特集 プロ野球 ヤクルト 田口麗斗投手 “防御率ゼロの男”ノーアウト満塁でも“ゼロ”で抑えてやる

交流戦で4年ぶり2回目の優勝を果たし、リーグ戦再開を前に2位の巨人とのゲーム差を「7」にまで広げたセ・リーグ首位のヤクルト。リーグ連覇、2年連続日本一に向けて突き進むチームの中で、絶好調なのがリリーフの田口麗斗投手です。延長10回、ノーアウト満塁の大ピンチを無失点で切り抜けた“防御率ゼロの男”が語りました。
フル回転のヤクルトリリーフ陣
6月11日 交流戦優勝のインタビューを終えてスタンドに手を振る高津監督
高津 臣吾 監督
「リリーフみんながMVPだと思う」
交流戦の優勝監督インタビューで高津臣吾監督は、こう思いを口にしました。なぜなら交流戦はリリーフ陣がフル回転。先月(5月)31日のロッテ戦から交流戦最終戦の今月(6月)12日のソフトバンク戦まで、誰一人失点を許さないなど交流戦優勝の原動力となったためです。
防御率ゼロの男にノーアウト満塁のマウンドを託す
5月24日 日本ハム戦 延長10回ノーアウト満塁のピンチで登板
その象徴とも言えるのが交流戦初戦となった先月(5月)24日に神宮球場で行われた日本ハムとの試合です。1対1で迎えた延長10回。5人目の今野龍太投手がノーアウト満塁の大ピンチを招き、日本ハムのバッターは左の4番・清宮幸太郎選手。
失点が許されない場面で田口投手に声がかかりました。プロ9年目。去年3月にトレードで巨人から移籍したチームにとって貴重な左のリリーフ。その試合まで17試合に登板して自責点は「0」。“防御率ゼロの男”に高津監督はマウンドを託したのです。
田口 投手
今野がああいう形でマウンド降りるとは予想していなかった。とにかく作り上げてきた試合を壊さないこと。一方で、展開を変えるのは今。余計なことを何も考えず試合に入っていった。
大ピンチを抑えた20球
5月24日 延長10回のピンチを三振で切り抜け雄たけびを上げる田口投手
冷静な気持ちでマウンドに上がったという田口投手。23歳の清宮選手に対し、初球はインコース寄りのストレートを投じファウル。このあと3球続けてバッターから見て外に逃げていくスライダーをコースぎりぎりに投げました。カウントはツーボールツーストライクに。
田口 投手
若いバッターは『俺が決めないと』って結果を欲しがる。そういう心理が僕の中で手に取れたので、余裕を持って変化球をストライクゾーンに投げられた。スライダーを3球投げてスライダーがかなりちらついていると見た。
そして5球目は150キロのストレートで力勝負。清宮選手のバットは空を切り、まずワンアウトとしました。
次の相手は5番・万波中正選手。ことし出場機会をつかんだ22歳に対し、今度は内と外、高め低めとさまざまなコースにストレートとスライダーを織り交ぜました。
2球目のストレートは自己最速の151キロをマークしました。
田口 投手
日本ハムの若手で勢いがあり、大事な試合で打っている印象なので、強くスイングしてくるのは分かっていた。いいスイングをさせずにしとめる。
そして、フルカウントからの8球目はインコース低めへのスライダー。ショートライナーに打ち取り、ツーアウトとしました。
そして6番・宇佐見真吾選手との対戦。ここで田口投手は苦しい状況に追い込まれます。初球から3球続けてボール。次の1球がボールなら、押し出しで勝ち越し点を与えてしまいます。そんなとき田口投手を後押ししたのは、本拠地、神宮球場のファンだったと言います。
田口 投手
プレッシャーは感じていなかった。球場も一体化していて、拍手を自分の力に変えられた。プレッシャーに感じずファンの声援を自分の力に変えられた。
日本ハムにサヨナラ勝ちして笑顔の田口投手
ここからストレートを連投して、ストライク2つを取った田口投手。最後の20球目は148キロのストレートで空振りの三振を奪い、ノーアウト満塁の場面を見事、無失点で切り抜けました。
この試合、ヤクルトはサヨナラ勝ち。田口投手の投球、ヤクルトファンの間では「田口の20球」とネット上などで話題となりました。
好調の要因
田口投手は、その後も好投を続け、今シーズン21試合に登板し、(6月12日終了時点)防御率は0.00のままです。好調の要因について田口投手はこう話します。
田口 投手
調子が悪いときは、いいボールを追求しすぎていた。でも、悪いボールは必ず出てくるもの。今はいいボールと悪いボールの差を縮められるようになった。悪いものをいかにいいものに近づけられるか、その意識づけができるようになった。
ストレートとスライダーを軸に投球を組み立てる田口投手。ボールの高さやコース、それにフォームなど、好不調の波を抑えられていると言います。
もっとヤクルトを知ってほしい。ファンヘの思い
新外国人選手のキブレハン選手との写真をSNSに投稿
明るくチームのムードメーカーでもある田口投手が熱心なのがSNSです。巨人時代の平成28年から始めたツイッターのフォロワーは13万1000。試合後には活躍したチームメートの写真を投稿し、ふだん見られない選手の表情を伝えています。
田口 投手
選手のことをもっと知ってもらいたいと思って。若い選手も注目して欲しいから自分で取り上げる。主力選手以外も注目してほしい。『ファンあってのプロ野球』はまさしくそのとおりだと思う。コロナ禍で無観客試合もあってこんなに寂しいものはないと思った。徐々に状況がよくなってきたのでスワローズだけでなく、野球ファンを増やしていきたい。
交流戦が終わり、リーグ戦が今月(6月)17日から再開します。“ゼロ”を続ける田口投手の“投球”、そして“投稿”にも注目してみてください。