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特集 内村航平×水谷隼×須﨑優衣 東京五輪"1年後の告白” アスリートは何を感じていたのか?【前編】

体操 卓球 その他のスポーツ 2022年7月29日(金) 午後2:38

2021年7月、国立競技場の外では大会の中止や延期を求める声が渦巻いていた。競技場の中には観客の姿はなかった。異様な雰囲気の中で開催された東京オリンピック。あのとき、アスリートは何を感じていたのか。


内村航平さん水谷隼さん須﨑優衣選手。世代も立場も違う3人が、今回、アスリートを代表して初めて胸の内を明かします。

 

(2022年7月24日のサンデースポーツで放送した内容を再構成してお伝えします)

体操・内村航平さん

【オリンピック4大会連続出場/個人総合金メダル2連覇/ことし3月現役引退】

 

卓球・水谷隼さん

【リオデジャネイロオリンピック 日本卓球界初シングルスのメダル獲得(銅)/東京オリンピック混合ダブルス(金)試合後に引退の意向を表明】

 

レスリング・須﨑優衣選手

【東京オリンピック開会式旗手 ”東京世代”のホープ/女子50㎏級金メダル 全試合無失点】

 

 

異例の大会を表すキーワードを選び、どんな話をするかは自由です。トークセッション、スタート!

東京五輪×【4年+1年】

 

水谷隼さん
「(キーワードが)いろいろありますけど。須﨑さんどうですか?何かありますか」

 

 

須﨑優衣選手
「やっぱりオリンピックって4年に1回で、延期っていうことって今までなかったと思うんですよ。私の場合はまだ若いというのもありまして、正直びっくりしたしショックではあったんですけど、決まったことだから仕方ないから、絶対に早くプラスに変えた方が自分のためだなと思って、この1年でさらに強くなれるチャンスをいただけたと思って、さらに金メダルを獲得できる可能性を上げられるっていうふうにすぐに捉えて、また再出発したんですけど。お2人は年齢的なことも考えて、自分とはまた違った気持ちだったと思うんですけど、その心境をお聞きしたいです」

 

 

内村航平さん
「もうこれは早めに延期になるって自分の中で決めといた方が気持ちが楽なのかなと思って、自分の中ではもう3月の時点で(発表になる前の時点で)もうこれ間違いなく延期になるから、もう延期だっていうふうに決め込んで、ここから何やるかをまず決めてやっていこう、今まで6種目をやってて、そこからもうちょっと体的に限界だったから、鉄棒に絞って目指そうっていう形で、その延期になる前にちょっと決めてたっていう感じ」

 

 

水谷隼さん
「延期になった後も、中止になるんじゃないかみたいな話も多かったじゃないですか。そのときはどうでした? それこそ内村さんは、11月ぐらいに発言したのがあったじゃないですか。あれがすごくアスリートの中で、わあ、すごい勇気ある発言だなと思ったんですけど」

東京五輪×【声をあげる/あげない】

体操の国際大会閉会式であいさつする内村航平さん(2020年11月)

 2020年11月 国際大会演技後の内村さんの発言 

『日本の国民の皆さんがオリンピックができないんじゃないかっていう思いが、80%以上を超えているっていうのが非常に残念だというか、しょうがないのかなとも思うんですけど。できないじゃなくて、どうやったらできるかを皆さんで考えて、どうにかできるように。そういう方向に考えを変えてほしいなって僕は思います』

 

水谷隼さん
「ただそこに同調できないというか。そう思っていても、やっぱりみんなを敵に回すのが怖くて、見てるだけしかできない自分がいたりとかで。あれはどういった意図があって、ああいう発言をしたんですか?」

 

内村航平さん
「周りの大人にだけ任せて、実際出場するアスリートが何も発信しないのは、どうなんだろうっていう思いがあって。あと、オリンピックのことについて発言すると、アスリートが批判されるって風潮がすごい嫌で。誰も声をあげられないっていうのをちょっと打破したかったっていうのがあって。その後に続いてほしいっていう思いっていうよりは、アスリートが言えないっていう状況が嫌だなっていうので、もう自分がいくしかないみたいな感じで言いました。けど、どう思った? あれを聞いて」

 

 

水谷隼さん
「いやでも、すごいなとまず率直に思ったんですよね。やっぱりあの風潮の中で、みんなが何も言えない状況の中で、内村さんが声をあげてくださって。しかも、やっぱり内村さんって、もうアスリートの中でほんとにトップのトップの方だから、そんな内村さんがああいう発言をして、でも言った後ってやっぱりすごい反論というか、なんでそういうこと言うんだよみたいなことがあったと思うんですね。内村さんが言ってダメだったら、自分なんかが言ってもダメだなっていうふうにはちょっと思っちゃいましたね。どうでした?」

 

 

須﨑優衣選手
「やっぱり勇気ある発言で、自分もオリンピックに対して何も言えなかったので。でもアスリートは、正直みんな内村さんと一緒の思いだったと思うんですよ。私ももちろんそうでしたし。その中でほんとにどれくらいの勇気を持って、ああやって言えたのかなって思いましたし、やっぱり自分もいつか、内村さんくらいのレベルのアスリートになったときに、そういう勇気ある発言をできるような人になりたいなって思いました」

 

内村航平さん
「自分たちアスリートとして、命をかけてオリンピックを目指してるわけだし。そこはほんとに、批判されても言うべきかなっていうのはあったかな」

 

水谷隼さん
「でもあの発言の後に、他のアスリートがその件についてほとんど触れてないと思うんですよね。それはやはり悲しかったですか」

 

 

内村航平さん
「いや、悲しくはなかったね。もちろん、まあそれは言えないよねっていう。言わないのが得策だよねって思ったけど。俺は言って後悔はなかったし。でも、言って後悔はなかったけど、言わなくてもよかったなっていうのはちょっと・・・」

 

水谷隼さん
「今だから言える本音みたいなところはあるんですかね」

 

内村航平さん
「ちょっとあったかな。でもオリンピックの結果が伴わなかったから、そこはちょっと力不足だったなっていう」

東京五輪×【批判】

国立競技場前でプラカードを掲げオリンピック開催に反対する人たち(2021年7月)

須﨑優衣選手
「SNSとかテレビとかしか見てなかったので、やっぱり中止だとか、なんでやるんだとか批判の声ばっかりで、正直もうSNS見るのやめてたんですよ。ネガティブになっちゃうっていうか。こんなに応援してもらえないオリンピックなのかなって思って、自分の中でも悲しくなってきて、見ないようにしてて」

 

内村航平さん
「批判がすごすぎて、試合始まる前日まで、これ明日ほんとにあるのかなみたいな感じで。自分はちょっとそんな感じだったかな」

 

 

水谷隼さん
「ふだんだったらやっぱり、いろんな人の支えがあって頑張るじゃないですか。その中にもちろんファンの方がいたりとか、国民の皆さんの声援があったりとか。でも、大きなウエイトを占めるところからすごい批判されて、俺何のために卓球頑張るんだろうな、なんて結構思ったりしましたね」

東京五輪×【戦えた理由】

東京オリンピック開会式(2021年7月)

水谷隼さん
「わかる人にだけわかってもらえたらいいかなみたいな。やっぱり国民の皆さん全員に、オリンピックって素晴らしいねって言ってもらえるのは無理だと思ってたんで。ほんとに、自分は一生懸命このオリンピックに向けて練習してきたし、そのやってきたことをみんなに伝えられたらいいなっていうぐらいで」

 

 

須﨑優衣選手
「開会式で、バス乗って国立競技場向かう途中に、頑張れってすごいたくさんの人が応援してくれてて、すごい感動して。こうやって批判の声がすごい目立ってるけど、実はこんなにも応援してくれる人たちがいたんだって。そこで自分はすごい勇気もらって、頑張ろうってまた思えましたね」

 

内村航平さん
「自分はちょっと、何が真実なんだろうって。選手村の外にも人が結構いっぱいいて、頑張れとか声掛けられたりして。かなり批判されてるけど、こうやって応援してくれる人もいるし、何がほんとなのかなっていう。リオの後のこの5年間は、モチベーションは保ってたけど、どうしても体がついてこないっていう5年間で。けがばっかりで。ほんとに最後の東京オリンピックまでもつかもたないかのギリギリのところでやってて。それがやっぱり今までと違って。練習をしっかり積んでいけば、もちろん結果は残るっていうのを知った状態で、でもそれがなかなかできない。そうなると、結果が残せないっていうのもわかっている状態で出なきゃいけないのがすごい苦しくて。でも、最後もうやるしかないっていう思いだけ。あと東京があるからっていうところだけかな」

 

水谷隼さん
「やる前から結構金メダルは厳しいなっていう感覚ではいたんですか」

 

 

内村航平さん
「そうだね。どうかなっていう。オリンピックを知っているからこそ、いい準備はできてたんだけども、やっぱり観客がいることで気持ちが上がるっていう自分を知ってるから、どうなんだろうっていう。いけるかな、ああ、いけなかったかみたいなのがちょっとあった」

 

 

水谷隼さん
「せっかく東京で行われるオリンピックで、あれだけ(東京開催が決定した)2013年にわーっと日本が盛り上がって。あのときが一番日本が盛り上がってたなって思うんですよね。そこからだんだんだんだん『オリンピックをやるな』っていう風潮になって。でも、僕としては、やっぱりやれてよかったなと思いますし、これからもずっとオリンピックやってほしいなと思います」

 

次回トークセッション【後編】では、”3人の金メダリストが明かす、競技人生の中で語られてこなかった真実”に迫ります!

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