特集 高安 休場の悔しさを忘れず、燃え尽きるまで

3敗どうしの一番を制し、優勝争いに踏みとどまったのは平幕の高安だった。
8連勝中の関脇・若隆景に対し、得意の突き押しで体を起こし最後は引き落とし。
ことし春場所には優勝決定戦で敗れるなど過去負け越していたが、大関経験者としての意地を見せた。
12日目 苦手にしていた若隆景を破った
トップの玉鷲が敗れて2敗に後退。
高安は星の差1つで残り3日を迎える。
後手にならないようにちゃんと取れた。きょうは集中できた。残りも気を引き締めていい相撲を見せたい。
今場所の原動力になっているのは先場所、新型コロナウイルスに感染した影響で休場を余儀なくされた悔しさだ。
名古屋場所の前、約2年ぶりに「出稽古」が解禁され、同じ部屋に十両以上の関取がいない高安は精力的に出稽古に励んだ。
出稽古で汗を流した高安
「調整は順調」と感じていた中で感染が発覚し無念の休場。
32歳の高安はその悔しさを次の秋場所にぶつけようと気持ちを切り替えた。
休場した悔しい気持ちを忘れないで取り組んできた。自分も現役生活はそんなに長くないので一生懸命、燃え尽きるまでやりたい。
療養期間中も相撲に時間を費やした。
体のケアやトレーニングに加え、名古屋場所の取組を毎日見た。
そして逸ノ城が新入幕から8年で初優勝を果たしたことに刺激を受けた。
優勝争いに何度も絡みながらいまだに賜杯を抱けずにいる高安。
「次は自分が」と胸に刻んだ。
秋場所の前も名古屋場所の前と同じく精力的に出稽古に出向いた。
伊勢ヶ濱部屋では横綱・照ノ富士に何度も胸を借りた。
充実した稽古を積み、自信を深めた。
秋場所の前には照ノ富士の胸を借りた
胸を借りるつもりで精いっぱい力を抜かないで持てる力を出し切った。千秋楽まで優勝を争ってまた上を目指してやりたい。
照ノ富士
圧力もあるしよく稽古している。大関に戻りたいと思ってやっていると思うので頑張ってほしい。
迎えた秋場所。
得意の突き押しが力を発揮している。
9日目には出稽古で胸を借りた照ノ富士に押し出しで勝ち約8年ぶりの金星をあげた。
9日目 照ノ富士に勝って約8年ぶりの金星
場所前の目標通り、混戦の優勝争いに加わっている高安。
八角理事長は優勝に向けたポイントについて「守りに入らない、気持ちで思い切っていくことだ」と指摘した。
休場した先場所の悔しさを悲願の初優勝で晴らせるか。
残り3日間の優勝争い、高安の土俵から目が離せない。
7日目 遠藤を力強く押し出した
せっぱ詰まるよりも落ち着いて相撲を取れるように。千秋楽まで気を引き締めて盛り上げたい
この記事を書いた人

足立 隆門 記者
平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。