言えばそんな簡単なことではないと思いますし、苦しい戦いになったとしても自分たちが崩れることなく、主体的に考えて戦うということはやっていきたいなと。
Kengoʼs分析
劣勢に立たされた時こそ主体的に戦う。森保監督の言葉には矛盾があるようにも聞こえます。 この言葉を理解するには、ワールドカップでの苦い敗戦の歴史を踏まえる必要があるのです。
2006年ドイツW杯 オーストラリア戦
2006年ドイツ大会でのオーストラリア戦、1点リードしながら終盤立て続けに失点して逆転負け。
2014年ブラジルW杯コートジボワール戦 ドログバと競り合う長友と森重
2014年ブラジル大会でのコートジボワール戦。1点をリードしながら後半、エースのドログバを投入されると2分間で2失点。
2018年ロシアW杯 決勝トーナメント1回戦 日本×ベルギー
そして森保監督もコーチとして立ち会った2018年ロシア大会のベルギー戦。2点リードしながらも同点に追いつかれ、ラストワンプレーで敗れました。日本に必要なのは、劣勢に回ったとしても受け身にならず主体的にゲームをコントロールしていく強さなのではないか。
そこで僕がポイントになると思うのが、「ビルドアップ」。
後方からボールをつなぎ、チーム全体でボールを保持し、試合を組み立てていく技術です。
国際親善試合ブラジル戦 攻め込む堂安(2022年6月)
6月のブラジル戦、日本は世界ランキング1位の相手にロングボールに頼ってゴール前に運ぶのではなく後方から細かくパスをつなぐビルドアップを果敢に繰り返したのです。
チャレンジしたからこそ見えた事がある
憲剛さん
ビルドアップ、今の日本代表の生命線というか自分たちがボールを握るということに関していうと、ここが成立しないと、なかなかどの国相手にも戦えないポイントだとは思うのですが。すごく印象的だったのはやはりブラジル戦でした。ゴールキックをほぼほぼ蹴らずに何とかブラジルのプレスをはがそうとしていたように森保監督から指示はあったと思うんですけども、そこの意図は?
森保監督
出来るだけ自分たちがボールを握りながら、マイボールを大切にしながら攻めていくという事を選手たちにトライしてほしいということはブラジル戦でも話していて。ただ単純にボールを蹴ってもチャンスになることは確率的には低いと思いますし、相手に回収されれば我々が守備で振り回されなければいけないということになってしまう。結局は、押し込まれて疲弊して最後はやられてしまう。
Kengoʼs 解説
苦しい状況に追い込まれた時にも、ボールを保持しながら落ち着きを取り戻し、自分たちのペースに持ち込むためのビルドアップ。
これこそが残り2か月でチームのギアをもう一段上げるポイント。しかし、ドイツやスペインといった強豪相手に実践するのはリスクも伴います。
森保監督
6月の代表戦の時に、パラグアイ、ブラジル、ガーナと3試合で3失点してるんですけど、3失点とも全部ビルドアップ絡みなんですよ。ビルドアップでボールを奪われて、そこからカウンターで点をとられる。であっさりPKとられて3失点してるんですけど。
でも私は選手も良いトライをしてくれたなと。そこでまたミスが出てっていう部分はトライしたからこそ、チャレンジしたからこそ見えた事があって。ボールを動かす時にいいポジション取りが出来ていれば、恐らく防げたという失点であったと思うので、ワールドカップは(ボールを)握るという事はリスクもあるということ。そのリスク管理をしっかりできるようにしたいなと思います。
憲剛さん
長い時間ありがとうございました。森保監督。
森保さん
こちらこそありがとうございました。本当はもっと雑談したいぐらいだな。