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特集 プロ野球 オリックス 山岡泰輔投手 ”普通”を貫きシーズンを通してチームの力に

野球 2022年6月20日(月) 午後5:25

かつてはチームのエース格として活躍した山岡泰輔投手。ここ2年はけがに苦しんできましたがプロ6年目の今シーズンは、ここまで4勝、防御率1点台(6月20日時点)と輝きを取り戻しつつあります。開幕から先発ローテーションを守ってきた要因には”普通”の状態を維持しようという心がけがありました。

普通を大切に

6月7日 ヤクルト戦 7回1失点で4勝目を挙げた山岡泰輔投手

鋭く落ちるスライダー、そして伸びのあるストレート。持ち味を存分に発揮し、今シーズンは復調を感じさせる山岡投手。ところが6月7日。本拠地の京セラドーム大阪でのマウンドで自身10連勝を果たして立った、ヒーローインタビューで今シーズンの調子について問われた山岡投手の答えは『普通です』という、意外なひと言でした。山岡投手が考える”普通”とはどんな意味なのか?後日の取材に対し次のように話しています。

 

ヤクルトに勝利 ポーズを決める山岡投手

山岡 投手

何ごともなく投げられることが第一にある。調子がいいとか、悪いとかは正直関係ない。登板日に投げなくてはならないのは決まっているので。その日のコンディショニングや球のキレというのはあるが、よくもなく、悪くもないというのが『普通』なんだと思う。

けがの経験を糧に

2019年9月 この年の最優秀防御率の山本投手(左)と勝率1位の山岡投手 

”普通”に投げられることが何よりも大切と考えるきっかけになったのはこの2年間のけがでした。プロ3年目に13勝をあげ最高勝率のタイトルを獲得しチームのエース格として期待された山岡投手。しかしおととしは左の脇腹、去年は右ひじを相次いで痛めました。2年続けてシーズンを通しての活躍ができず、昨シーズン25年ぶりのリーグ優勝を中心となって支えたのは後輩でエースに成長した山本由伸投手や、新人王に輝いた宮城大弥投手でした。

 

山岡 投手

やっぱりけがをしたらだめだな、けがをしたらパフォーマンスが出ないという部分しか正直なところ、得られなかった。

けがをせず、シーズンを通しての活躍をめざして。ことしのキャンプでは、自身の体の状態を見極めながらコーチ任せにはせず、ブルペン入りする日や、球数などを自分自身で決めてきました。またシーズンに入ってからも、ウエイトトレーニングの回数や重りの重さまで自分で考えて、なるべくいい状態でマウンドに上がることを意識しています。

 

2月の宮崎キャンプ ブルペンで投げ込む山岡投手

山岡 投手

ひじの状態の張り具合やちょっとした身体の変化を気にしながら、休む時とトレーニングする時のオンとオフの切り替えを大事にしている。けがをした分、今までよりも向き合うというか、ちょっとした変化でもほっておかないようにしている。

精神面でも普通を保つこと

一方、体の状態に加えて、精神面でも”普通”を貫くことが大切だと認識させられたのがヒーローインタビューに立った6月7日の試合でした。

 

 

昨シーズン日本一を争ったヤクルトが相手の交流戦。無難な立ち上がりをみせて3回までは無失点、ところが2点リードをもらった直後の4回でした。山岡投手は突如コントロールを乱して3者連続のフォアボールを与え、押し出しで1点を奪われてしまいました。精神面の乱れが原因でした。

山岡 投手

フォアボールの場面はどうしても点をあげたくないと考えすぎて、『普通』の状態ではなかったと反省した。絶対になんとかしないとという気持ちが大事になるときもあるけど、気負いすぎるとああいう結果になってしまうと顕著に表れた場面だった。

 

 

このあと、気持ちを切り替えた山岡投手。その後は再三得点圏にランナーを進められながらも”普通”の気持ちを貫いて得点を許さず、7回1失点で勝利投手に。ヒーローインタビューで出た”普通”という言葉には心の部分も含まれていたのです。

普通を保ちシーズン完走を

交流戦終盤の連敗で、今シーズンのオリックスは浮上のきっかけをつかめていません。しかし、山岡投手が、体と心の”普通”を保ってマウンドに上がり続けることができれば、上位争いも見えてきます。

 

山岡 投手

この2年間はマウンドにいる時間が短かったので、長く最後まで見てもらえるように、1年間を通してマウンドに居続けることが目標。去年の優勝のシーズンに力になれなかったので、もう一回優勝を、自分がシーズンを完走して優勝がしたい。

この記事を書いた人

伊東 健 記者

伊東 健 記者

平成23年NHK入局。

神奈川県出身。福岡局や京都局を経て、大阪局スポーツでオリックスを担当。早稲田大学ラグビー部OBで、W杯で活躍した山中亮平選手と同期。ラグビーで培った突破力を取材で生かす。

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