特集 37歳の鉄人・玉鷲~突き押し貫く 1456回目の土俵~

「全然意識していない」
偉業にも37歳の鉄人・玉鷲は穏やかにこう話した。初土俵からの通算連続出場1456回、元関脇・貴闘力と並ぶ歴代3位の記録となった。
玉鷲は先場所、新型コロナウイルスの影響で13日目から途中休場を余儀なくされた。連続出場の記録が途切れるのではないか。
取材中に頭をよぎったが、みずからの意思による休場ではないとして平成16年から続く記録は継続の扱いとなった。
そして、今場所。玉鷲の相撲は目が覚めるような内容が続いた。
初日には新関脇・豊昇龍。2日目には関脇・大栄翔。4日目には大関・正代。立て続けに役力士を破り、調子のよさを見せた。
勝ちっぱなしで迎えた5日目。横綱・照ノ富士との結びの一番。ことし3つの金星を挙げ、「横綱キラー」ぶりを発揮していた玉鷲がまたやって見せた。
玉鷲は突いて横綱の上体を起こし最後は寄り切り。ことし4つ目の金星をあげた。
「本当にうれしい」
率直な思いを語りながらも相撲内容についてはさらなる高みを見ていた。
「内容としてはまだ脇が甘い。体はよく動くし、もっともっと前に出たい」
前日敗れ、1敗で迎えた中日・8日目は平幕・佐田の海との一番。過去4勝10敗と大きく負け越している相手だ。
「意識したけど、自分の相撲を取りたいと思った」と取組前の心境を振り返った玉鷲。
その思いのとおり、立ち合いから強烈な当たりを見せ、すかさず右ののど輪で攻めたてた。
突き押し相撲を持ち味とする玉鷲らしさが出た圧倒的な相撲内容。みずからも納得していたようだった。
「久しぶりに電車道だった。本当によかったと思う」
一横綱三大関がそろって敗れる日もあるなど波乱続きの今場所。
玉鷲は後半戦に向けて優勝争いへの意識はあるかと問われ、「そういう意識はしないよう1日1日、自分の相撲を取れればいいなと思う」
若々しい相撲を取り続ける鉄人・玉鷲。みずからの相撲を貫いて今場所をさらに盛り上げてくれることを期待したい。
この記事を書いた人

舟木 卓也 記者
平成25年NHK入局。令和2年秋からスポーツニュース部。
プロ野球(ロッテ)担当を経て、現在は大相撲や柔道など格闘技担当。