特集 新十両 金峰山 “強くなる” 元横綱のひと言で

「相撲を覚えれば強くなる」
元横綱・朝青龍から1人の若者にかけられたことば。若者はその後日本に渡り、カザフスタン出身の力士・金峰山として期待通りのスピード出世を見せている。そして秋場所、新十両として土俵に臨んでいる。
カザフスタン初の関取誕生
所属する木瀬部屋に取材に行くと、ひときわ存在感を見せる金峰山。
まだまげを結えずザンバラ髪。愛嬌あふれるキャラクターで兄弟子たちと笑顔でコミュニケーションを取る姿も印象的だ。
特に目をひくのが身長1メートル92センチ、体重172キロの恵まれた体。体格を生かした突っ張りを最も得意とする。
その圧力は兄弟子で幕内上位の宇良も「恐ろしい。稽古したくない」と舌を巻くほどだ。
幕下筆頭で迎えた7月の名古屋場所で6勝1敗の好成績を残し、初土俵から5場所というスピード出世で新十両に。
カザフスタン出身の力士として初の関取となった。
みんなにおめでとうと言ってもらえてうれしい。早く十両に上がりたいと思っていました。
関取となってここからだという感じもしています。
元横綱との出会いそして相撲へ
金峰山が相撲を始めたのは6年前。きっかけは元横綱・朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジさんとの出会いだ。
カザフスタンで柔道をやっていた金峰山。その様子を見に来た元横綱から「相撲を覚えれば強くなる」と声をかけられた。
もともと柔道を学びに日本に行きたいと考えていた金峰山。大相撲の世界で優勝25回の元横綱からかけられたひと言で気持ちが変わった。
カザフスタンで元横綱・朝青龍と撮影した写真(本人提供)
相撲で日本に行くとは思っていませんでしたが「よかったら相撲をすればいいんじゃないか。頑張ってほしい」と言われ、相撲をやりたいと思いました。
得意の突っ張りを磨く
期待通りに番付を上げてきた金峰山。新十両で迎える秋場所に向けて得意の突っ張りをさらに磨いてきた。そこには先場所の反省があった。
幕下優勝がかかった一番で唯一の黒星を喫したのだ。立ち合いは突っ張りではなく四つに組みにいった。
しかし相手に回り込まれてまわしを許し上手投げで敗れた。相手の番付が自分より低かったことで力を抜いてしまったと振り返る。
あと一歩で逃した幕下優勝。「自分の相撲は突っ張り」と深く再認識したという。稽古で意識してきたのは手と足を連動させ体全体を使うこと。
時間を見つけては鏡の前で繰り返し確認してきた。天性の素質に加えて意欲十分に稽古に取り組む金峰山。
このまま力をつければいずれ将来が見えてくると一歩一歩、歩みを進めている。
けがをしないようにまずは十両で勝ち越しを目指したいです。先の目標は考えていませんが、なんとかなると思っています。
この記事を書いた人

足立 隆門 記者
平成25年NHK入局。甲府局、山形局から地元の大阪局を経て、スポーツニュース部。30代半ばにして初の東京暮らし。