特集 フレンチ・フレアを止めろ!ラグビー日本代表 絶好調のフランスに挑む

「フレンチ・フレア」、フランスのラグビースタイルを形容する時、必ずと言って良いほど登場するフレーズだ。フレア=閃き。試合の中でチャンスを見つけた刹那、誰もが驚くようなプレー選択で突破。あとは一気呵成、流れるようにボールを繋ぎトライを奪う。その様がいつからかフレンチ・フレアと呼ばれるようになった。
絶好調のフランス 自国開催のW杯に向け強化中
フランス代表がシックスネーションズで優勝(3月19日)
ここ最近絶好調のフランス。昨秋に「王国」ニュージーランドを倒すと、伝統のシックスネーションズを全勝で制するなど、ここまでテストマッチ(国代表同士の試合)で8連勝中。日本相手にその連勝を伸ばそうと乗り込んできた。
フランス代表の練習(6月29日)
今回の遠征にはシックスネーションズを制した際の主力は参加せず、来年のワールドカップでの代表入りを狙う、比較的経験の浅い選手中心の編成となっている。「ん、一軍じゃないの?舐められてる?」と思ってはいけない。自分の価値を高めよう、アピールしようとモチベーションが非常に高いメンバーなのだ。自国開催の来年のワールドカップで初優勝を遂げるため、抜かりのない強化策の一貫なのである。
日本は世界の強豪も一目置く存在
W杯1次リーグ最終戦でスコットランドに勝利 笑顔の日本フィフティーン(2019年)
迎え撃つ日本代表。ワールドカップは2大会連続で大躍進。そのテンポの早い攻撃は世界でもオンリーワンで「日本にボールを保持させるとヤバい」と世界の強豪も一目を置く存在になった。しかし、である。3年前のワールドカップ準々決勝、南アフリカ戦、そして去年秋のアイルランド戦などは「日本とはこう戦うべし」と処方箋を発行されたような試合になってしまった。
W杯準々決勝の南アフリカ戦(2019年)
高さでラインアウトを制圧。フィールドの外側に強くて速いランナーを置き、日本の素早く前に出るディフェンス網を嘲笑うかのように、長く速いパスを外側へ。そして1対1の局面で勝負を仕掛ける。守備でも数的優位に立って、体格的不利を補う、という日本のディフェンスがしづらい状況を作ってきたのだ。
日本はスクラムの安定でフランスを追い込めるか
そんな日本ラグビーに今年2月、朗報が飛び込んできた。
アメリカ代表コーチ時代のジョン・ミッチェル氏(2016年)
かつて30代の若さでニュージーランド代表HCを務めたジョン・ミッチェル氏をアシスタントコーチに迎えたのだ。ジェイミー・ジョセフHCは彼に主にディフェンスを任せたい、とオファーしたと言う。これは期待するしかない。
宮崎での日本代表合宿で練習を見守るジェイミー・ジョセフHC(6月6日)
6月上旬から始まった宮崎の合宿ではその新しいディフェンスシステムのインストールが急ピッチで進められた。ウルグアイとの2試合ではまだまだそのディフェンスの詳細は明らかにされていないのだが、取材の際に語っていたのは、①ダブルタックル(1人を2人がかりで倒すタックル)の回数、精度を上げること。
テストマッチのウルグアイ戦(6月25日)
②防御網の内側からしっかりプレッシャーを掛け、タッチライン際でしっかりと仕留め切ること。そのための立ち位置、追い方などの約束事、役割などを明確化し、選手に迷いが生じにくいようにしたシステムだと言う。
稲垣 啓太 選手
FWの稲垣選手は「求められているシステムを遂行しようとすると、必然的に運動量は求められる」とは話すものの、好感触を得ているようだった。
フランスは伝統的にFWが強力でスクラム、ラインアウトなどセットプレーで相手に圧力をかけ、アイデア豊富なBK陣が仕掛ける、と言う構図。日本はスクラムの哲人・稲垣選手を中心にスクラムを安定させたい。そしてミッチェル式ディフェンスで相手にプレッシャーをかけ、フランスを「閃けない」状況に追い込むことができるか。
日本はここまでフランスとは10試合を戦い、0勝9敗1引き分け。歴史的勝利をもぎ取ることができるか。試合会場、愛知の豊田スタジアムは最高気温30度を超える予想。TV観戦の皆さんも試合を見てオーバーヒートしないよう、ご注意を!
この記事を書いた人

豊原 謙二郎 キャスター
実況アナウンサーとして、野球、ラグビー、アメフト、柔道、アルペンスキー、モータースポーツなどを担当。サンデースポーツではキャスターとして、豊富な実況経験をフルに活かしてお届けする。