特集 一山本 想像できなかった未来 大相撲夏場所から

大相撲夏場所の10日目。平幕の一山本は琴勝峰を持ち味の突き押し相撲で破って8勝目。幕内で自己最速の勝ち越しを決めるとともに優勝争いのトップを守り、取組後は明るい表情で語った。
一山本
落ち着いて相撲が取れてよかった。しっかり勝てるように準備して、またあしたから相撲を取れれば。
28歳の一山本が注目されるのは、その珍しい経歴だ。北海道岩内町の出身で中央大学相撲部で活躍したあと、当初は角界入りを考えたものの、卒業後は道南の福島町役場に就職した。教育委員会の職員としてスーツ姿で業務をこなす傍ら、町内の子どもたちに相撲を指導する日々のなかで再び角界を目指す気持ちが湧き上がった。
一山本
子どもたちが頑張っている姿を見るとやっぱり。僕も22、3歳で若かったので、もう一回、挑戦できると思った。
タイミング良く、平成28年に日本相撲協会が新弟子検査の対象年齢をスポーツ経験者に限って23歳未満から25歳未満に緩和することになり、一山本は役場を退職して23歳で二所ノ関部屋に入門。
2016年12月 二所ノ関部屋に入門した当時の一山本
社会人出身力士として平成29年に初土俵を踏み、順調に番付を上げて、去年の名古屋場所で新入幕を果たした。
2017年1月 初場所の前相撲で初土俵を踏んだ一山本(右)
今場所10日目の取組のあと、一山本は報道陣から社会人からの角界入りを悩んでいた当時、幕内でのいまの活躍が想像できたかと問われ、率直に答えた。
一山本
全然、想像できなかった。関取にはなりたいと思ったが、こんなに成績よくとは想像できなかった。
今場所では一山本と同じように24歳で現役東大生の須山が新弟子の対象年齢緩和の規定を利用して力士としてデビューした。入門から6年、そのチャレンジと努力が大きく実を結ぼうとしている一山本は自身に続く人たちへメッセージを送った。
一山本
年齢が上からでもこうやって相撲をする人が増えて番付を上げてくれれば。僕も負けないように頑張れるので。
(一口メモ)
一山本の好調の要因は“リラックス”。場所前から始めた1人暮らしで好きな料理を作って好きなだけ食べる。それが厳しい勝負の日々で何よりの気分転換になっているそうです。
この記事を書いた人

今野 朋寿 記者
平成23年 NHK入局
岡山局、大阪局を経てスポーツニュース部。二児の父として、子育てにも奮闘中